お別れの挨拶


全く予期しないことは往々にして突然起こるものらしい。
「ニブルへ行くことになった」
そう淡々とセフィロスが明かしたときルーファウスはペンを取り落としそうになった。
「なんだって?」
「ニブル魔晄炉の調査らしい」
そう言うとセフィロスはソファに腰を落とした。
「そんな話聞いてないぞ」
声を荒げたルーファウスを片目に、足を組んだセフィロスはこともなげに言った。
「お前に知らせる必要がどこにある?16のガキにプレジデントが機密を知らせて得る利があると思うか」
その言葉に立ちあがり、ルーファウスは思い切り彼を睨み付けた。
「ならとっとと行けよ。わざわざそれを俺に伝えにきたのか」
思わず固くにぎった手のひらの下には、たわいもない内容の許可を求める書類が広がっている。
セフィロスの言うようにルーファウスはまだ父の片腕に足るほどの人材ではない。
そのことを直に言われてルーファウスは魔晄炉調査にセフィロスが起用されることについての疑惑を忘れ去った。

こういった会話は彼とは日常茶飯事のことである。
セフィロスは激昂したルーファウスにお手上げといった風に両手を軽く上げた。
「まあ、そう言うな。ルーファウス、お前ニブルがどんな村か知っているか?」
わざとらしく話題を変えたセフィロスにまた腹がたってルーファウスは押し黙った。
大体、ニブルヘイムについては魔晄炉の稼働状況ぐらいしか詳しく知らない。
憮然とした顔でどかりと椅子に座り、そっぽを向いたルーファウスをセフィロスは苦笑した面持ちで見つめた。
(ああいうところがガキなんだが)
「ルーファウス、ニブルは何もないところだ。
あるものといえばモンスターくらいだそうだ」
「それはご愁傷様。ざまあみろだ。で、それがどうしたっていうんだ」
「これはかなり確実な情報らしい。同じ部隊の奴が言っていた」
「クラウドか」
クラウドとはある一件で、俗に言う友人とやらに近い関係になってしまっていた。
彼も今回の調査に参加しているのか。
しばらくはつまらなくなるな、とルーファウスは自然に思った。
「拗ねているのか」
不意に聞こえた声が近くて、ルーファウスはびっくりして振り向いた。
いつのまにかセフィロスが自分の椅子のそばに立っていた。
「な、なんだ!いきなり近付くな」
それから数秒後・・・
「俺が拗ねているだと!!」
怒号と共に勢いでルーファウスは再び立ち上がった。
「さっきから自惚れるのもいいかげんにしろ!お前はたかが一兵士なんだぞ!!」
ルーファウスの言葉にセフィロスは鼻で笑った。
「ガキが自惚れるなだって?そっくり返す。
確かに俺は一兵士に過ぎないが、お前と一体どれほどの差があるっていうんだ」
案外俺のほうが高いかも分からんぞ、とセフィロスが言ったのを皆まで聞かずに
ルーファウスはセフィロスに手を上げた。
その手を簡単に掴み止めると、セフィロスは自分を見上げる「ガキ」に唇を寄せた。
首すじにキスをひとつ落とすと悪態をつく声が聞こえた。
その声を無視して舌を這わすと、ルーファウスの体が幾分すくんだ。
「馬鹿力が・・!離せよ!!」
身を捩って逃れようとする彼をデスクに押さえ付ける。
顔をのぞき込むと悔しそうに歪められている。
セフィロスは微笑んだ。
無理矢理に口腔を割らせると、あとは・・・まあ、簡単だった。



「畜生!!就業時間中にやることないだろ!」
うっすらと涙と朱を上らせたルーファウスがイライラして机を思い切り蹴飛ばした。
彼の服装は乱れに乱れている。
「だから、言っただろう。明日はニブルなんだ」
「・・・お前な・・・」
服と同じく乱れた髪をかき上げたルーファウスは呆れた、というように彼を見た。
すっかり服装を整えたセフィロスは意味ありげな笑いをしてルーファウスの頬にキスした。
今度こそは、と思い上げた手を軽くよけられルーファウスは怒りに大声で怒鳴る。
「行けよ!!ニブルでもどこでも!さっさと行けッ!!!」
怒鳴ったおかげで肩で息をするルーファウスにセフィロスはまたな、と言った。
(またな、だと〜〜!!)
セフィロスが出ていったドアを思い切り睨み付けるとルーファウスは、散々物に当たり散らしたのでした。


ヲワリ。




ここでセフィロスさんはニブル行きを口実に副社長犯してますが
実際ニブル行きは1週間ほど後なのでした。
その間も何度かお別れの挨拶をしてほしいものです。
「もたねえよ・・・」>ルーファウス