「ロミオとジュリエット」、12月5日と22日に観劇してきました。
(本当は一度だけの予定でしたが、22日の前前日になって
いきなりチケットが手に入ったので、歓びいさんで行ってまいりました)
舞台の感想および、ミニレポートです。



劇場とセット

めったに降りたことのない有楽町に、初めていく日生劇場。
方向感覚の心理実験で「課題の意味わかりますか?」と心配されてしまったほど
方向音痴の私がやすやすとたどり着けるはずはありません。
道行く人や、交番で道を尋ねること4回、
泣きそうになりながらようやく劇場にたどりついたのは
開演5分前。大慌てで席につきます。

22日は2階最後列と、お世辞にもいい席とはいえませんでしたが、
意外にも見やすかったです。
セットは、3階建ての大きな回廊風の建物のみ。
随所に窓や入り口があり、そこから人が出入りします。
セットの壁面には、若くして結ばれずに亡くなった方々の写真が貼られていて、一種異様な雰囲気。
誤解を恐れずあえて言うなら、「死者の顔写真が並べられている」という印象です。

前口上に続いて、サイレンとパトカーの音。
そして、飛行機の爆音。
写真の目元に細く光が当たり、喪服姿の参列者に担がれた棺が音もなく姿をあらわす…。
ロミオとジュリエット、開幕です。



 感想

今だからいってしまいますが…。

実は、私「ロミオとジュリエット」苦手だったんです…。

小学校のときに簡易版を読んだ、というのが関係しているのかもしれません。
二人の出会いも、行く末の悲劇も、当時の私にはあまりに出来すぎという感じがして
面白みを感じませんでした。
その余波で、今回も原作を全部読み通さずに観に行ったほどです。

ですが、観劇しておどろました。
言葉でかかれた作品、その筋をおっていただけのときは
全く見えてこなかった景色がいきいきと展開されていました。
まず、冒頭の場面。
棺に取りすがって泣き崩れる葬儀の参列者の中に
モンタギュー、キュピレット両家の若者が乱入してきます。
活字の中では、ロミオの仲間も、ティボルトたちも同じようなトーンで没個性でしたが、
舞台上での彼らはひとりひとり違った表情、視線を持った若者たちとして
活き活きと駆け回っていて、その違いにひきこまれました。

両家入り乱れての乱闘の中、舞台の左手、
三階から滑り降りてきたティボルトの存在感も素晴らしかったです。
気障で高慢で血気盛ん、一陣の風のような勢いのあるティボルト。
これまで、目にしたことのない表情と魅力を持った若者として
創りこまれていたようにおもいます。


そして、殺陣。…凄いの一言です。
激しい動きなのに、それを感じさせない鮮やかで的確な動作。
剣戟の音が重かったのは、日本刀と違い「斬る」ことよりも、
衝くことを主とした中世の決闘様式や剣を模しているからでしょうか?
マキューシオが言うように、いまでいうフェンシングの型を
忠実になぞったティボルトの剣戟は、勢いがあって技巧的で、見ごたえがありました。
両家の若者が入り乱れる場面なのに、舞台に雑味を感じさせないのは
流石だと思います。

両家の若者を鎮める大公もよかったです。
ぴしり、と音のするような言葉の置き方と、有無を言わさぬ存在感。
22日のほうが威厳を持った声と態度で臨んでいたように感じました。
そして、一旦静まってもなお、互いに対する敵意を剥き出しにする
ティボルトたちの去り際も、若者らしい血気に溢れて
リアリティがありました。

そして、ティボくんの前半の見せ場(?)。

去り際に、ロミオの仲間にむけてくだんの投げKiss。


   〜〜〜〜〜〜


ティボルトくん、気障さ全開!!
芝居とはいえ、あんなに本格的な投げKissははじめてみました。
日常でみたら呆然としてしまいそうな動作ですが、あの流れで、
ティボルトが演じると、妙に嵌るのが不思議です。

ロミオの仲間がまだ少年らしい幼さを残しているのにくらべて、
ティボルト軍は荒くれ者の青年たちという印象。
当人同士の確執でというより、両家の諍いの空気やそのうねりを感じ取って、
暴れまわっているようにみえました。
横田さんのティボルトには、そうした若者らしい敏感さや、
エネルギーが、うまく顕われていたように思います。

また、ロミオとジュリエットが出会う舞踏会の場面。
ノーブルさと闊達さを持ち合わせたティボルトの振る舞いは、
ジュリエットが慕うのも当然と思わせるような魅力に溢れていました。
足運びや、手の伸ばし方、召使たちに対する物腰など
細かいところまで気を配って演じていらっしゃるからこそ、でしょうか。

それにしても、横田さんの表情の瞭かさ、何度みても目を奪われてしまいます。
胸のすくような、という表現が似つかわしいきれいな笑顔で。
この場面でのティボルトの魅せ方が在ったからこそ、
後にジュリエットが見せる悲嘆が、厚みをましたように思います。
(ロミオ相手の態度を見ていると、なぜジュリエットが
この従兄弟を慕っているのか、ちょっと腑に落ちないほどの
悪辣さだったので…)。
優しささえ感じられる面差しが、ロミオを認めた瞬間に
きっと眦をあげる、その変化も素晴らしかったです。
なによりも名誉と誇りを重んじる血気盛んな中世の若者
そのものの眼差しでした。





>>その2に続く