・ 構造と工法について
 1.基礎
基礎は、従来の日本建築では「柱石」と呼ばれる石を、たたき締めた地盤の上に置いただけだったの
ですが、近代工法では一体の鉄筋コンクリートの基礎の上に、アンカーボルトと呼ばれる太いボルト
で上部の木造構造物を固定する、という構造になっています。この鉄筋コンクリートの基礎も、従来か
ら用いられてきた布基礎から、近頃は建築荷重を全体で支持する、「べた基礎」という構造底版を持
つ基礎工法が多くなっており、以前とは比較にならないほど高い荷重耐力を持っています。
地盤調査によっては、更にこの底版の下部に杭を打設する場合もあります。
 
2.木造在来軸組工法
日本の伝統工法である軸組工法では、従来は柱同士を「桁」や「貫(ぬき)」という水平材で連結し、
一種の構造構面を構成していたのですが、近代の工法はその構造構面を「土台」、「柱」、「桁」、
「筋違い(すじかい)」によって構成します。これらの部材は基本的に曲げの力を負担せず、軸方向力
のみを負担します。「筋違い」等の部材は構造計算によって算出され、部材が細い割には台風など
の水平力に対する耐力が高く、木材資源の保護という意味では他の工法よりも優れています。長所
としては、間取りの自由度が高く、完成後でも比較的自由に増築や改築が考えやすいこと。
短所としては、火災に弱い、熟練した大工さんが少なくなってきたこと、でしょうか。
 
3.ツーバイフォー
合板の周囲を枠材で囲い、これを構造面材として構造壁や床組として利用する工法を、枠組壁式工
法といいます。一般住宅では、この枠材に2インチ×4インチを基本とした寸法の木材を使用するため、
ツーバイフォーと呼ばれます。もともとはカナダ等の北米を中心に発達した工法で、壁面を構造面とし
た考え方は、ログハウスとも共通しています。枠材の木材に合板を釘打ちで留め、これを壁や床版と
し、面材相互をボルトで緊結していく工法で、長所としては在来工法よりも工期が短い、短所としては
同じく火災に弱い、完成後の増築、改築が比較的制限される、ということなどでしょう。
 
4.プレファブ住宅
pre-fabricate(前もって製作する)工法で、ほとんどの部材を工場で製作し、現場では基礎の上で組
み上げるだけでほとんど完成するために、工期が大変短くて済みます。ユニット住宅のようなものを含
め、メーカーによって内容は様々ですが、いずれも工場製作の比率が高く、寸法安定性に優れていま
す。長所としては、いずれも工期が大変短縮出来ること、短所としては作りかけると変更が大変困難、
自分の家と同じものが他にも沢山ある、修理に専用部材でしか対応出来ないところがある、ということ
でしょうか。
 
5.非木造工法
RC構造とは、鉄筋コンクリート構造のことですが、この中には軸組工法に似たラーメン構造を持つも
の、あるいは枠組壁式工法に似た壁式鉄筋コンクリート構造を持つもの、が一般的です。長所として
は構造体そのものは燃えない、台風に強く、遮音性に優れること、短所としてはクラック(ひび割れ)
が入ると目立ちやすい、コストが高いということでしょう。
鉄骨造は、軸組を鉄骨で組む工法で、基本的には木造の軸組工法とよく似ています。曲げの力を受
ける「梁」などの水平材が比較的細く出来、スリムな建築に多く使われます。長所は柱の少ない空間
構成がしやすいこと、短所としては火災に弱い、海岸近くでは大変塩に弱い、などでしょうか。
組積造はコンクリートブロックや、レンガなどを積み上げて構造壁を造る工法です。いずれも地震国の
わが国では、鉄筋及びコンクリートによる補強が必要で、広い空間には不向きです。耐火、遮音性等
に優れますが、RC以上にクラックが入りやすく、複雑な形態には向かないのが短所でしょう。
 
・ シックハウス対策のウソ
古来より日本の住宅は、「夏に良しとする家を造れ」と、言われてきました。エアコンが無かった時代、
高温湿潤な日本の夏を過ごすには、開け放した縁側と深い軒先、板張りの床と畳敷き、窓も夏は夜
でも全開で、カヤを吊して寝ていたものです。
高度成長期を迎える頃より社会的安全が保たれなくなり、家は家族の安全を守るシェルターと化し
ていきます。また大都市では車の排気ガスに含まれる硫化物等から身を守るために、家の気密化も
どんどん進んできました。一方で森林資源はものすごいスピードで枯渇してきており、材料不足など
から俗に言う「新建材」もどんどん生産されてきました。また社会の情報化も一層進み、結果として、
様々な建材や家具、OA機器などから、ホルムアルデヒドやクロルピリホス、VOCと呼ばれるトルエン
やキシレン等の、人体に有害な物質の発生が増加してきて、「シックハウス症候群」というやっかいな
化学影響が発生するようになってきました。
一方、国土交通省では「住宅の品質確保の促進等に関する法律」なるものを作成し、点数化によって
住宅の気密化を一層推し進めて来ました。均質な誤差のない床は高得点で、天然無垢の床材はラン
ク外だったり、虫の鳴き声しか聞こえない田舎でも二重サッシの遮音性を高く評価したりと、あまりに
も馬鹿げているのでここでは深く書きません。さらに国土交通省は平成15年7月より、建築基準法を
改正してシックハウス対策も始めました。その主な方策は、換気扇による24時間の連続強制換気と、
建材の使用制限です。
住宅の気密化を推し進め、片方で換気扇でもって換気しろ、という訳です。強制的に換気をしてど
この空気が家の中に入ってくると思いますか?隣の家が排出した排気か、車の排気ガス等の化学物
質に汚れた外気です。
こんなことでは根本的な解決にはなりません。24時間回しっぱなしの換気扇など数年しか持ちませ
んし、国土交通省は住宅をいじるのではなく、国全体として社会の空気環境の浄化を考えるべきです。
逆に住宅は気密化を進めるのではなく、適度にすき間風が入るくらいなら結露にも効果があって、化
学物質に対して強制換気も必要無いわけですから、早いとこ「住宅の品確法」の見直しもするべきだ
と思います。だからと言って住宅のすきま風を奨励するつもりはありませんが、国土交通省の考え方
は、汚れた上にペンキを塗って、きれいに見せる手法のような気がするのです。それに建材を規制す
るのであれば、OA機器などをはじめとする家電品や、カラーボックス等の家具にも規制をかけないと
何にもなりません。

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