「 鈴 」


「カミュ……これをつけて………」
「……え? ……なにを?」

ミロにものうげに身体をあずけていたカミュが気付いたときには、すでに白い手首に小さな銀色の鈴がつけられている。
ほのかな灯りに、青い色糸でゆるく結び付けられた鈴が鈍い光を放ち、わずかに手を動かしただけでもちりんと音を立てた。
「あ…ミロ………こんなことを……」
「しっ……黙っていて……今夜は、この鈴がお前の言葉だから…」
なおも言葉を継ごうとする柔らかな唇をそっとふさぐと、ミロは想い人のしなやかな身体をかきいだく。
小さく肩を震わせて目を閉じたカミュがそっと手を伸ばしミロの背にそわせてゆくと、鈴の音がちりりと響き、ひそやかな溜め息が漏らされた。
「ほら……お前が俺のことを好きだと思えば、すぐにわかる………そうだろう?」

返事をするいとまを与えられぬままに愛されてゆくカミュは、もう身じろぐことしかできぬ。 鈴の音が忍びやかに転がるような音を立て、そのたびにカミュが小さく息をつく。 いくばくかの時が過ぎ、ついに耐えかねたカミュが声を上げた。
「ミロ……ミロ……もう私は………」
切なげに伸ばされた手がミロの黄金の髪を梳き、額にはうっすらと汗が浮かぶのだ。
「わかっているよ、カミュ………鈴を鳴らすことを忘れるほどに俺に夢中なんだろう?」
もはやその声も聞こえぬのか、いらだたしげに首を振るカミュの熱い吐息がミロの首筋をかすめ、いとしさをつのらせた。

   カミュ……こんなに こんなに お前を愛している………

やさしい口付けが与えられたとき、甘美な闇に鈴の音がひとしきり響いた。