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曲目 エルガー作曲 「愛の挨拶」






「 愛の挨拶 」
                              登場人物    ミロ
                                                       カミュ


【 第一幕 】
照明  やわらかい茜色。
ナレーション ( アイオリア )
   「ここは聖域、宝瓶宮の夕暮れである。 アクエリアスのカミュがひとりたたずんでいる。」

宝瓶宮のテラスで沈みゆく夕陽を眺めながら物思いに耽るカミュ。
夕陽の残照を受け、柔らかな茜色をその身にまとっている。
舞台右手から、ミロ登場。

「なにを考え込んでいるんだ? カミュ」
「以前から疑問に思っていたのだが……」  (キッとミロを見やって)
「いったいなぜ、私が 『 受け 』 で、お前が 『 攻め 』 なのだ? いつそんなことが決まったというのだ!」
                            (こぶしを固く握る。 「私だって男だぞ!」 と思っている。)
「なんだ、そんなことか。 決まってるじゃないか、カミュ、お前が決めたんだよ。」
「なんだと? 私はそんな覚えはないぞ!!」 (気色ばむ)
ミロ、なだめるように肩をたたく。
「決めた、といって悪ければ、お前のせいでそうなったということだろうな。」
「納得できんっっ!!」 (怒りのせいで顔面が紅潮する。それもまた美しい。)
ミロ、やれやれといった顔をする。
「いいか、氷河との闘いで倒れたお前を、この俺が小宇宙と人肌で暖めて蘇生させたんだろう? こういう場合、暖めるほうが
  『 攻め 』 で、暖められるほうが 『 受け 』 というのが常識っていうもんじゃないか。」
カミュ、不承不承に頷く。ややあって、
「だからといって、それがどうして私のせいなのだ?」 (ミロに詰め寄る。)
ミロ、大理石の手すりに寄りかかっている。
麓から吹き上げてくる風が心地よく、彼方には天蠍宮が見える。 視線をカミュに戻す。
「まあ、聞けよ。お前のために、この俺が論理的に説明してやろう。
  起 : お前が氷河をフリージング・コフィンに封じ込めた
  承 : 紫龍がサジタリアス聖衣を使い、フリージングコフィンを砕いて氷河を救い出した
  転 : 氷河の冷え切った身体を、瞬が命を捨てる覚悟で、小宇宙を燃焼させて暖めた
  結 : 蘇った氷河とのオーロラエクスキューションの撃ち合いで相打ちになり、お前は命を失った
 こういう経緯のあと、俺がお前を暖めたんだろう? つまり、お前が氷河をフリージングコフィンで葬ったのが始まりじゃないか。
 あのときお前が氷河にとどめを刺していれば、こうはなっていなかっただろう。お前が 『 受け 』 なのは、お前に原因があるって
 ことだよ。」
カミュ、痛いところをつかれてグッとつまる。 しかし、論理でミロに負けるわけには行かないと気を取り直す。
「し、しかし、そんなことを言うなら、そもそも青銅聖闘士が聖域に来たことも………」
ミロ、カミュを手で制する。
「まあ、待て。 さかのぼる気になれば、それこそギャラクシアンウォーズにとどまらず、車田正美⇒手塚治虫⇒ディズニー⇒
 ホモサピエンス⇒アメーバにまで行き着くぞ。 そんなことより、俺は、おまえのおかげで今の俺たちの現在があるということの
 方がずっと嬉しい!」
ミロ、カミュを抱きしめる。 
カミュ、今ひとつ納得しきれてないが、赤くなって黙る。
照明……だんだん暗くなる。

              暗転。

【 第二幕 】
照明  明るい朝の光。
翌朝の宝瓶宮の居間。
ミロ、満足げにモーニングティーを飲んでいる。
カミュ、舞台手前で独白。
「昨日は、つい流されたが、論理的にいってミロの説には承服しがたい矛盾がある。 氷河を暖めた瞬は、誰が見ても100%
  『 受け 』 ではないか。」
カミュ、やはり一言いおうと向き直り口を開きかける。
ミロ、その瞬間に声を上げる。
「カミュの入れてくれる紅茶は天下一品だな! こんな美味しいものが毎朝飲めるなんて、まったく俺は世界一の幸せ者だよ♪」
カミュ、機先を制され言葉を呑み込む。
カミュ、独白。
「……ま、こだわることもないか。」
「ん? 何が?」
「なんでもない。」 (ミロに笑顔を向ける)
カミュ、席につきともに紅茶を楽しみ始める。

ナレーション ( アイオリア )
  「こうして十二宮の朝は、いつものように明けるのである。 聖闘士の平穏は、一杯の紅茶によって今日も保たれている。」

              幕


※ 1 衣装について
       第一幕  夕陽に照らされた黄金聖衣が茜色を帯びる場合と、白い衣装が茜色に染まる場合の双方の視覚効果を
             慎重に検討したうえで決定する。 本公演の成否を左右する重大なポイントである。
       第二幕  ミロ………長衣 ( 青 )
              カミュ……長衣 ( 白 )
※ 2 演技について
       ミロ………必要以上に感情を込めすぎる傾向にある。自重するよう、本番直前にシャカに精神統一の指導を受ける。
       カミュ……特に問題はないが、観客の目を意識しすぎる傾向にあるため注意する。
※ 生花対策
       双方の楽屋に双魚宮から大量のバラが搬入されることが予想されるので、迅速な対応をする。
       聖域野外劇場では空調設備がないため、当日の気温によってはカミュの楽屋に全て運び込み鮮度を保つように
       する。 事前にアフロディーテの了解を取り付ける。
             



                     当サイト初のMIDIの登場です。 いかがでしたでしょうか?
                     カミュ様が宝瓶宮で氷河とともに倒れたあとで、その早すぎる死を惜しむあまり、
                     ミロ様がカミュ様を蘇生させたのだ、という説が流布。
                     誰もが納得したであろうこの展開を採用した舞台です。

                     客層、これは難しい問題です。
                     内容も演技も 「 抱擁あり 」 ですからね………。
                     雑兵なんてもってのほか!
                     実のところ、黄金聖闘士にだって見せたくはないっ!
                     じゃあ、誰が貴重なこの舞台を見るんでしょう???
                     やはり、私たちだけにしましょうか♪♪

                     この作品は、私が初めて書いたミロカミュ物語です。
                     3年くらいは経つでしょうか、冗談で書いてみて、面白かったので保存しておいたのです。
                     ああ、全てはこれから始まったのね………感慨深いものがあります。
                     演劇論、シリーズ化できるといいのですが、いかが相成りますことか?

                     ※ MIDIの発想は、小貫ひろみ様とのお付き合いから生まれました。
                        さすがはピアノの先生だわ ♪
                        ひろみさんがいたからこそ生まれたアイデアに、感謝感謝です!
                        音楽に乗せて語るミロカミュ♪
                        次は、情緒あふれる舞台がいいかしら? (←えっ?!)


                                                   MIDI    ラインムジーク