「 餃子 」

                                                  あさぎ & インファ   共作

登別の宿の夕食は懐石が基本なのでその範疇に収まらないものは出てこない。しかし長逗留しているカミュたちには希望に応じて様々な料理を出してくれることになっている。
その日の昼食には餃子とシュウマイが出た。貝柱入り卵チャーハンとフカヒレスープも美味でカルディアとデジェルを喜ばせた。

しかし餃子には大きな問題があった。
「あの、ミロ……この匂いは?」
「え?あれ?これって、もしかしてニンニクだったりする?」
「ニンニク!あの有名な!」
キスしようとしたミロを押し戻したカミュが首を振る。
「すまないがもう一度 歯を磨いてこよう。それで駄目なら今夜はおとなしく寝ることにする。」
「そんな〜〜!」

すやすやと眠るカミュの横でまんじりともしないミロを横目にカルディアは元気いっぱいである。
「はぁ? ニンニク? 片方だけならともかく、俺達二人とも食ってるんだから関係ないだろ。」
「でもっ…!」
「ほら、言うこときけよ!」
無臭を追求するカミュに負けて自重したミロと違い、すんなりとデジェルを押し倒すカルディアはそんな瑣末なことを気にかけたりしない。
慌てて起き上がったミロが光速で境の襖を閉めた。
口臭予防スプレーや無臭ニンニクの存在をまったく知らないカルディアは、ニンニクの匂いが現代人から敬遠されていることを知るよしもない。しかし今時のテレビコマーシャルなどで、ニンニクを食べたあとの匂い対策が円滑な人間関係を維持するのに欠かせないことを刷り込まれているミロはとてもカミュを抱けないのだった。
ニンニクのせいかどうか、カルディアはいつもにまして元気いっぱいで、ミロはおおいに悩まされることになった。
餃子も罪作りである。