「 地獄の沙汰も金次第


「 閻魔の裁きも金の力で自由になるというほどだから、金さえあればこの世ではなんでもできる 」 の意だ。

閻魔とは仏教用語で、亡者 (死者) の行くという地獄界を統括する王のことだ。
その人間が生きていた間の行いを逐一記した閻魔帳という記録簿を参照し、その罪に応じて判決を下すという。
死後に行く世界は、苦しみのひどい順に、地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界となっており、生前の行いの悪しき者ほど、苛酷な罰を受ける世界に落とされるのだ。
このあたりの説明はシャカの方が適任なので詳細な解説は割愛する。
希望があれば、シャカに依頼して各界の体験ツアーを行なうことも可能だ。

その決定的な審判を下す閻魔大王の判決さえも金の力で覆せるというのは拝金主義の最たるもので、現代の法治国家にはふさわしくない諺だ。
私は感心しない。




お、お、お前、なにを冷静に解説なんぞしているんだっっ!!!!!
俺たちがハーデス篇でどんな苛酷な目に遭ったか、わかっているのかっっ!!

思い出すのもはらわたが煮えくり返る思いだが、やむを得んっ!
だいたい、俺とムウとアイオリアが生きながら落とされたコキュートスというのは、九圏に分かれる地獄界の中でも最下層、「 神曲 」 を書いたダンテに言わせればもっとも重い罪の 「 裏切り 」 を犯した者が行くところなのだ!
裏切り者は首まで氷に浸かり、涙も凍る寒さに歯を鳴らすというぞ!
人間は様々な罪を犯すが、いったい俺たち3人がどんな裏切りをしたというのだ、冗談ではないっ、ハーデスの目は節穴かっっ??!!
あの屈辱と怒りを俺は終生忘れることはないっ!

それに、十二宮戦で命を落としたお前達も、ハーデスの奴に無理矢理眠りを醒まされて、あのような苛酷な憂き目に遭ったのではないか!
死したとはいえ、アテナの加護のもとに静かに眠りについていたお前達に生と死の狭間でかりそめの命を与え、生き残っていた俺たちとの非道な闘いを強いたのは冥界の王ハーデスだ!
「 地獄の沙汰も金次第 」 ではなくて、「 地獄の沙汰もハーデス次第 」 なのだっ、彼奴のひねくれた気分のせいで俺たち黄金聖闘士がどれほど翻弄されたか、考えてみろ!
地獄なんてところは俺たち、アテナに忠誠を誓ったまっとうな聖闘士が行くべきとこじゃない!
俺の前で二度と地獄のことなど冷静に語ってくれるな!
もう、あんな嫌なことは忘れよう、お前は、俺との極楽のことを考えてくれればいいんだよ!




………え?
ミロ……、この諺で言う 「 地獄 」とは、閻魔大王が引き合いに出されていることでもわかる通り、仏教でいうところの 「 地獄 」 のことだ。
シャカの 「 六道輪廻 」 も、仏教の地獄の観念に基づいている技だ。
一方、ハーデスが統治していたのは、お前もダンテの 「 神曲 」 を引き合いに出した通り、西洋のキリスト教の観念による地獄なので、この諺とは無関係なのだが。




ほぅ! 君が地獄について興味を持っていたとは知らなかった。
いつでも案内する用意があるので、言ってくれ、私の顔がパスポート代わりだ。




ふうん♪ 俺も及ばずながら協力するぜ♪
シャカとはまた一味違った味わいがあるから、期待しててくれ♪




「余計なお世話だっ!!!!!」




          
たまたま 「2006ミロカミュ・フェスティバル」 に投稿した地獄篇とジャストミート!
          ミロカミュに地獄は欠かせません! ってほんとに?
          西洋の地獄と仏教の地獄は違うので、そのあたりの観念の差異は難しい問題です。
          個人的には子供の頃から慣れ親しんだ(?)仏教の地獄の方が好き(??)ですね。