大晦日・特別編
「きょうは、俺が時代考証をさせてもらう。」
「ミロ、今、何時だとおもっているのだ!大晦日の夜更けにいきなり時代考証とは、いったいどうした風の吹きまわしだ?」
「まあ、黙ってきけよ。」
ミロはにやっと笑うと、カミュを椅子に座るように促した。
「今日、星矢と瞬が話しているのを聞いたのだが、日本には『年越しそば』という習慣があるそうだ。」
「年越しそば? そんな言葉は招涼伝には、出てきていないが?」
不審顔のカミュにはかまわず、ミロは言葉を続けた。
「年越しそばとは、大晦日、新年に移り変わろうというその時に、愛し合うもの同士がそばにいて、ともに新年を迎えることをいうのだそうだ。」
「ほう‥‥‥、日本人はシャイだと聞いていたがそうでもないようだな。」
「だろう?なかなか気のきいた言葉があるじゃないか。 そこで俺は思ったね、
聖闘士といえどもグローバルな視点を持つことは重要なことではないのか、
自分の生国にとらわれず、広い視野をもって行動できねばいざというときに迅速な対応はできん!」
ミロの演説が珍しく荘重なのにはいささか驚いたカミュだが、その論点は正しく、思わず頷いてしまう。
「そこで」
ミロは言葉を切ると、すっとカミュに近寄り、
「俺たちも年越しそばを体験することにした、カミュ、異存はあるまい?」
言うが早いか、カミュの身を抱き寄せる。
「あ‥‥‥」
その論理には納得できぬものがある、と言おうとしたカミュの口を素早くふさぐと、あとはもう、ミロの独壇場である。
ミロはパソコンの前で固唾を飲む我々にちらと目をやると、カミュを伴ない隣室へ姿を消した。
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