レベル1 「純真無垢」 |
「このごろ仲がいいようだね」 突然声をかけられてミロとカミュが振り返ると、そこに立っているのはサガである。 「はい!俺たち、親友ですから!」 胸をはって言うミロと、ちょっとはにかんで小さく頷くカミュは、年長のサガの見るところ、なかなかいいコンビのようであった。 「そうか、これからもお互いに助け合い、競い合ってゆくといい。」 なかなか聖域に馴染めなかったカミュを皆の輪の中に引き込んだのはミロの功績といってよかっただろう。 サガはまだ小さい二人を微笑ましく思う。 幼いころから常人を遥かに凌駕する小宇宙を内包していた者達を黄金聖闘士として育て上げていくことに喜びを感じているのである。 「カミュ!さあ、訓練に行こう!今度は負けないからねっ。」 「では、失礼します。」 礼儀正しく言うカミュと、待ちきれない様子のミロと。 「いいライバルになりそうだな。」 サガは笑って見送った。 |
レベル2 「天真爛漫」 |
「カミュの髪の毛って、どうしてそんなにきれいなんだろう?」 「え?……どうしてって……ミロの髪だってきれいだよ。」 「そうかな? でも俺はカミュの髪が好きだな!」 なんと答えていいかわからなくてカミュはうつむいた。 「ほんとにきれいだよ!ねえ、さわってもいいかな?」 「………うん」 後ろに回って両手でそっと艶やかな髪を撫でたミロは、こっそり顔を近づけてみた。 ほんとにいい匂いがする…カミュの髪って素敵だ…… 「カミュ、明日も一緒に訓練しようねっ、約束だからね!」 前に回ってカミュの顔を覗き込んだミロは、おやっ?と思った。 「どうしたの? 顔が赤いけど…」 「え? そうかな……?」 カミュが手を頬に当てるしぐさが妙に可愛くて、今度はミロがドキドキしてくる。 なぜだかわからなくて首をかしげたミロだった。 |
レベル3 「恋愛入門」 |
「あれ?ミロは?」 約束の時間に天蠍宮に来てみたがミロの姿が見えない。 「おかしいな?」 約束を守らなかったことのないミロのことが気になり、宮の裏側まで回ってみたが、そこにもいない。 ミロのことが心配なのと、自分ではまだ気がつかないが、自分のことより大事な用事があるのでは?、と不安に駆られたカミュは聖域中を探し始めた。 「ミロッ!大丈夫?!」 ミロはスターヒル近くの崖の下にうずくまっていた。 駆け寄ってくるカミュを恥ずかしそうに見て、目をそらす。 「カミュが好きそうな花を見つけて取ろうと思ったら………」 ミロは唇を噛んだ。 こんなところを見られるはずではなかったのだ。 「……足を滑らせて崖から落ちた。」 「怪我……したのか?」 「くじいただけ……だと思う。」 「花はいらないから……ミロがいなきゃだめだから…」 青ざめたカミュに助け起こされたミロの頬に長い髪が触れる。 どきっとするほどいい匂いだった。 |
レベル4 「初心者」 |
「カミュ……お前、俺のことどう思ってる?」 「私か?」 カミュは読んでいた本を膝に置いた。 「天蠍宮を守護するスコーピオンのミロは優れた技量を持つ黄金聖闘士だ。」 「それだけ?」 「他に何がいる?聖闘士として文句のつけようのない評価だと思うが。」 「だから聖闘士としてじゃなく、お前にとって俺はどんな存在かってことだよ!」 「それなら簡単なことだ。聖域での最初の友人にして良きライバル、私の親友といえる。これでよいか?」 ミロはため息をつく。 「もうちょっと他の言い方はないか?もっとこう…心理的な表現でなんとかならないか?」 カミュが首をかしげた。 「心理的?たとえばどのような?」 ミロが身を乗り出した。 「俺はお前が好きだぜ、ああ、かなり好きといっていい。お前はどうなんだ?」 「そんなことか。それなら、私もお前が好きだ。」 カミュが再び本を取り上げ、ミロは盛大にため息をついた。 |
レベル5 「青春時代」 |
「カミュ……」 「そんなことを言われても私は困るっ!」 「でも、お前だって俺の気持ちはとっくにわかってる筈だぜ? もう、自分をごまかすのはよせよ。」 「……だから、私は……ミロ……本当に困るから………」 数歩下がったカミュの背が壁にぶつかった。 ミロがカミュの手首をつかむ。 「俺も一緒に困ってやるよ……カミュ……」 「あ……………」 夢中になっているミロの腕の中でこわばっていたカミュの身体から急に力が失われ、頭をのけぞらせたカミュの長い髪が揺れた。 「あっ……カミュっ!」 慌てて抱きなおしたミロが蒼白になる。 「おい、カミュっ!!どうして……?」 荒い息をつきながら頬を染めたカミュが顔をそむけた。 「……息が……できなくて………」 今度は、ミロの身体からどっと力が抜ける。 「カミュ……ごめん…驚かせた……」 やさしく抱きしめられたカミュがそっと目を伏せた。 |
レベル6 「相思相愛」 |
「お前さぁ、俺にキスされるの好き?」 書物に目を落としていたカミュが急に固まった。 「ミロ……よく昼日中からそんなことが言えるものだな! 呆れ果ててものも言えん。」 「ふうん、じゃぁ、夜なら言ってもいいんだ♪」 「誰もそんなことは言っていないっ!」 「うん、俺が今初めて言った♪」 頬杖をつきながらカミュを見ているミロには、いっこうにこたえた気配がないのだ。 気が付くとミロがいつの間にかカミュの後ろに回ってきている。 「好きってことに昼も夜もないんだよ、そうは思わないか?」 「え……?」 ミロの声がささやきに変わっている。 「カミュ………今夜、一緒に過ごせないか………?」 なにか言おうとした花の唇がやさしくふさがれる。 答えを聞かなくてもよいのか……? ミロ………私は…… カミュの耳朶が濃い朱に染まっていった。 |
レベル7 「以心伝心」 |
「カミュ、いる?」 案内も乞わずにミロが入ってきた。 「ちょうどよかった、今、夕食の用意をしていたところだ。」 「そいつは都合がいい!もう倒れそうだぜ。」 極上ワインを抱えたミロが笑みを浮かべ、軽くカミュにキスをする。 ちょっと顔を赤らめたカミュが席に着くよううながした。 可愛いじゃないか、 キスの一つでいちいち顔を赤らめるんだからな! いい加減に慣れてもいいんだが…… ま、そこがいいところだが、と思いながらミロはワインの栓を開けた。 テーブルの上には鮮やかな赤とピンクのバラが飾られている。 「ふうん、アフロからか?今日はなんでまた?」 「どうやら美の伝道らしい。食卓が華やぐのはよいことだ。」 バラもいいが、お前の存在も十分華やぐぜ♪ お楽しみが待ってるしな♪ ミロのつぶやきはカミュには聞えていない。 ミロはワインを飲み干した。 |
レベル8 「魚心水心」 |
「この赤いバラ、なんて名前なんだ?」 「確か『ラブ』だと言っていた。」 「……ふうん…お前、何か思わない?」 「おそらく、この花を作出した園芸家がバラを愛する心を名前に託したのだろう。」 「……そうかもな……じゃぁ、こっちのピンクは?」 「それは『ブライダルピンク』だ。」 「ほう!」 ミロの目が意味ありげに輝いた。今度こそ…! 「お前、何か思わない?」 「明らかに結婚式を美しく彩るための命名だろう。うまく考えるものだ。」 やれやれ、恥らうとか照れるとか、ないもんかな…… 俺は見てるだけでドキドキしてくるんだが…… ……つまり俺の手腕にかかってるわけか。 「…カミュ…なんだか…気分が悪くなってきた……」 「それはいけない!はやく横になったほうがよい! 肩を貸したほうがよいか?」 「すまん、カミュ………」 後ろ手でピースサインをしてみせたミロだった。 |
レベル9 「愛の鉄人」 |
「…ミロ…気分が悪いのではなかったのか?」 「悪かったさ。でも、お前を抱いてたら直るんだよ♪ お前は、俺の最高の清涼剤だから♪」 「お前ときたら、いつでもそれだ…」 「あれ?お前、俺のことが嫌い?」 眼をそらすカミュにミロの手が伸びる。 「そんなことは私は……あ……」 「ふふふ……だろ?……それとも……」 「あ……ミ…ロ………」 「灯り……消そうか?」 頬を染めて消え入るようにカミュが頷いた。 「カミュ……俺のこと好き?俺のどこが好き?」 「……そ…そんなことは私は……」 「言わなきゃ寝かさない!聞かせろよ♪」 「…………」 「しょうがないな……」 「あ………ミロっ!!!!」 「こうでもしなきゃ、お前にはわからないだろ?」 「な…なにも、そんなことをしなくても……」 あらがいかけたカミュをとらえたミロが優しくキスをする。 「愛してる…ほんとに…」 カミュの頬が朱に染まった。 |
レベル10 「氷の抱擁」 |
…冷たい……冷たい…… もはや手足も動かない……何も聞えぬ…… 絶対零度の宝瓶宮の床に触れていた頬も何も感じなくなった…… ……私の命の灯が消えようとしているのだ……… もう逢えない……逢いたかったのに…… ミロ……どれほど嘆くことか……私のミロ… ……これは?…この懐かしい小宇宙は…? 私を抱いていてくれるのか……? 抱かれていることさえわからぬ私を…… ……こんなに小宇宙が動揺して……… ミロ……ミロ……… はっと目覚めたとき、隣に眠るミロがいた。 「ミロ!!私を独りにしないでくれ!二度と離れたくない!」 突然の声にミロが眼を開けたとたんだった。 カミュが覆いかぶさり口付ける。 ……カミュ……どうして?…………カミュ… 当惑しながらも、ミロはカミュの求めに応じてゆく。 身を揉むようにすがりつく冷たい身体がいとおしかった。 |
レベル11 「一心同体」 |
「カミュ………もう落ち着いた?」 「すまなかった……ミロ………私は……」 「気にするな……不安も孤独も、もうお前には味わわせない。 いつでもそばにいてやるよ。」 ミロがカミュの額に頬に優しくキスをする。 「現在がいかに幸せだろうとも、 過去の記憶は繰り返しお前を訪れるだろう。 だが、安心していいぜ、俺はそのたびごとにお前を抱こう。 俺に抱かれて暖かさを取り戻すがいい。 俺はいつでもお前のそばにいよう。」 ミロ……… 辛いのは私だけではなかったのに…… 私がミロに、あとに残される孤独と悲哀を味わわせたのに ミロはそのことには何も触れない……… 「私こそ…… もうお前を一人にはしない……常にともに在らんことを」 暖かい誓いのキスが交わされる。 六月の雨の夜、願いを込めた時の流れ。 |
レベル12 「蜜月旅行」 |
「なあ、この乗馬の訓練、というか旅行だが、まるで……」 厩舎から馬を引き出しながらミロが照れ笑いをし、それきり黙った。 「まるで……なんなのだ?」 「いや、やっぱりやめておこう、お前が怒りそうだ」 「私は怒ったりはせぬ。」 「………いや、よしておこう、言わぬが花だ。 そんなことより向こうの木まで競争だ、 お前が勝ったら教えてやるよ♪」 馬上からミロが明るく笑う。 「よかろう!」 結局、ミロが勝ち、カミュは小さな疑問を抱えて宿に戻った。 「どう?……今度の旅……来てよかったじゃないか」 「ああ、聖域から外に出るのは初めてだが、実に良い。」 「特に温泉が、だろ?」 「……私はそんなことは…」 カミュが頬を染める。 「ミロ……この旅行…まるで……」 ……世に云う蜜月旅行のようだ…… 「なに?」 「なんでもない……」 広い胸にカミュが顔を伏せる。 夜の空気が揺れた。 |
なにか他のコンテンツを、と思って「占い」に挑戦してみたときに、「12のキャラ」が必要でした。
あらら、黄金と同じね♪と嬉しくなったものの、あまりいい結果が出ません。
考えた挙句に辿り着いたのがこの12のミニストーリーです。
幼少時から現在までの彼らをなぞっているので、それはさながら愛の軌跡。
既成のものだったので文字数制限があり(たぶん全角350字くらい))、その枠内で話をまとめるというのが新鮮でした。
果たして、この中から古典読本or黄表紙に出世するものが出るかどうか?
「冠位十二階」というのも、私的には大ヒットのネーミングです♪
「ほのぼの」 「ギャグ」 「シリアス」 「耽美」、
彩りはさまざまですが、お気に召すものがありましたら幸いです。
※ 「冠位十二階」 603年、聖徳太子が制定した冠による位階制。
徳・仁・礼・信・義・智をそれぞれ大小に分けて十二階とし、
冠を六種の色(紫・青・赤・黄・白・黒)で、大小はその濃淡で区分けして、位階を示した。
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いかにもありそうな話で、
コメントのつけようがないです(笑)。
小さい時はこんなものかと。
そろそろ萌芽が見えてきましたね。
カミュ様の髪の毛は大事なキーワード。
このシーン、
二人の表情を想像するのが好きです。
ミロ様が目をそらす、というのは珍しいですね、
たいていはカミュ様の専売特許ですから。
ほかには
シベリアでの毛皮の上での一件があるだけです。
この花、エーデルワイスがいいなぁ♪
カミュ様ったら、ほんとにカミュ様だわ(笑)。
ミロ様、このアプローチは直球のようでいて、
その実、全然効果ないです。
で、他の手段を実行すると次のようになります。
「俺も一緒に困ってやるよ」って………、
それ、全然うまくないです、ミロ様!
今ならもっと上手くいえるのに..。
まあ、とりあえず目的は果たしたので
よしとしましょうか(笑)。
さあ、はじめてのおつかいおさそいです。
ミロ様もどきどきしてるのですが、
そんな様子は毛ほども感じさせないところは
さすがミロ様です!
この夜の首尾はどうだったのでしょう?
よさそうな気もしますが、
最終的に拒否だったかも?
ここからレベル11まで五話連続です。
すでに場面は現在のお二人に。
ささやかですが「や」もございます。
御注意くださいませ。
カミュ様に間接話法は通じません。
そこで、ミロ様、ダイレクトに実力行使です。
誰にピースサインをしたかって……、
ははは……読者サービスです(笑)。
非常に目的語が少ないですね、
ミロ様、本領発揮です♪
蠍座の本領って、こうなのか!
(↑誤解です…)
この話の出来は、
皆様の想像力にかかっております。
文中にろくに名詞を使わなくても
「や」になるという好例か?
この話、好きです、迫力あります!
短いのはいいなぁ、
と思うのはこんなときです。
冷たい闇に引き込まれていくカミュ様が
最後に感じたのは懐かしい小宇宙。
しかし、
抱かれていることも口付けさえも
もはや何も感じられない。
畏怖の記憶がカミュ様を駆り立てます。
ミロ様は、ほんとに優しくて………。
こういう人がそばにいてくれれば、
何があろうと大丈夫ねっ!
カミュ様、貴方はほんとに幸せな方です!
突然来て、ここだけお読みになった方には
なにがなんだか分からない話ですみません。
それにしても、
「馬上から明るく笑うミロ様」って
素敵だと思うんですよ。
夢でいいから見てみたいです……、
実はまだ一度も、
お二人が夢に出てきたことありません。
それが悔しい管理人(笑)。