「 チェックリスト法 」


「今日5月24日はアレックス・オズボーンの誕生日だ。」
「知らんな。」
「アメリカの広告代理店の副社長をしていた1939年にブレーン・ストーミング法を考案した人物だ。 これは創造性を開発するための技法で、何人かが集まり、あるテーマをめぐって、既成概念にとらわれず自由奔放にアイデアを出し合う会議形式の一種だ。 企業などで頻繁に使われている。」
「ふうん……」
「また、チェックリスト法という、発想に関する法則がある。」
「……なんだ、それは?」
「既成概念の殻を打ち破り、新しい発想を引き出すための九つの提案だ。
@ ほかに使い道はないか?
 既存の材料・製品などについて他の新しい使い道を考え出すやり方だ。」

   新しい発想ねぇ………俺はこんな話を九つも聞かされるのか?
   ん?待てよ…? この発想をカミュに当てはめたらどうなる…?

   ……カミュのほかの使い道って? …………使い道っ!!
   そ、そんな恥ずかしいこと、俺は口が裂けても言えんっ!!
   ああっ、今夜は眠れないっ、どうしてくれるんだ??

「A ほかからアイデアを借りられないか?
 その問題と似たものからヒントを借りてくるやり方だ。 」

   カミュと俺との間柄に、ほかのアイデアを?
   つまりデスあたりから、もっとほかのシチュエーションを助言してもらえと?
   ううむ、あいつならなにを言い出すか知れたものではないな……
   例えば………森の中とか、夕陽のスニオン岬で人目を忍んでとか、も、もしかしたら浴室とかっ!
   ちょ、ちょっといいかも♪
   しかし、カミュがなんというかなぁ………

「B 変えてみたらどうか?
 物の形、色、大きさなどを変更してみることだ。 乗用車のモデルチェンジなどがその典型だ。」

   カミュの形は変えられん!
   今ある姿は非の打ち所のない類まれなる完璧さだ、この俺が保証する♪
   吸い付くような肌も、甘やかな声も、からみつく腕も、心とろかす吐息も、艶やかな髪も…
   あれ? そういえば、紅い髪ってどんなものだろう?
   今まで一顧だにしなかったが、金髪と紅い髪ってなかなか豪華じゃないか♪
   かなり絵的に良くないか?? ちょっと食指が動いたりして! 
   ………これって浮気っていうのか?? 俺、問題発言してる?

「C 大きくしてみたらどうか?
 現在のものより強化したり、付加価値をつけたりすることだ。」

   カミュを強くする? 
   カミュに腕力なんか要らんからな……そんなものが妙にあったら、風情を損なうことおびただしい!
   すると、持久力をつけるとか、持続力を増すとか、か?
   なんのって………そ、そんなことはここでは言えんっっ、俺にも常識ってものがある!
   それに、ええっと………それをいうなら、カミュだけじゃなくて…♪

「豪華版とかデラックス型がこれに当たる。」

   な、なにぃ〜っ! 豪華版カミュにデラックス型カミュだとっっ!!
   その実態がよくわからんが、すごすぎる気がする! ぜひ、試してみたいっ♪
   どう試すって………いくら黄表紙でも余計なことは聞いてくれるな、常識はないのか?常識はっ!

「D 小さくしてみたらどうか?
 技術進歩に伴う高密度化・小型化によって、同じ容積・重量で従来と同機能か、より高性能な物(工業製品)を作ることだ。または運用コスト削減等を目的として、従来品よりも小型の機器で間に合わせることをもいう。いわゆるダウンサイジングだ。」

   カミュを小さくするっていうと…? 
   例えば巷で流行っているスーパードルフィーのカミュ版を作って、好みの服を着せ替えたりしてっ♪
   黄金聖衣はもちろんのこと、長衣にカジュアルスーツにカクテルドレスにローブデコルテに……♪
   ついでに俺のも用意して記念写真を……ふふふ♪

「E ほかのもので代用はできないか?
 ほかの素材やアプローチを検討することだ。」

   カミュをほかの素材に………
   たとえば大理石でカミュの彫像を作り、天蠍宮のホールに飾ったら♪ 
   たしか磨羯宮にもそんなのがあったはずだから、遠慮は要らんっ!
   どんなポーズがよかろう?
   ホールは人目につくから色っぽいのはだめだな、水瓶を掲げて横座りしているのなんかはどうだ?
   もちろん聖衣なんかではさまにならん! ドレープも美しい長衣に限る!
   ああっ、俺はもうそこから離れられん!
   天蠍宮の守護というより、カミュ像の守護にまわらせてもらうっっ!!
   
「F 入れ替えてみたらどうか?
 現在あるもののレイアウトを変えたり要素を入れ替えてみたりすることだ。」

   ……え?
   レイアウトを変える?…っていうと、俺とカミュの役割を替えるとか、そういうことかっっ?!
   そ、そ、そ…そんなことが有り得るのか?? どきどきどきどきどきどき……
   お、俺としてはカミュさえ承知してくれたら、なんの異存もないが!♪
   いいのか、おいっ! 本当にいいんだな、カミュ?

「G逆にしてみたらどうか?
 前と後、上と下、右と左などをさかさまにしてみることだ。」

   おい、カミュっ! お、お前、いったいなにを言っているのかわかってるのか?!
   そ、そ、そ、それは体○交○って言わないか?
   あまりにも強烈で、伏字でなければ俺にはとても言えんっっ!
   そういうのは、閨中で頬を染めて恥じらいつつそっと俺の耳元でささやくのが筋だと思うぜ!
   そうすれば俺だって、いくらでも注文に応じてやるよ♪

「H組み合わせてみたらどうか?
 ブレンドする、目的を組み合わせる、ユニットを組み合わせる、など、個々で存立しているものを組み合わせることだ。例としては、消しゴムつき鉛筆などがあげられ……あ……ミロ? ミロっ、大丈夫かっっ!」
驚いたカミュが即座に気道確保してマウスツーマウスに持ち込んだので、ミロは本当に心停止するかと思ったのだった。





                 誕生日ミニミニから黄表紙に出世を果しました。
                    オズボーンもブレーンストーミングもチェックリスト法も初耳だったのですが、
                    ミロ様には超強力な作用を果したようです。

                    チェックリスト法は新商品開発などに使うやり方らしいので、
                    皆様、本気にしないでくださいね
                    個人的には、この話とか 「 評価 」  とか、かなり好きです。