春の海 ひねもす のたりのたりかな              与謝蕪村

      【 歌の大意 】     春の海はおだやかで 一日中変化もなくゆったりと波がうねっているばかりだ
  

「ミロ、起きぬのか?」
「う〜ん………もう少し寝かせてくれ……」
「しかし……もう日が高い。」
「……だめだ……もっと寝たい……」
「……しかたのない…まあ、よかろう。」


「ミロ…ミロ! 正午を過ぎた。 このままでは外聞が悪い。」
「いいじゃないか……俺はまだ寝たいんだよ………カミュ、もっとこっちへ…」
「またそんなことを……あ…………」
「カミュ………」


「ミロ、お前はいったいなにを考えているのだ! 何時だと思っているっ!」
「ん? …3時だ……ふうん、いいじゃないか、 穏やかな午睡の時間だ。じつにまったりとして、くつろげて。」
「あ……ミロ………よせ…」
「気にするなよ。 一年で一番いい季節だ。 楽しまなきゃ、損するだろ?」
「しかし………ミロ……あ……」
「いいからいいから。」


「ふうぅ……やっぱり春はいいね。 お前もそう思わんか? 俺は春が大好きだ。」
「ミロ………私は……」
「ん? なに?」
「あっ……もう夕暮れではないか! 西の空が茜に染まっている。 私は知らぬ! 勝手にするがいい!」
「お前がそう言うなら勝手にさせてもらうけど、同意してくれなきゃ困るな。 なんせ俺たちは一心同体だから。」
「そんな勝手なことを! 現実から言葉を導き出して、私を規定するのはやめてもらおう!」
「ほらほら、すぐそうやって話を固いほうにもっていこうとする!お前の悪いクセだぜ。 俺が直してやるよ。」
「あ……お前はすぐそうやって……よせと言うのに……」
「だめ……!いうことをきいて……俺のカミュ……こんなに愛してるから……」
「………」
「ね?お前も俺のこと、愛してるんだろ?」
「……ミロ……私はもう………」
「さあ、もっと素直になって……俺の大事なカミュ……俺のことが好き?」
「ミロ…」
「はっきり言ってくれなかったら、俺は泣くぜ。 お前、俺が泣いてもいいの?」

カミュはあきらめた。
どうせミロに勝てるわけはないのだ、それなら早く結論を出そう。
「そう言ったら寝かせてくれるか?」
「うん、約束する。」
「では言おう、この私が正面切って言うのだから聞き逃さぬように願いたい。 ミロ、お前が好きだ、愛している。 これでよいか?」
「う〜〜ん、せっかくだがちっとも色っぽくないんだよな。なんにも ゾクゾクしないぜ? もうちょっと何とかならんのか?」
「なにを贅沢を言っている?!」
「だからさ……もっと………ほら……どうかな?」
「あ……ミロ……ミロ………」
「お前は俺の海だ……いつでも俺をやさしく包んでくれる春の海だ……お前の懐に抱かれて眠りたい…」
「あ……」
「カミュ……俺のカミュ……愛してる…」
「………私も……私もだ………愛している……私のミロ……」

その後、寝かせてくれる、という約束は反故にされたが、とりたてて抗議はなされなかったということだ。 めでたしめでたし。





              おかしいな? ギャグ混じりの古典読本のはずが黄表紙に。
                          
              春ですからね、誰しも寝床から出たくない、
              出たくはないけど、いろいろな理由から起きねばならぬのが我々の日常です。
              で、日常を超越しているミロ様は、 「 日常打破 」 を図りました。
              聖闘士たるもの、既成の概念にとらわれていてはならぬのです。
             
              
「なにやら理屈が聞こえてきたが、要するに私を抱きたかったというだけのことではないのか?」
              「そう固いこと言うなよ、もしかしてお前、俺に抱かれたくないわけ?」
              「お前はすぐにそういう言い方をするが私は…」
              「いいからいいから。」
              「あ…」

     
              わっ、上の会話、だんだん短くなってきて面白いっ♪
              
「そういう問題ではなかろうっ!」
              はい……
             
 「それに一番最後のは、会話というより単なる間投詞じゃないのか?
               いや、『 単なる 』 、というよりは 『 妙なる 』 といったほうが当ってるか♪」
              「ばっ、ばかものっっ!余計なことをっ!」