「カミュ……まだ、だめだ……まだ許さない…」
「…ミロ………もう私は……ああ…」
「あんなことを言って……俺を心配させて………俺がどれほどつらかったかわかってる?」
「で…も…………ミロ……やめて…」
「だから許さないって言っただろう?……ほら……こんなにこんなにお前を……」
「ミ……………ロ…」

もはや力の失われた身体は自分でもどうにもならぬらしい。
ミロに抱きなおされても、目を閉じたカミュはぐったりとミロに身をまかせたままだ。
「カミュ……聞こえる?」
「ん……」
「あんなことを言って俺が気にしないはずがないだろう? そう思わない?」
「ん……そう…かも……」
「いくら論理的だからって、言っていいことと悪いことがあるんだぜ、考えなくてもいいことを想像させられた俺の身にもなってみろよ!」
「ん……すまない…」
「聞きたい? 俺がなにを考えたか。」
「ミロ……そんな……そんなこと…いや…」
「お前が誰かに抱かれてなにかされてるところなんて考えさせるなよ、ほんとに怒るぜ!」
「あ……ミロ………やめて……いや…いやだから…」
「少しは嫉妬させろよ……俺はこんなに、こんなに、お前だけを愛してるのに!」
「ミ…ロ………いや…もう……だめだから…」
「カミュ……カミュ………許さない…もっとだ!」
「ああっ…」


   それともわざとあんなことを言ったのか?

もはや俺がなにをしても反応はない。
乱れた髪を身に添わせ、疲れ果てて眠るカミュを見ながら考えた。
あれほど先の読めるカミュが、たかだか3つくらいの事例の解釈を間違う筈がない。
絶対評価、相対評価、個人内評価と進むうちに、個人内評価で俺のことを認めざるを得ないのがわかっていて、ご丁寧に一つ一つ論証していったのには訳があるんじゃないのか?

   ………やはりそうなのか?
   あんなことを言って、俺にあらぬことまで想像させておいて、わざと嫉妬させるようにしたのか?
   そして嫉妬に燃えた俺に抱かれたというのか?

カミュの判断は狂わない。
カミュの信じる論理は、常にカミュを思った方向に導いてゆく。
だとすれば、今夜の俺の行動も読めていたわけで、俺はカミュの予想通りの行動に走って、こんなにカミュを責めて、気を失うほど追い詰めて……。

「ほんとにお前って奴は………」
疲れ果てて、しかし淡い笑みを浮かべて眠るカミュに俺はそっと口付けていった。