その子二十(はたち) 櫛にながるる黒髪の おごりの春の美しきかな  

                                                 与謝野晶子  歌集「みだれ髪」より

                                  【歌の大意】    長い黒髪を櫛で梳かすとき  
                                             二十歳の私は 
                                             その美しさに 心ときめくのを覚えるのです
                                             人生で一番美しいのは 今なのかもしれぬと



ミロは夜毎に私のこの髪を愛でてくれる   それも手放しで
そんなものだろうか? 私にはとくにそうとも思えぬのだが

まだそんなことを言ってるのか?
俺が何度もいってるだろう? 世界中で一番きれいだと

世界中とは大袈裟な!  
お前はまたそんな根拠のないことを言うが
美しい髪を持つものなら この聖域にも他にも何人もいるだろうに

わかってないんだな カミュ   いいか よく聞けよ
俺は世界中でお前が一番好きなんだぜ?
一番好きなお前の髪が一番きれいに決まってるだろう
ちょっと俺にもその櫛で梳かさせろよ

あっ・・・・ミロ・・・・

いいからいいから ♪
・・・背中・・・くすぐったくないか?

・・・・・・大丈夫・・・・・・ではないかもしれぬ・・・

ふふふ・・・・・しかし 本当にきれいだぜ
お前 宝を二つ持ってるな

・・・・・・え?

この髪と 俺!

・・・・ばか者・・・・・・





                       与謝野晶子は明治の歌人。
                            歌集「みだれ髪」は、夫・与謝野鉄幹との
                            激しい恋愛の過程で生み出されました。
                            随所に散りばめられた強烈な官能美と
                            かつてない大胆な自己の肉体への賛美は、
                            当時の若い人々の思いを代弁したといえます。

                            「その子」とは作者自身、
                            「黒髪」は女性の肉体を代表しています。