いくつもの日々を越えて  辿り着いた今がある
    だからもう迷わずに進めばいい  栄光の架橋へと

                                               「栄光の架橋」より          ゆず


今日は、俺に続いてカミュが黄金聖衣を得た日だった。
教皇の間に大勢が居並び見詰める中で、教皇の手によりカミュの頭に水瓶座の聖衣のマスクが載せられた時、どれほど美しかったことか!
カミュ本人も感動しただろうが、見ている俺の方もほとんど涙が出そうなほどの喜びに心が打ち震えたものだ。
これで二人とも夢にまで見た黄金聖闘士になることができたのだ。
今までのつらかった日々や、捨て去らなければならなかった多くのものが心に浮かんでくる。
時にくじけそうになるたびに互いに励ましあい、弱音を吐きそうになる自らを叱咤してきたのだった。

戴冠を終えたカミュが俺の横に並んだとき、俺たちは誇らしげにお互いの姿を見た。
いつかは身につけたいと心から願っていた黄金聖衣が、どれほど光り輝いていたことか!
この瞬間から俺たちは黄金聖闘士としてアテナに仕え、この地上の平和を守ってゆくのかと思うと、武者震いも出ようというものだ。
それにしても、カミュには水瓶座の聖衣が本当によく似合っている。
俺たちは今までに数え切れないほど互いの聖衣のことを話し合い夢に見たものだが、これほどまでにカミュに似つかわしいものだとは
いったい誰が想像することができたろう。
俺は嬉しくて嬉しくて、どうしても笑ってしまう。

「 ああ、カミュ! ほんとうによく似あうぜ! もっとよく見せてくれ、まるでお前のために誂えたようじゃないか!」
「 そんなことは………ミロ、お前の蠍座の聖衣も素晴らしい輝きだ、とてもよく似合っている。」
誇りと喜びに頬を染めたカミュが、はにかみながら俺を見る。
「 なあ、今日から俺たち、ほんとに黄金聖闘士なんだぜ! なんだか信じられないような気もするがほんとのことだ。
 これからは全力でアテナのために、この地上の平和のために、自分の得た力を使うことができるんだ。
 なんだかドキドキしてくるぜ、高揚してるっていうのかな? お前はどうだ?」
「 私も同じだ、ミロ。 この黄金聖衣を身につけたとき、小宇宙が遥かに高まってゆくのをはっきりと感じることができた。
 これからどんなことが待っているのか、私たちがこの地上の平和のためにどれほど寄与することができるのか、
 それはまだ誰にもわからぬことだが、自分の持てる力のすべてを捧げることを誓おう。
 その道を、ミロ、お前とともに歩けることを私は誇りに思う。」

俺たちは頷き、どちらからともなく手を差し出して固く握手をしていた。
教皇の間から降りてゆく石段は長く、急な傾斜を風が吹き上げてくる。
カミュの長い髪を乱すはずのいつもの風も、今日は美しい黄金のマスクに遠慮したのだろうか、いつになくやさしく感じられた。
思い切って言ってみた。
「 カミュ………お前の聖衣、ほんとにきれいだぜ、ここだけの話だが黄金聖衣の中でとびきりの一番だと俺は思う。
 そのマスクをつけたお前は……ほんとうにきれいだ。」
「 え………」
カミュが俺の言葉に顔を赤らめた。
それはもしかしたら、戴冠のときよりも鮮やかな色だったかもしれない。
「お前の……ミロ………お前の聖衣も似合っている。 私は、そう思う。 その聖衣をつけたお前はとても……素晴らしい。」

俺は大きく息を吸い込んだ。
眼下に見下ろす世界は俺たちの前に果てしなく広がっている。
この命ある限り、地上の平和がいつまでも続くように、力を尽くそう。
この身につけた黄金聖衣に恥じぬよう、黄金聖闘士の名にふさわしく責任を果たそう。

黄金聖闘士としての俺たちの日々が、今日から始まるのだ。



 

                       アテネ・オリンピック記念作品です。
                       毎日、聞くともなしに聞いていた、ゆずの「栄光の架橋」。
                       もうすぐ閉会式になろうという今夜、はっと気付きました。
                       「この歌、使えるっ!」。
                       家族が寝るのを待ちかねて速攻でアップです、これは早かった♪
                       書き終って自分で感動しました、いい内容じゃありませんか!
                       さすがにオリンピックはたいしたものです、
                       おかげさまで素敵な短編がこの世に生まれたのですから。
                       いいんです、いつもの自画自賛です…(笑)。

                       この歌の歌詞を全部見てみたら、ほんとに黄金にぴったりで驚きました。
                       間に合うように気付いてよかったと思います。

                              誰にも見せない泪があった 人知れず流した泪があった
                              決して平らな道ではなかった けれど確かに歩んで来た道だ
                              あの時想い描いた夢の途中に今も
                              何度も何度もあきらめかけた夢の途中

                              いくつもの日々を越えて 辿り着いた今がある
                              だからもう迷わずに進めばいい
                              栄光の架橋へと…

                              悔しくて眠れなかった夜があった
                              恐くて震えていた夜があった
                              もう駄目だと全てが嫌になって逃げ出そうとした時も
                              想い出せばこうしてたくさんの支えの中で歩いて来た

                              悲しみや苦しみの先に それぞれの光がある
                              さあ行こう 振り返らず走り出せばいい
                              希望に満ちた空へ…

                              誰にも見せない泪があった 人知れず流した泪があった

                              いくつもの日々を越えて 辿り着いた今がある
                              だからもう迷わずに進めばいい
                              栄光の架橋へと
                              終わらないその旅へと
                              君の心へ続く架橋へと…



 
                                ←戻る