命なき 砂のかなしさよ さらさらと 握れば指の間より落つ |
歌集 「 一握の砂 」 より 石川啄木
「カミュ カミュ………なんてきれいな髪だろう……こんなにさらさらとして俺の手から逃れようとして………
でも、俺はお前を逃がさない、もっとこっちにきて………いつまでもいつまでも抱いててやるよ」
あの日 お前はそう言った。
頬を染めた私の耳に、くりかえしくりかえしそうささやいてくれた。
嬉しくて恥ずかしくてうつむいていたら、手に握った髪ごと私を抱きこんで、もう一度愛してくれたのだった。
その私が 朝の光の中でこうして露の命を終わるなど、知るすべもなかったのだ、あのときは。
せめてもの慰めに、ミロ、お前に抱かれて逝きたかったのに……
愛し 愛されているのだと、最期の瞬間まで身体で感じていたかったのに……
望みもせぬ闇染めの冥衣が、未来永劫まで消えることのない反逆者という汚名が、わずかな抵抗すら許されなかった我が身の不甲斐なさが、かつては黄金に耀いていた私の誇りを蝕んでゆく。
そうだ………もう、お前に愛される資格などありはしないのだ。
だから…………だから私は、独り冷たいこの床で、いのちを終えねばならぬのだ。
それでも ああ、それでも、
見えない目で、唯一残された聴覚で、私は、ミロ、お前の気配を捜している。
もしや、もしや来てはくれぬかと、今にも我が名を呼んではくれぬかと。
女々しいと笑われてもよい。
未練な! とさげすまれてもよい。
ミロ……どうしてもお前に会いたい。
抱いて抱かれて、安心して逝きたいのだ……。
でも……ミロは来ない、どこにもいない、私もミロを見つけられない。
もう会えない……なにも云えない…………ミロに許してもらえない………私の…ミ…ロ…… ……
ハーデス城で最期の意識が途切れるときに、
カミュ様はなにを思っていたことでしょう。
考えれば考えるほど、涙が滲みます。
ハーデスのやったことは未来永劫許せるものではありません。
サウロンが きゃつより偉く見ゆる日よ DVDを買ひきて指環と親しむ