君さらに笑みてものいふ御頬の上にながるる涙そのままにして

                                              若山牧水    歌集「海の聲(こえ)」より

                           【歌の大意】    ああ 貴方 笑いながら私になにか云おうとするのですね
                                      頬に流れる ほら その涙にも気付きもしないで



私は宝瓶宮にいた。
ここにいれば、必ず来てくれるに違いない、私の小宇宙に気付かぬはずはないのだから。
懐かしい冷涼な空気が私を包んでいる。
もう少ししたら、さらに懐かしい小宇宙が私を包んでくれるに違いないのだ。

外に出てみた。
眩しい地上の光が私に降りそそぎ、思わず足をすくませた。
そのどこまでも貫き通す日の光が、私に、生きているということを実感させる。
太陽の光とアテナの小宇宙が、身体の中にかすかに残っていた黄泉の翳りを完全に消し去ったとき、
私の目が懐かしい姿をとらえた。

   ミロ!あれは私のミロに違いない!

足が震えて、まともに立っていられないような気がする。
どれほど会いたかったことか、わかってくれるだろうか?
最初になんと言ったらいいだろう、どうすればこの気持ちを伝えられる?

私の前に現れたミロが何も云わずに私を抱いた。
この腕だ、私が待ちこがれていたのは。

   息ができないほどに抱きしめてくれていいから………私のミロ………

ミロがなにか言おうとして笑った。
頬に涙が流れているのに気付きもしないで。
私が少し笑ったら、ミロが私の頬をぬぐってくれた。
私も泣いていたのだ。

ミロの口付けは以前と同じで、とても優しく感じられた。
こうして、私はミロのもとに帰ってきたのだ。




                                  どれほど嬉しかったでしょうか
                                  一番会いたかった人に再会できた幸せがカミュさまを包みます。
                                  泣きながら笑って、笑いながら泣いて、
                                  聖域の日差しの下で交わす口付けはどこまでも甘いのでしょうね。
                                  最高のお二人に最高の幸せを!


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