さみしさのつれづれに手紙をしたためています あなたに 黒いインクがきれいでしょう 青いびんせんが悲しいでしょう |
会いたい人に会えないのはとても寂しいことです。
あなたに会いたい、その気持ちさえ伝えられないのはますます寂しいことなのです。
文字だけの存在って哀しいですね。
「 心もよう 」 作詞作曲 : 井上陽水
親愛なるミロへ
聖域のみんなは元気でいますか?
こちらに来て半年がたち、ようやくここの暮らしにも慣れてきました。 初めてサガに連れられてきたときはすごい寒さや風に驚いたけれど今では当たり前のことに感じます。 きれいなオーロラをミロにも見せたいです。
弟子を持つにはまだまだ未熟すぎてサガやアイオロスには心配をかけているかもしれませんが毎日の訓練にも十分注意しているので大丈夫です。
持ってきた本もときどき読んでいます。 ミロがくれた手袋も大事に使っています。
聖域に帰ったときにはミロの話も聞かせてください、楽しみにしています。
シベリアにて
カミュより
親愛なるミロへ
聖域のみんなは元気でいますか?
シベリアの夏はとても短くて温度もそれほどは高くありません、ギリシャとは大違いです。
ここには木が一本も生えていなくて地面にくっつくようにして草が生えるだけです。
ミロと行った森がなつかしいです、今度聖域に帰ったら木のてっぺんまで登ってみたいです。
弟子の指導には時間がかかります。 サガやアイオロスに教わったことを思い出しながら毎日頑張っています。
ミロの修行も進んでいますか? きっとすごく進歩したんじゃないかなと思っています。
毎日シュラやアルデバランたちと組み手をしていますか? 私は弟子と一緒に凍気を高めるようにしています、うまく行っています。
シベリアにて
カミュより
親愛なるミロへ
聖域のみんなは元気でいますか?
この頃は寒さがとても厳しくて先週は弟子が具合を悪くして熱を出しました。
この子は先月には足を捻挫したので、サガが用意してくれていた医学書をよく読みながら注意して直しました。
医学書はとても役に立ちます、骨折でなくてよかったです、だってちょっと自信ないから。
聖域の太陽が見たいと思うときがあります、緑の森も。 草の葉一枚でいいからさわってみたいです。
海は変わらず青いですか? ここの海は暗い蒼です、ほとんど色がありません。
シベリアにて
カミュより
親愛なるミロへ
聖域のみんなは元気でいますか?
また夏が来ましたね。 弟子達に、本当の夏はもっと暑いと教えてもあまりわからないようです、無理もありません。
私も夏の暑さを忘れてしまいそうで怖いです。
弟子はだいぶ力をつけたけれど一緒に組み手をするときはそうとう手加減をしなくてはなりません。
力の差がありすぎて自分の鍛錬にならないので少し不安です。 きっとミロの方がずっと強くなっていると思います。
みんなに会いたいです。 ミロに会いたいです。 思いっきり組み手をしてお互いに小宇宙を限りなく高めて力をためしてみたいです。
早く弟子を育てあげて聖域に帰って、海や森や花を見たいです。 ほんとの汗をかいてみたいです。
シベリアにて
カミュより
親愛なるミロへ
元気でいますか?
弟子たちはずいぶん成長してきました、あとどのくらいで満足いくレベルまで到達できるかはこれからの本人の努力次第です。 早く育てあげたいけれど焦ってはならないと思います。
サガもアイオロスも来なくなってずいぶんたちますが、私を信頼してくれているのだと思います。 期待に応えられるように頑張っています。
ときどきミロに会いたくなります。 そんなときはちょっと小さくなったあの手袋をはめてみます。 そうするとミロと手をつないでいるような気がします。
シベリアにて
カミュより
親愛なるミロへ
あまり長く人に会わないのでみんなすっかり私のことを忘れているんじゃないかという気がしてきましたが、そんなことはないですよね。
こんなのはよくない考え方だと思います。
ミロに会えたらいいなと思います。 たくさんおしゃべりしてお互いのことをもっと知りたいです。
友達が欲しいです。 弟子はいつまでも弟子なので、友達ではないので。
話がしたいです、会いたいです、手紙じゃなくて本当のミロに会いたいです。
もしも会えたら握手して抱き合ってお互いの暖かさを確かめ合いたいです。 でもこんなこと考えてるのは自分だけかもしれないと思うと怖いです。
ミロにはたくさんの友達がいるから忘れられているかもしれません、それが怖いです。
シベリアにて
カミュより
親愛なるミロへ
とても会いたいです、いますぐに聖域に戻りたいです。
お願いです、神様、ミロに会わせてください。
この願いを叶えてくれたらなんでもしますから、お願いします。
こんなことを書いたらいけないとわかっています、弟子のことを考えてやらなくてはいけないのに。
でも書きたくてたまらなくて、とてもミロに会いたくて声を聞きたくて
私はもっと強くならなくては。 弱音を吐いてはいけない。
ミロに恥ずかしい自分であってはならないのだから。