今日もおんなじ夜空の下 あなたもきっと眠る時間ね 手帳につけた誕生日も そっと遠くでお祝いするわ こんなときにはどうしても あなたに会いに行きたいけど あれが最初で最後の本当の恋だから あれが最初で最後の本当の恋だから |
荒井由美 「 魔法の鏡 」 より
カミュがシベリアに行ってから五年が経った。 そろそろ戻ってきてもいいだろうに、なんの音沙汰もないのがいささか面白くないミロなのだ。
寒さがいっそう厳しさを増した二月のある日、海界での不穏な動きが報じられた聖域に緊張の色が走り、黄金のみならず全ての聖闘士に待機命令が出された。
「なんだってこんな日に……」
ミロが溜め息をついているところにやってきたのはデスマスクである。
「よう、どうしてる? あんな命令が出されては、街にも降りられん!」
「俺は別に………街に行きたいとは思わんが…」
ふうん……ミロにしては歯切れが悪いな?
それに、爪をかんだりしてイライラしてるようにみえるが、
商売物の爪を痛めちゃ、スカニーを撃つときに困るんじゃないのか?
「よせよ、爪を噛むのは。 まあ、落ち付け。」
「俺は落ち着いてる!」
「そうか? とてもそうは見えんぜ? ほかに行くところでも?」
ソファにどっかりと腰を下ろしたデスマスクは、ちょうどいい機会だと、鎌をかけてみることにした。
「緊急事態を想定して俺たちに待機命令を出したということは、五老峰の老師やシベリアのカミュにも召還命令が出た可能性があるな。」
「えっっ?! カミュにも??」
そら、顔色が変わったぜ♪
やっぱり思った通りだ、ミロの考えていることは分かりやすいんだよな
こいつ、案の定、カミュに惚れてるんじゃないのか?
とすると…………
「確か今日が誕生日だったんじゃないか? そら、カミュの。 戻ってくるなら、プレゼントを渡すのになんの苦労もいらないぜ、かえってラッキーじゃないか♪」
「そっ、そんなことは俺はなにも……!」
……赤くなるなよ、見ているこっちの方が恥ずかしくなるぜ……
もう少しうまくごまかせないもんかね、そっちのほうの修行はまだまだ足りてないってことだな
「まあ、召還命令が出てるかどうかは俺たちにはわからんし、もう外は暗くなってるからな。 夜中までに渡したいんなら、ちょっとテレポートすりゃいいんだよ。 数分なら大勢に影響はないだろうし、万が一召集命令が出ても、そのくらいの間なら俺がうまいこと言って、ごまかしておくぜ。」
話している間にも、ミロの顔が赤くなったり青くなったりするのがデスマスクにはちょっと面白い。
ずいぶん前から怪しいとは思っていたが、思わぬ待機命令からこんな事実があぶりだされてこようとは思ってもみなかったのだ。
明るいうちに行っておけば悠々と手渡せてゆっくりできたろうに、
夜まで待っていたところが、いかにもそれらしいな……ミロもけっこうやるじゃないか♪
なんと返事をしたものか迷っているらしいミロに近付き、肩に手を回して入れ知恵をしてやるところがいかにもデスマスクらしいのだ。
「なあ、そうしろよ……せっかくの誕生日に雪と氷の世界で小さい弟子と二人で過ごしてるなんてあんまりだぜ。
お前が行ってやれば、きっと喜ぶだろうよ。」
「だめだ……だめだよ、そんなのは…」
「え?」
「俺が行ってもカミュは喜ばない……待機命令を無視したとわかったら、きっと怒るから。」
頬を紅潮させてこぶしを握りしめているさまが、からかい半分だったデスマスクをドキッとさせた。
ミロの奴………ほんとに本気というわけか?
ふうん………こいつは参ったな…………
「それなら……手紙を書くんだな。 少し遅れるが、わけを話せばカミュは怒りゃしないさ。
うん、それがいい♪」
「ああ………そうだな、そうしよう…」
「じゃあな、俺は帰るから。 こんな待機命令が早く解除されるのを祈ろうぜ!」
黙って頷いたミロを残して、デスマスクは重い扉を押し開けた。
天蠍宮の外は満天の星空で、聖域全体を目に見えない張り詰めた空気が覆っているのがひしひしと感じられるのだ。
早く帰ってこいよ……ミロのお守りは、カミュ、お前が一番適任だ
「さて、俺が腕を振るえる日が待ち遠しいぜ!」
そう言うと、デスマスクは長い石段を下り始めた。
昨日、ユーミンのテープを久しぶりに聞きました。
かなりの曲がミロカミュに変換できた中で、
この曲が一番イメージを作りやすかったのでした。
でも、デスマスクが登場したのは
「 なりゆき 」 です、
「 ミロが溜め息をついているところにやってきたのは 」
まで書いてちょっと考え、
「 ええいっ、デスマスクでいいや♪」
( 笑 )。
安易ですけど、結果オーライかと。
初登場のユーミン、やっぱり歌詞がいいんですね、
原曲をご存じない方、ぜひ一度お聞きください。
カミュ様にも、お聞きいただかなくてはね♪