もの思へば 沢のほたるもわが身より あくがれいづる魂(たま)かとぞ見る

                                                    和泉式部 ( いずみしきぶ )
 
               【 歌の大意 】    あなたのことを思っていると 沢の辺りを飛び交う蛍さえ 
                           あなたに焦がれる私の心のように思えてならないのです
    



あれ………?
あの光はなんだろう? お前、わかる?

    ………え?
    あの動きのパターンは生物のようにも思えるが……

もう少し近寄ってみようぜ!

あ……ほら、お前の肩に!

    ミロ、お前の髪にもついている……!
    これは……昆虫だ……きっと蛍に違いない!
    初めて見るが、本当に発光しているのだな………

蛍って? 虫が光るのか? 信じられん!

    発光する生物は意外と多いものだ
    ホタルのほかにも、イカやキノコ、細菌類にも見られる

ふうん……まったく知らなかった!
不思議なものだな……ほら、向こうの方でもたくさん飛んでるぜ

    蛍の幼虫は、きれいな水辺でなくては生息できぬ
    だから この渓流のあたりを飛ぶのだろう

カミュ………蛍って 俺みたいだな……

    え……?

俺の心も いつもお前のそばにいる……決して離れることはない
お前が水で 俺は蛍だ
いつもお前のことを思って 心は明滅している
お前がいなくては俺は生きられない………

    ………それを云うなら私も蛍になろう
    昼の間は見えぬかもしれぬが 夜の闇ではお前を想ってまたたいているのだから………

…………………
あ! 俺の心がお前の髪にとまったぜ♪

    私の心もお前の髪に………

もう少し ここにいよう………ほら 俺の指先にとまった
お前の指に移してやろう………俺の心だ……

    確かに 受け取った………ミロ……
    あ……………

いつまでも離れない………カミュ……愛してる………





                     突然書きたくなった、しっとり篇。
                     久しぶりに和泉式部の登場です。
 
                     ギリシャに蛍がいるかどうかは、わからなかったのですが、
                     あの乾燥した聖域では、おそらく無理でしょう。

                     これは北海道に滞在していた夏の出来事です。
                     夢のような夜の闇、ふわふわと飛び交う蛍が二人をやさしい気持ちに導きました。
                     日本に来て、初めて蛍を見たときの驚きと感動はどうだったでしょうか?