待賢門院堀河(たいけんもんいんほりかわ)    百人一首より




私を慕ってくれるというお前の気持ちは末長く続くのだろうか?
ミロのぬくもりがまだ残る閨(ねや)にいてさえ、私にはまだ確信が持てぬ。
ゆうべ愛されていたときには、確かに信じられたのに、
お前がそばにいない今朝は、
我が身にまつわり千々に乱れるこの黒髪のように、私の心も思い惑わずにはいられぬのだ。

お前の愛を知ってしまった今、冷静といわれた私はもうここにはいない。
三日の間、夜離(よが)れせずに通おう、と囁いてくれた声がまだこの耳に鮮やかに残っているのだから。
私はひそやかに息をつめて、今宵の月の出を待つ。





            百人一首の中でも一、二を争う情緒豊かな歌。

            「長い」 と 「乱れる」 は 「髪」 の縁語で、技巧が凝らされてます。
            「今朝」 というのは、恋の歌では 「逢った翌朝」 を意味します、「後朝(きぬぎぬ)」 ですね。
            「こそ」〜「思へ」 は、係り結び。

             ※「閨(ねや) 」   寝間、寝室、(ふとん、と考えても間違いではない)
 
             ※「三日の間」    結婚を誓った男は三日の間続けて恋人の元へ通わねばなりません。
                          そこで初めて周囲に認められます。
                          雨が降っても槍が降っても、いやさ、教皇から呼び出しがあっても
                          通わなければ愛が疑われ、女(?)の側は恥をかくことに!
                          ここが誠意の見せ所だ!頑張れ、ミロ様っ!
 
              ※「夜離(よが)れ」 夜、恋人がこないこと、転じて、男女の仲が絶えること。

              このときのミロ様の「後朝の歌」は、とりあえず前回の「あひみての」ということに。
              ミロ様、頑張ってはみたものの、技巧でも情緒でもカミュ様の完勝っ!!!
                                               ↑
                                         歌のことです、歌の。

              後朝の歌については、また今度。


    長からむ心も知らず黒髪の 乱れて今朝はものをこそ思へ