この世であなたの愛を手に入れるもの
  踊るライト見つめて忘れない ahh 謎がとけてゆく

                                            「 名探偵コナン 〜謎〜 」   歌 : 小松 未歩


「昨日6月21日は青山剛昌 (1963〜) の誕生日だ。」
「あおやまごうしょう……?」
「漫画家だ。 『 名探偵コナン 』 が代表作で、今も連載が続いている。」
「あ〜〜っ、知ってる! 蝶ネクタイしてる生意気な小学生だろう!」
「生意気って…」
「ふふふ、冗談だよ♪ なかなか面白い漫画じゃないか。」
「薬物の副作用で、自己意識が若年齢化せぬままに肉体だけが若返るという設定が論理を無視していて荒唐無稽だが、確かに面白いと思う。」
「そうだろう、あれはちょっと、そそられるぜ!」
「え?なにが?」
「だって、考えても見ろよ。主人公のコナンは、高校のときに付き合ってた毛利蘭のうちに居候することになって、その蘭は、コナンがかつての恋人とは知らないから、なにかにつけては抱き上げたり、寝顔を見せたり、はては一緒に風呂に入ったことさえあるんだぜ♪ 『 コナンくん、可っ愛い〜♪ 』 なんて云われて頬ずりされてみろよ、参るね、これは!たまらんな♪」
「……そういうものだろうか?」
「そうだよ、なんならやってみるか? そうすればお前にもわかるよ♪」
「……え?」


ミロとカミュは東京・白金台にある私立異邦人学園高校の三年生である。
明朗活発、才気煥発なミロと冷静沈着、頭脳明晰なカミュとのコンビは、二人の容姿が飛びぬけて美しいため、美形の多いここ異邦人学園においても相当に目立ち、その仲の良さもあって誰一人知らぬ者のない好一対 ( こういっつい ) であった。
或る日、遺伝子操作研究に没頭しているムウを訪ねたカミュは、不幸な偶然から研究途上の薬物を口にしてしまい、寮の自室に帰ったその夜に発作を起こして、気がついたときには頭脳はそのままで身体だけが10歳若返るという悲劇に見舞われたのだ。
「あ………私は…」
ようやく起き上がり、鏡に映った自分の姿を見たカミュは愕然とした。
「これが、私だというのか………?!」
もはや記憶にもないような10年前の幼い自分を目の当たりにした衝撃は計り知れないものだった。
科学的にありえない現象に激しく動揺し、その意識は混乱する。
ムウの作った薬物のせいだと見当はついたが、対処法などわかるはずもない。

   ムウのところに駆け込んでも、彼を困らせるだけではないのか?
   責任を取れと求めるようなもので、誰にも責任の取れるはずもない異常な生理現象だ…

なんとか自分だけで解決しようと考察を始めたとき、訪問者を知らせるチャイムが鳴った。
こんな姿で人に会うわけにはいかないと思ったとき、鍵をかけていなかったドアを開けてミロが入ってきた。
「カミュ、いるんだろう? 食事に行かないか?」
そうだ、ミロはいつも遠慮なく部屋に入ってくるし、自分もミロだけにはそれを許していたのだ。
そう思ったときはもう遅かった。
「…あれ?君は………?」
「あ……あの…」
「カミュに似てるな! 君、親戚かなにか?」
ミロに真実を伝えることができなくて、カミュは思わず頷いていた。
「あの………甥です、遊びに来てて…」
「ああ、やっぱり!で、カミュはどこ?」
「ええと………どこかに出かけました、僕…僕は……留守番を頼まれて…」
「ふうん、君みたいな小さい子に留守番させるくらいなんだから、すぐに帰ってくるつもりなんだろう。 俺はミロ、カミュの親友♪ 戻って来るまで待たせてもらおうかな。」
「え…?あの…」
「君、名前は?俺が名乗ったんだから君の名前も聞きたいね。」
「名前はカ………あの、アルベール…です。」
フランスの生んだ偉大な文学者アルベール・カミュの名が脳裏に浮かんだのも、この場合当然だったろう。
「じゃあ、アルベール、これからもよろしく!」
初めて握手したミロの手はとても暖かく感じられたのだ。

そして、当然のことながら一晩中帰ってこなかったカミュを案じ、そしてまた小さい子供を一人にしておけなかったミロは、ついに戻る先のないらしいその子供を引取るために寮を出て部屋を借りることにした。
「カミュが戻るまで俺がお前を責任持って預かるからな、仲良くやろうぜ♪ むろん、教育もちゃんとする。カミュの甥なら育て甲斐があるってものだ。 それにしてもカミュの奴………」
ふっと目をそらしたミロが淋しそうな顔になる。

   ここにいるのに…!
   ミロ、私はここにいる!

その表情にほだされて思わず打ち明けそうになったカミュがその気持ちを無理矢理押さえ込んだとき、ミロがいきなりカミュを抱き上げた。

   あ………!

「いいか、アルベール、誰にも言うなよ……俺はカミュが好きだ、いつかは親友以上のものになりたいと願っている。 しかし、あいつがいなくなってしまった今では、それもかなわぬ望みというものだ。 でもカミュはきっと戻ってくる、そうでなくてはならない。 それまでは、お前があいつのかわりになれ。俺の愛をお前に注いでやるよ。」
「あの……ミロ…」
思わず聞いてしまったミロの告白に真っ赤になったカミュがミロの腕から逃れようとして身をよじる。
「すまない……こんなこと、お前に言ってもわかるはずもないな………」
顔を赤らめて呟いたミロが一つ溜め息をついて、カミュを放してくれた。
「あの、ミロ………元気を出して。きっとカミュだってミロのこと、忘れていないから。戻ってくるから。僕でよければ、ミロのこと、淋しくないように慰めてあげるから。」
はるかに背の高いミロを見上げてカミュがそう言うと、大きな手に頭をくしゃくしゃと撫でられた。
「お前に慰められるとはな……よし! お前だって親から離れて淋しいだろう。 これからは二人暮らしだ、今夜からは一緒に寝ような♪」
「…え?」

カミュの控え目な遠慮など歯牙にもかけぬミロに風呂で身体と髪を洗われ、買ってもらったパジャマを着せられて、真っ赤になったままのカミュがベッドに押し込まれたのは九時を回った頃だった。
「さあ、子供はもう寝る時間だ。俺はもう少し起きている。おやすみ。」
カミュの額にキスをしたミロが出てゆき、小さい灯りを残して部屋が暗くなる。
すぐには眠れなかったカミュがそっと起き出してミロの様子を見に行ったのは十時を過ぎた頃だったろう。

   あ………

隣室でミロが本を開いている。
スタンドの明かりに照らされたきれいな金髪に縁取られた横顔にカミュの目が吸い寄せられる。

   あれは…私の本だ………だいぶ前にミロに貸したハイネだ
   私の書棚を漁っていたミロが、これなら、と云って持っていったのだ

ページをめくることもせずじっとしていたミロが、やがて目のふちに指を持っていった。 幾度も幾度もそれを繰り返したミロは、ついに肩を震わせて声もなく嗚咽する。
ミロの唇が見慣れた名前を音もなく形作るのを、カミュははっきりと認めていた。

かなり遅くなってベッドに入ったミロは眠る子供の頬に涙のあとを見た。
「可哀そうに………お前も親元を離れて淋しいんだな……」
起こさないようにそっと腕を回してやさしく抱きしめてやったミロもすぐに眠りに落ちていった。



「どう?こんなところで♪ そそられてくれた?………あれ?カミュ?」
「私は………お、お前の創る話は、どうしていつも私を困らせるのだ!この間の恋の逃避行といい、こんどの話といい!」
「えっ?!」
「私はこういう話は苦手なのだから………困るから………」
「お、おい……泣くなよ、カミュ………あの…ええと……俺が悪かったから………」
「………」

   おかしいな………どうしてこうなるんだ?

首をかしげながら、ミロはカミュを抱いてやったのだった。





名探偵コナン、大好きです、コミックス全巻あります♪
そのせいか、誕生日ミニミニを書いてたら興が乗りすぎて、
アップの段階で文字数が多すぎてはねられました(笑)。
そこで伝家の宝刀 本編に特進です。

少年なのに中身は大人、というか思春期の高校生、それも17歳の若いお二人。
聖闘士ではない一般の高校生を書こうとは思いもよりませんでした。
おかげさまで、使わないはずのこの壁紙にも出番が!
さあ、カミュ少年が元の身体を取り戻す日は果たして来るのか??

「当たり前だっ、来なくてどうするっっ!!」
「私だって、風呂くらい一人で入りたい!」
「あれ?元の身体になっても、そこのところは譲れないな♪」
「…えっ?!」
「いいから、いいから♪」