お菓子の好きなパリ娘
               二人揃えばいそいそと
               角の菓子屋へボンジュール
               選る間も遅しエクレール
               腰も掛けずにむしゃむしゃと
               食べて口拭くパリ娘

                                           「お菓子と娘」       西條八十 作詞   橋本国彦 作曲



「パリってお菓子屋さんが多いのかな?」
「さあ? 私は行ったことがないから……」
「アフロがそう言ってたよ。 それに、パリのお菓子は世界一だって!」
「世界一のお菓子って、どんなのだろう?」
「………さあ? 俺にもわからない。」
「今度、アフロがエクレールを作るって云ってたから、きっと食べさせてもらえるよ♪」
「ふうん……それってどんなのか、カミュ、知ってる?」
「ううん、知らない。」
「俺も知らない♪」


「なあ、カミュ、そのうちパリに行って本場のエクレールを食べてみないか?」
「え? なにを突然…?」
「そういう歌があるんだよ、日本に。 仲のいい二人が揃って菓子屋に行ってエクレールを買ってその場で食べる。 そして、指についたチョコを舐めるんだよ、ホントだぜ♪」
「あまり行儀がいいとは思えぬが。」
「外国に行ったらそういうのがいいんだよ、旅情ってやつだ。 ローマのスペイン階段でアイスクリームを食べるのと同じように、パリではエクレールを食べるものなんだよ。 日本の縁日で綿飴を買って、歩きながら食べるのとおんなじさ。」
「そういうものなのか?」
「うん、俺が言うんだから間違いない♪」
「どれも甘いものばかりだが。」
「甘いからいいんだよ、俺たちは甘い関係なんだから♪♪」
「……私は知らぬ」
                                        
                                     


                                1920年代に作曲されたこの曲は、今も愛唱される歌曲です。
                                子どものころから好きだったこの曲を取り上げられて、満足満足♪
                                「カミュ様フランスシリーズ」の一翼を担うには格好の題材ですが、
                                あいにく筆者はパリに行ったことがないので、お二人も渡仏はしていません。

                                エクレールとはもちろんエクレアのこと。
                                フォークなんか使わずに手で持って食べるのが一番かと。

                                
「やはり指についてしまった。」
                                「俺が取ってやるよ♪」
                                「え………」
                                「ついでに唇も♪」
                                「あ……」
                                「ふふふ……春の味、パリの味♪」
                                「………」



              「 お菓子と娘 」

                      お菓子の好きな 巴里娘
                      二人そろえば いそいそと
                      角の菓子屋へ 「ボンジュール」

                      選(よ)る間(ま)も遅しエクレール
                      腰もかけずに むしゃむしゃと
                      食べて口拭く 巴里娘

                      残るなかばは 手に持って
                      行くは並木か 公園か
                      空は五月の みずあさぎ

                      人が見ようと 笑おうと
                      小唄まじりで かじり行く
                      ラマルチーヌの 銅像の
                      肩で燕の 宙がえり

                      ※ アルフォンス・ド・ラマルチーヌ (1790−1869)   フランス前期ロマン主義の詩人。