白鳥はかなしからずや空の青 海のあをにも染まずただよふ   

                                        若山牧水    歌集「海の聲(こえ)」より

               【歌の大意】     白鳥よ 哀しくはないか
                           抜けるような空の青 心に染み入る海の蒼  そのはざまで孤高をつらぬく白鳥よ




   ・・・・・・どうすればいい?
   俺がこの手で・・・・カミュの命を奪ったのだ・・・・・・・・

   ・・・・・・この先 どこに行くというのだ?
   シベリアも聖域も 今は遥か彼方に見える・・・・・・

   俺は・・・・・どうすればいい?
   教えてくれ・・・・・・

青い空も 蒼い海も なにも答えてはくれない
白鳥の慟哭が 蒼のはざまに吸い込まれていった





              
酒と漂泊の詩人といわれる若山牧水は、この歌を二十二歳、大学在学中に詠みました。
              「空の青」 「海のあを」という表記の違いが若い詩人の感性を物語ります。
              この二つが同じ青さであるはずはありません。

              サイト開設前から気になっていたこの短歌。
              古典読本第二十作としてひそやかに登場です。