「あのときテレポートして足を治した理由だが、」
「ん…」
「鬱陶しいのと地上の平和と、ほかにもう一つある。 なんだかわかる?」
「もう一つって……あぁ、ミロ…」
「こんなふうにお前を抱きたかったからだ。 たとえば、ほら……こんなふうに…」
「あっ…」
「それからこんなことも。」
「ぁっ……ミロ、そんなっ…」
「せっかくの誕生日なのに病院で独りで寝るのは寂しかった。 お前もそう思ってくれてた?」
「ミロ……あぁ…ミ…ロ…」
「……どう? 足を治してよかったと思うだろ?」
「…ミロ」
「なに?」
「……もっと……もっと…」
俺の言うことをカミュはなにも聞いてはいない。 ただひたすらに俺を求めて身を揉み込むようにしてすがりついてくるばかりなのだ。
「俺のことが好き?」
「好き………好きだから……あぁ、ミロ…」
今ならどんな無理な注文にも応じてくれそうで、俺の頭の中を甘美な夢が駆け巡る。 そのうちの一つを口に出そうとしたときだ。
「ミロ…………生きていてくれてよかった………あのときお前に万が一のことがあったら………私は…」
熱い涙が俺の胸を濡らし、震える指が金の流れを梳いてゆく。
「ミロ………ミロ……」
「死なないから………大丈夫だから……」
「ん…」
生きている喜び。 いとしい者を抱ける幸せ。
互いの暖かさを感じながら俺は少し遅れた誕生日の祝いをたしかに受け取っていた。