温泉占い  原文




「♪草津よいと〜こ〜一度は〜おいで〜ドッコイショ  お湯の中に〜も〜コリャ花が〜咲くよ〜チョイナチョイナ♪」
「いい機嫌だな。」
「なにしろあの有名な草津だからな。あれ?ここで湯揉みが体験できるぜ、やってみよう!」
「え?」
「こいつは面白い!ああやって、熱すぎる湯を冷ますんだな、お前も早く来いよ♪」
「え?裸足になるのか?」
「日本だからいいんだよ、平気平気♪」

「お前も板を持てよ、面白いぜ!」
「なんだか慣れつけなくて…」
「日本人でも、慣れてるのはここの従業員だけじゃないのか?」
「それもそうか。」
「ギッコンバッタンって愉快だな♪」
「ミロ……客の視線が集中している…」
「……え?」
百人ほどいる観光客は、この稀に見る美貌の二人に見とれていて、湯揉みも鑑賞どころではないのだ。
「お兄さ〜ん、きれいだねぇ♪」
「あたしゃ寿命が二十年延びたよ。」
「それじゃ、百を越えちゃうねぇ♪」


「聞いたことのある名前だな?」
「そのはずだ。古典読本・70に『有馬山』がある。」
「あ、なるほど!それで聞き覚えがあるのか。」
「有馬温泉は神戸市北区にあり京の都からもほど近い。」
「あの時はほんとに心配したぜ。」
「世に知られるようになったのは7世紀前半で、舒明天皇、孝徳天皇が行幸したのがきっかけだ。」
「デスマスクがいたのに、お前、気づいてた?」
「舒明天皇は631年の冬には86日間滞在している。よほどに気に入ったのだろう。」
「俺はね、デスマスクだろうが、誰がいようがかまわなかったぜ!大事なのはお前を取り戻すことだからな。」
「その後、衰退していた有馬温泉を再興したのが、聖武天皇の信任篤かった名僧行基だ。」
「お前が俺に気づいて口付けをしてくれたとき、デスはどう思ったんだろうな……」
「有馬温泉は歴史的にも価値が高い。」
「………お前、俺の話、聞いてる?」
「……なんの話だ…?


「♪伊東に行くならハ・ト・ヤ 電話はよい風呂♪」
「えっ?いきなり歌いだしてどうしたんだ?」
「これは伊豆の伊東温泉にあるハトヤというホテルのCMソングだ。電話番号が4126なので『よい風呂』の語呂合わせになっている。公式サイトでも聴くことができる。」
「ふうん……それより俺は……♪」
「あっ…!ミロ!」
「ふふふ……よい風呂もたしかにいいが、4136、よいミロのほうがはるかにいいぜ♪」
「ああ……ミロ……そんな…」
「宵ミロ、酔いミロ、良いミロ、佳いミロ、どれがいい?お前の好みに合わせてやるぜ♪」
「………」
「ふふふふふ♪」


……さあ、ここが例の離れです……しっ、静かに……いましもお二人が………。

「カミュ……こっちに来て……もっと近くに…」
「あっ…」
「ふふふ……今夜はどうして欲しい?何でも言ってみて♪お前の好きなようにしてやるよ…」
「でも…あの……私はそんなこと…」
「だめだぜ、今夜は『でも』は禁句だ……『もっと』って言わないと……」
「あっ、ミロ!そんな……!」
「困るなら『もっと』って言って♪」
「……ああ…」
「それじゃ、こういうのは?」
「あ……いや……そんな………」
「ふふふふ…」

おっと時間切れです、本日はこれまで。
どうぞ、静かにお帰りくださいませ


「ずいぶんと立派な建物だな!風呂屋というのは、なんかの間違いじゃないのか?」
「明治27年に建てられたもので、平成6年には国の重要文化財に指定されている。」
「ふうん、あれっ?料金がいろいろあるぜ?」
「湯上りの休憩に個室を借りることもでき、その場合は一番高い。」
「ふうん、俺たちは当然個室だな!」

「ほぅ、えらく風情があるな!窓から顔を出せば、下をうっかり八兵衛が歩いていそうじゃないか♪」
「では、湯に行ってくるといい、私はここで待っていよう。」
「ああ、残念だが俺だけで体験してこよう。」

「いま帰った。」
「どうだった?」
「歴史があるっていうのはいいぜ、ともかく古めかしくてなんともいえん味わいがある。」
「ぼっちゃん団子と茶のサービスもあるぞ。」
「ふふふ、ますます水戸黄門並みだな♪」
「楽しくてよい♪」
「なんならここで抱いてやろうか♪」
「ばかものっ!」


「湯沢温泉は冬スキーのメッカだ。」
「スキーのあとで温泉に入ってうまい食事をして…♪」
「スキー以外にもイベントが多い。」
「食事の後はふっくらしたフトンだし…♪」
「冬花火というのは、ネットから応募して、当選者にはオリジナル花火、宿泊券2名分1日リフト券二枚がつく。」
「ふふふ、それから…」
「オリジナル花火とは『思い出の曲が流れ、応募者の手紙を司会者が朗読する中、伝えたい想いからイメージした、この世にたった一つだけのオーダーメイドの花火が打ち上げられる』というものだ。」
「そこでお前を抱いてキスして……」
「おそらく恋人向けの企画だろう。」
「朝までずっと雪景色を見ながら可愛がってやるよ♪」
「お前にしては珍しい。興味がないのか?」
「え…?何が?」
「私は知らぬ。」


「変わった名前だな。」
「酸性硫黄泉なので、酸っぱい匂いがするのかもしれぬ。」
「ちょっと寒くないか?」
「ここは海抜900mの高地にあり、紫外線やオゾンの多い清浄な空気が身体によいとされる。昔からよく知られており、自炊しながら長期滞在して湯治する人々でいつも賑わうのだ。そのため昔ながらの特徴を色濃く残しており…」
「あれっ、千人風呂があるぜ!ちょっと行ってくるからな♪」
「あっ、ミロっ!」

「あ、あれはなんだっ!とても信じられん……」
「話を最後まで聞かぬほうが悪いのだ。ここは混浴が昔からの習慣で、午前と午後に女性専用の時間が1時間ずつあるだけなのだぞ。」
「俺は男性専用の時間が欲しい……」
「……え?」
「年配の女性客に穴の開くほど見られた………」
「………」


「ここは近年、各種アンケートで一位を独占している人気の温泉地だ。」
「ほぅ、そいつはいいな♪」
「熊本県阿蘇郡にあり、電車の最寄り駅がないため交通の便が悪い。ゆえに、秘湯のイメージがある。」
「秘湯っっ……!そういうのを探してたんだよ!よしっ、すぐに一番いい宿を予約して思う存分お前を可愛がってやるよ♪」
「しかし、問題は、あまりの人気ゆえに、1年先まで予約で埋まっていることだ。」
「え?!」
「それに、全館木造で離れなどはない。」
「え?!」
「ゆえに隣室に物音が聴こえる可能性があるそうだ。」
「…え……」
「ゆえに私は泊まれない…」
「…カミュ…」
「我を忘れて声を出す可能性は否定できない…」
「そうか……そうだな……」
「すまぬ……」



「日本なのに、なぜカタカナなんだ?」
「昭和41年に『常磐ハワイアンセンター』としてオープンしたが平成2年に『スパリゾートハワイアンズ』に名称変更したのだ。」
「福島県なのに、なぜハワイなんだ?」
「常磐炭田の地下湧水の温泉を利用し、当時の日本人には高嶺の花だった『夢の島ハワイ』をイメージしたという。」
「ふうん…わっ、帆船がある!温泉のはずなのにどうしてプールが?それにみんな水着を着てる!あっ、バナナがなってるのはなぜだ?」
「バナナの木にバナナが実るのは当然だ。オレンジがなっていれば学会報告ものだ。」
「お前ね………ともかくこんな温泉は好かん!帰る!」
「ここなら私も水着を着て一緒に入れると思ったのだが…」
「ますますだめだ!お前が水着を着るなんて俺は認めん!」
「どうして?」
「う……どうしてって……ともかく帰ろう!」
「どうしてもだめか?」
「………」
「わかった…」
「すまん…」


「ここは正月2日、3日の箱根駅伝で有名だ。」
「箱根駅伝って?」
「東京・箱根間約100`の十区間を往復20人で走りぬく大学対抗の最も有名な駅伝だ。」
「疲れないか?」
「むろん疲れるが、この駅伝に出ることは長距離走者の一番の栄誉で『箱根を走る』といえば、箱根駅伝に出た代名詞となっているくらいだ。」
「それなら俺は駅伝の最初から最後まで不眠不休でお前を抱いて最高記録を作ってやるよ。15時間もあればゴールするんだろう?軽いもんだぜ♪」
「いや、往路を走ったら箱根で一泊し、翌朝8時から再開される。」
「え?」
「去年は復路のゴールまでに29時間34分34秒かかっている。36分36秒でなくて残念だったな。身体に無理がかかるのではないか?」
「…いや……や、やってみなきゃわからんっっ!
「しかし、私は断らせてもらう。駅伝は離れのコタツでミカンを食べながら観戦させていただこう。」
「そんなぁ〜……」


「熱海は東京からもほど近く、以前は新婚旅行のメッカだったそうだ。」
「ふうん……新婚旅行ね……お前、なにか感じない?」
「何を?」
「いや、いいけどね…」

「…知ってた?デスが俺たちの日本行きを新婚旅行だって冷やかしたことを?」
「あ……ミロ……ああ…」
「最初は怒ったけど、よく考えてみれば当たってると思わないか?」
「ん………そんな……そんなことは私は…」
「聖域にずっといたら、区切りとかけじめとかはつけようがない。俺たちのためにはよかったと思うぜ……そうだろう?」
「ああ………ミロ…ミロ……もっと………」
「ふふふ……どうやら異存はないらしいな♪ 世間にこんなに長く新婚旅行をやってるケースはないと思うが、俺たちで前例をつくろうじゃないか、いいだろう?」
「あ……そんな……いや…」
「え?いやなの?」
「あの…そうではなくて…」
「冗談だよ、大好きだ、カミュ♪」