◆ 星矢が離れを訪ねたら 
 
二人が離れでくつろいでいると、玄関の外で誰かの声がした。 
「美穂ちゃん、ここがそうなのか?」 
「だめよ、星矢ちゃん、勝手に開けちゃ!お客様に失礼なんだから!」 
「気にするなよ、それに気取ってる場合じゃないんだぜ、沙織さんの一大事だ!!」 
耳をそばだてたカミュが話の内容を把握する前に、ガラッと玄関を開けた星矢の声が響き渡った。 
「ミロ、カミュ!あんたたち、 こんなところでのんびりしてる場合じゃないぜ!すぐに聖域に戻ってくれ!」 
「いったいなにごとだ?!」 
怪訝そうなミロが眉を上げた。 
「どうやら茶を飲んでいる場合ではなさそうだ。」 
青磁の湯呑みを置いてコタツから立ち上がったカミュが手早く身支度を整えていると、早くも星矢が顔を出す。 
「ああ、ここにいた! すぐに来てくれ、大変なことが起こったんだ!」 
「やれやれ、黄金に対する礼儀作法集っていうのを作ったほうがいいんじゃないのか?」 
ちょっと不機嫌そうなミロもやむなく立ち上がる。 
「いったいなんだっていうんだ?聖域にも人はいるだろうが。」 
「しかたあるまい、私たちにお呼びがかかるということは、黄金全員に召集がかかったと見て間違いない。」 
「ほら、二人とも急いでくれないか!」 
「わかっている!」 
よほど気が急いているらしい星矢が催促するのが、ミロにはいささか気に入らないのだ。 
次の間の襖の向こうでハラハラしている美穂に、 
「すまぬが、ちょっと留守にする。 主人によろしく伝えてもらいたい。」 
そう声をかけたカミュがミロを促すと、その姿は一瞬で消えた。 
「じゃあな、美穂ちゃん! 辰巳さんによろしく!」 
「え…? 辰巳さん、って……ここの支配人の? ちょっと、星矢ちゃんっ!」 
しかし、美穂の言葉の終わらぬうちに星矢の姿も消えている。 
「大丈夫かしら……?」 
溜め息をついた美穂が座卓の上を片付け始めた。




                 
星矢は、やっぱりこれでしょう!
                 黙ってお茶を飲んでいるはずがありません、ともかく落ち着かない。
                 コナン君の周りで殺人事件が起こるのが当たり前であるように、
                 星矢が来ると必ず何か騒ぎが起こる気がします。
                 しかし、聖域で何が起こったのかしらん?

                 ところでこの星矢、
                 古谷さんの声で聞こえるのは私だけ??