「 バーナード・ショーの誕生日 」


「今日7月26日はジョージ・バーナード・ショー (1856〜1950 ) の誕生日だ。」
「ええと、バーナード・ショーって聞いたことあるな。」
「ショーはシェイクスピア以来最大のイギリスの劇作家といわれており、イギリス近代演劇の確立者として有名だ。」
「ふうん!シェークスピア以来とはすごいじゃないか!!」
「『人と超人 』 『 ピグマリオン 』 など社会評論の精神に貫かれた演劇作品や戯曲などを多く書き、時代を代表する世界的な作家・戯曲家となったのだ。 1925年にはノーベル文学賞を受賞している。」
「前から思ってたんだけど、その戯曲ってなに?」
「戯曲とは、劇の上演のために書かれた脚本。また、その形式で書かれた文学作品のことで、台詞に人物の動作や舞台効果など、演出に関する注意を加えたものだ。シェークスピアは多くの作品を残しているが、それらは演劇の上演のために書かれたものであって、いわゆる小説の形式をとってはいない。ゆえに様々な解釈・舞台装置が可能で、古来より演出家の腕の見せ所となっている。」
「ふうん!初めて知ったぜ!」
「ちなみにショーの作品の 『 ピグマリオン 』 は映画 『 マイフェアレディ 』 の原作だ。」
「ええっ!!あの映画は面白いな♪ オードリー・ヘップバーン演ずるイライザが下町の花売り娘から貴婦人に変貌していくのは実に見事だ、歌もいいし、衣装もいい!それに、シャーロック・ホームズの名優として知られるジェレミー・ブレットがイライザに恋をする青年貴族役で出ているのも面白い!」
「ほう! ずいぶんと気合いが入っているな。」
「ああ、好きな話だ。例えばお前がさ♪」
「え?」
「下町の花売り娘だったとする。」
「え!」
「で、俺がお前のあまりに下賎な言葉遣いに呆れ果て、その娘を一流の貴婦人に仕立て上げようとする。」
「ええっ! 私が…この私が、下賎な言葉遣いをっっ!」
「そんなに柳眉を逆立てないで、まあ聞けよ。お前がヒギンズ教授役の方がそれ自体は向いてはいるが、この俺がイライザ役はちょっと無理だろう。 だから、お前には不本意だろうがイライザ役をやってもらう。俺はお前を家に住まわせて朝から晩まで発音と礼儀作法の練習だ。 で、ついに国王陛下主催の舞踏会にデビューさせ、その後二人は結ばれる。 どうだ、いいだろう!素晴らしいドレスを着せてやるぜ♪もちろん、着替えさせるのは俺♪♪」
「………」
「なに?不満でもある??」
「………陳腐だ。」
「……え?」
「それでは原作と何も変わらない。私なら違うアプローチで解釈するが。それが出来るのが戯曲の面白味ではないのか?」
「それもそうだな、じゃあ、聞こうじゃないか♪」 (ニヤニヤする)
「まず、指導する立場は私が受け持つ。」
「え〜、そうなの?…すると俺が花売り娘か……?」 (最後はつぶやくように)
「そうではない。黙って聞くように。」 (ぴしりと言う)
「はい…」 (恥ずかしそうに)
「まず舞台はロンドンではなくギリシャだ。」
「えっ!」 (睨まれて口を閉ざす)
「黄金聖闘士になったばかりのまだ幼い私がアテネの街に行った折、下町の射的場で遊んでいる金髪の美しい少年を見かけた。 その少年は一見したところ模擬の銃を撃って的に命中させているように見えたが、この私の目はごまかせない。 その少年は、実は指先から衝撃波を発して、一つの狂いもなく的に当てて、その場にいる者の賞賛を浴びていたのだ。」
「…は?」 (また睨まれる)
「独り野に在って曲がりなりにも小宇宙を半ば習得していることに驚きを覚えた私だが、このままでは世をたばかる不正な道に入ってゆきかねないことを懸念し、その少年を聖域に連れ帰って適正かつ真摯な訓練を施すことにした。 むろん、親を探し出し、承諾書に署名捺印してもらったのは言うまでもない。」
「お前って、よっぽど弟子をとるのが好き………いや、なんでもない。」 (さらに睨まれて、あわてて手を振って打ち消す)
「その少年はたいそう利発で潜在能力もひときわ優れていたので、それを正しく見抜いた私の優れた指導によりたちまち頭角をあらわし、2年ほどで黄金聖闘士の名にふさわしいだけの実力を身につけることが出来た。」
「そうだろう、そうだろう♪」 (盛んにうなずくが、すぐに睨まれて真面目な顔になる)
「そして、私はその少年に黄金聖衣を与えるべく教皇に申請を行い、ついに闘技場で認定試験を行う日が来た。」
「え? 黄金聖衣って、そんなふうにして与えられるものじゃないんだが?」
「創作なのでかまわぬ。 これは原作マイフェアレディーでの、国王臨席の舞踏会に相当するものだ。」
「あ……そう…」
「そして教皇の御前でその少年は動じることなく極めて優れた実力を発揮し、感動した教皇は私が新たな弟子を見事に育て上げたことを賞賛したのち、その少年を黄金聖闘士として認めるのだ。」
「ふっふっふっ、気に入ったぜ! 実にいい話じゃないか! うん、たしかにお前の話の方が斬新で見どころも多い。 特に俺のことを褒め上げている点がいい気分だね♪ で、そのあとで俺たちは結ばれるってわけだ。師弟の一線を越えて道ならぬ恋っていうのもいいね♪ 俺もその役をかねてからやってみたかったんだ。 他人にばかり任せてはおけん! 情緒たっぷり、懇切丁寧に我が師を…♪で、お前の方も、はからずも愛弟子に身を許してしまう我が身の定めのはかなさを嘆きつつためらいつつも恋の淵に身を投げて…♪ああっ、たまらんっ!!」 (夢想に耽り始める)
「ちょっと待てっ! 誰も、この少年がお前だとは言っていない。」 (さすがに慌てる)
「……え?」 (茫然とする。耳を疑うような感じ)
「私が自信をもって指導できるのは凍気の聖闘士だ。 この役はやはり氷河が向いているかも知れぬ。」
「そ、そんなぁ〜〜」 (肩を落とす)
「いいから、いいから♪」 (莞爾として微笑む)