「 サルヴァドール・ダリの誕生日 」


「今日5月11日はサルヴァドール・ダリの誕生日だ。」
「ああ、知ってる。 スペインの画家だろう? ダリを取り上げるんだったら、俺としては同じスペインのジョアン・ミロをやりたかったね!」
「しかたあるまい、ミロの誕生日は4月20日だ。 この企画はまだ始まってはいない。」
「まあ、しかたがない。 ダリの絵って、時計がグニャリと曲ってるようなやつだろう? どうも意味がわからんが。 時空間が捻じ曲がってるような気がする。」
「シュールレアリスム、超現実主義ということだ。 理性の支配をしりぞけ、夢や幻想など非合理な潜在意識の世界を表現することによって人間の全的解放を目指す二十世紀の芸術運動だ。」
「理性の支配をしりぞけて非合理なものを表現する? お前には納得できんだろう?」
「うむ、正直なところ好みではない。 時計は正しい時刻を指していなければならぬ。」
「ちょっと面白いと思うが、あの絵が居間や寝室にかかっていたとしたら落ち着けないだろうな。」
「あれが寝室に?………私はいやだ…」
「ふふふ、じゃ、どんな絵がいいの?」
「どんなって……水彩の風景画とか静物とか…」
「ふうん……宗教画とか人物画は?」
「それは好きではない。」
「そうだろうな、宗教画を眺めてお前に敬虔な気分になられちゃ俺としても困るし、人物画なんてたいてい正面を見てるポーズが描かれてるから、今度は見つめられる気分になったお前が恥じらって困り果てるんだからな。 いや、待てよ?むしろその方が望ましいかも♪」
「………ば、ばかものっ!」
「え? おい、待てよ!カミュ、カミュ〜〜っ!!」