「 ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウスの誕生日 」



「今日はヨハン・カール・フリードリヒ・ガウスの誕生日だ。」
「ん? それ、誰?」
「1777年生まれのドイツの数学者で、近代数学のほとんどの分野に影響を与えたといわれる歴史上最高の数学者の一人だ。多くの定理・法則・単位は彼の名にちなんでいる。」
「ふうん、すごいんだな! 俺は数学は得手ではないが、優れた先人の業績には敬意を表するぜ。」
「幼いころから才能を発揮し、19歳の時には、それまで定規とコンパスのみで作画できる正(素数)角形は正三角形と正五角形のみだと考えられていたのに、正17角形も作画できることを証明し、当時の数学界に大きな衝撃を与えた。作画できる正(素数)多角形の数が増えたのは約2000年ぶりのことだ。」
「2000年…!するとギリシャ以来の大発見か!」
「そういうことだ。 実に素晴らしい!」
「お前もなにかの研究分野に進んでいれば、きっとすごかったと思うぜ。」
「…え?そうだろうか?」
「ああ、たまたま聖闘士になる宿命を持って生まれたから聖域に来たが、そうでなければ化学とか数学の分野に進んでいるんじゃないのか? そう思うと惜しい気もするな。 世界の発展に寄与できたかも知れないぜ!」
「でも、そうしたら……ミロとは逢えぬ。」
「あ…」
「私は聖闘士になったことや、その宿命を持って生まれたことをいやだと思ったことはない。 そして、お前と出逢ったことをなによりも嬉しいと思っている。」
「カミュ……」
「人は、その人生において、やりたいことの全てをできるというものではない。数学も科学も素晴らしい世界だが、聖闘士としてこの地上を守ることも素晴らしいことだ。その機会を与えてくれた運命に、アテナに、聖域に、私は感謝を捧げずにはいられない。 そして、私に愛を教えてくれたお前にも…」
「ん……」
「ありがとう、ミロ…」
「ん…」
カミュからもらった口付けは静かでやさしくて、俺の胸を十二分に震わせた。