「 細川たかし の誕生日 」


「今日6月15日は細川たかし ( 昭和25年〜) の誕生日だ。」
「♪ 北の〜〜酒場通りには〜〜長い〜〜髪の女が似合う〜〜〜♪」
「なっ、なんだ、いきなり!!」
「北酒場だよ、俺のカラオケ十八番♪ 知ってるだろう?」
「むろんわかっている。突然 歌いだしたから驚いただけだ。」
「このノリがいいんだよ、それに長い髪ってところでお前を連想できるし♪」
「…え?そうなのか?」
「この歌の大ヒットの翌年があの 『 矢切の渡し 』 だぜ! このギャップがたまらんな!
ああっ、俺もお前を連れて逃げたいっっ♪♪」
「逃げるって………なぜ?どこに?」
「だから、話だよ、話! 矢切の渡しは駆け落ちの話だからな♪ お前、俺に連れられて逃げたくないの??」
「え…」
「恋の逃避行! ああ、いい響きだ、たまらんな♪」
「はっきり言っておくが、私はいまだかつて、逃げる、などという行為をしたことがない!」
「わかってるよ、そんなこと。でも、俺はお前と恋の逃避行ってのをしてみたいんだよ。」
「馬鹿なことを…!」
「で、俺は創作をしてみた。」
「………え?」

聖域では聖闘士同士の恋愛はご法度である。ましてや同性同士のそれに弁護の余地はまったくない。
互いの胸に愛が芽生えてそれが実を結んだときから、二人の苦難の道が始まったのだ。
愛し愛され、抱いて抱かれて、日毎夜毎に求め合う心がいや増すにつれて周囲にもそれが知れるのは当然だ。
「アテナの聖闘士にあるまじき行為だ!」
「黄金の風上にも置けんっ!」
サガの視線が突き刺さり、シャカの冷笑が、ムウの蔑視が、そしてアイオリアの黙殺が二人の真摯な愛を脅かす。
そんななかで数少ない理解者はデスマスクだった。
「俺は気にしないぜ! 好き同士ならいいじゃないか、聖闘士としての務めをきちんと果してりゃいいんだよ。あとの時間をどう使おうと個人の自由だ。同性が認められないからといって、俺たちの立場で外部の女と結婚できるわけじゃなし。いつか死ぬ命なら、人と生まれて愛し合わないで終わるなんてもったいないからな。」

しかし、二人を取り巻く状況は悪化するばかりだ。
とくにカミュは自分の立場を気に病み、宝瓶宮から外に出るのを恐れるようになってきた。
「大丈夫だから………俺が付いてるから…」
「しかし………私は…もう耐えられぬ………ミロ…どうすればよい?」
恥じ恐れるカミュをいくら抱いても、ミロの愛がカミュに苦悩を忘れさせるのはほんの一時にしか過ぎないのだ。
「ここを出よう!」
ミロは決断した。
「互いを忘れることができぬなら、もう聖闘士ではいられない。ここでお前が苦痛に喘ぐのを黙ってみていることはもう俺にはできないのだ。この世を作っているのはアテナや聖闘士だけではない。市井の一民間人となっても地上の平和のために尽くすことはできる筈だ。俺と一緒に来てくれるか?」
「ミロ………」
思いもしなかった提案にカミュが蒼ざめるのも無理はない。これまで信じ貫いてきた道を自ら捨てるという決断を迫られているのだったから。
「それとも俺のことを忘れて、俺からも忘れられて………それでも聖闘士として生きるか?」
そのとき、カミュの心は決まったのだ。
「ミロとともに生きる。」
静かな瞳がまっすぐにミロを見た。
恋の逃避行の始まりを告げるキスがやさしく交わされていった。


「どう?なかなかの出来だろう?」
「………ばっ、ばかものっっ!!!」
「えっ?」
「こ、こんな………こんな話は嫌だっ!いったい誰が読みたがるのだ!冗談ではないっ!」
「おい、本気にとるなよ、これは俺が勝手に作ってみた二次創作で…」
「ミロ………私はほんとに……ミロ………」
「あの…カミュ………」
「私は……恋の逃避行などしたくはないから………ミロ……」
「すまない………お前を傷つけた……カミュ…」
「………」
「大丈夫だよ、みんなわかってる………俺たちのことはわかってくれてるさ…ここはギリシャだぜ、安心して、カミュ………」
「ん………」
「デスだけじゃない。 みんな俺たちの味方だから………大丈夫だから……」
「ん…」
「愛してる………こんなにこんなに愛してる……」