「 サン・テグジュペリ 」 の誕生日
「昨日6月29日はサン・テグジュペリ ( 1900〜1944 ) の誕生日だ。」
「ああ!『 星の王子さま 』 の作者だ、知ってるぜ!」
「テグジュペリは、第二次大戦中に偵察飛行のため単座双発双胴のロッキード F-5B ライトニングで飛び立ち、そのまま消息不明となった。この悲劇的な最期は多くの人の悲しみを誘い、その作品を想起させたため、星になったのだろうというような印象を与えたといわれている。」
「星の王子さまの作者がそんな死を迎えたというのが不思議だな。 あれって、砂漠に不時着した飛行士が小さい王子さまと出会う話だろう?」
「うむ、彼の搭乗機はながらく発見されなかったが、2003年にマルセイユ沖の海底からその残骸が引き上げられ、大きな話題となった。」
「ふうん………消息を絶ってから60年か……星の王子さまってさぁ……最後はあの砂漠で毒ヘビにかまれて………やっぱり……死んだのかな?」
「自分の星に帰ったのだ、本来いるべき場所に。ただ、身体は重すぎて持っていけなかったという。 あの話は多くの寓意を含んでいる。 形は子供向けの童話のようだが、大人の心に訴えるものが多い。」
「サン・テグジュペリ本人が描いた挿絵がまたいいじゃないか!素朴で味があって俺は好きだな♪」
「ミロ……私は思うのだが、星の王子さまは金髪の小さな男の子で、飛行士の前に突然現れた。 ……なにか思わないか?」
「………え?」
「大人の飛行士と偶然に出会って八日間一緒にいて、そして去っていった。飛行士はそのことをよく覚えていて、あとがきの部分で、男の子がいなくなった場所にまた戻ってきたのを見つけた人はお願いだからすぐに手紙で知らせて欲しいと言っている。 飛行士はとても男の子が好きだったのだ。」
「金髪で小さい男の子でやがていなくなって………カミュ……俺、『 願い事ひとつだけ 』 でお前に甘えていいか?」
「……え? あの…それはいいが、最後に私を悲しませるのはやめて欲しい……」
「大丈夫だよ、毒ヘビなんか部屋に持ち込まないから。 そんな手段で元に戻ろうとは思わない。 」
「ん……それから、寮の部屋で蠍を飼っていても困る……」
「それも大丈夫。 俺はそんな危険なものは飼ってはいなかった。」
「ムウにこれ以上変な薬を飲まされないようにして欲しい…」
「うん、それも十分に気をつける!」
「砂漠には行くな。」
「日本からは離れない。約束する。」
「ミロ………私は……おかしいことを言っているか…?」
「そんなことはないさ………俺たちのいるこの世界だって寓意に満ちている。サン・テグジュペリの誕生日と 『 願い事ひとつだけ 』 が始まった時期が重なったのが偶然かどうかは、誰にもわからないことだ。」
「小さいお前は……可愛いかな……?」
「ああ、きっと可愛いさ!この俺が保証する♪」
「ん………」
「飛行士が王子さまを抱きしめたように、お前も俺を抱いてくれていいからさ。」
「ん……」
「おかしいな、俺たち……これから第三章で初めて会うんだぜ。 会う前から別れを心配してる。」
「ん…」
「……もしかして、お前、泣いてる?」
「そんな…………そんなことはないが……」
「大丈夫だよ、小さい俺と別れるってことは大きい俺と会えるってことだろう? 安心していいんだよ。」
「ん……そうだな…」
「大好きだ、カミュ………飛行士が王子さまを好きだったように、王子さまが飛行士を好きだったように……いや、それ以上に俺たちは好きあっているだろう?」
「ん……」
「だから大丈夫!幸せは繰り返し俺たちを訪れる。 それに小さいミロは……ほら、ここに……お前のすぐそばにいるだろう?悲しむことはないんだよ。」
「……そうだな……ミロ……」
「小さいお前も可愛かったぜ、また会いたいね♪」
「小さい私も……ほら、ここに。」
「そうだったな……じゃあ、これから図書館でも行く?」
「それもよい。」
「星の王子さまを借りて、読み直そうぜ。フランス語版を朗読してくれたら嬉しいな。」
「意味がわからないのに?」
「挿絵を見て楽しむからいいんだよ。」
「では、そういうことで。」
「ふふふ、楽しみだ♪」