「今日3月13日は、地奇星フログのゼーロスの誕生日だそうだ。」
「なにっ?! お、お前、なにを言っているっ?!」
「だから、今日は地奇星フログのゼーロスの誕生日だ、と言ったのだ。」
「俺の前で、わざわざ繰り返すなっ!! なっ…なんでよりによって、お前が彼奴の誕生日のことを言わねばならんのだっ!お前の神聖な唇が穢れるっ!!」
「別に、よったわけではない。 たまたまあちこちのサイトを見ていたら、目に付いたまでのことだ。」
「毎日ネットをしていて、どうして今日だけ誕生日のことなんかに気付くっ??どうしても思い出したかったら、ラダマンティスやアイアコスのことを思い出したほうが数万倍もましだろうがっっ!!」
「ラダマンティスは知っているが、彼の誕生日は10月30日で、今日にはまったく関係ない。 しいて言えばお前と同じさそり座だが。」
「ラダの奴を、彼、なんて洒落た指示代名詞で呼ぶことはない! いいか、俺はあいつと同じ星座になりたくなんかない! さそり座は俺一人でたくさんだっ!あんな冷徹な奴には乙女座あたりがお似合いだっっ!」
「………以前から感じていたのだが、冥闘士のこととなると妙に興奮するのはなにか理由があるのか?」
「……え? 理由って………そ、それはだなぁ……ええと、奴らはアテナのお命を亡きものにせんとお前たちにかりそめの命を与えて十二宮にいる俺たちと闘わせたんだからな。 こんな天に唾する悪逆非道の行いを許せるわけがなかろう!」
「それなら、いかに冥界三巨頭の一人とはいえワイバーンのラダマンティスに怒るよりもハーデスその人に怒りの矛先を向けるべきではないのか? ましてや、手先の一人に過ぎないフログのゼーロスに対してそこまで憤るのは論理的ではない。」
「あんな奴らの名前を正式に呼ぶ必要はない!俺には俺の論理があるんだよ、お前は知らなくてもいいことだ。」
「ミロ………」
「………え?」
「なにか私に隠していることはないか?」
「え………あの…そんなことは…」
「ミロ……私たちの間に秘密があっても良いのか?」
「………」
「私とお前は聖域とシベリアとに遠く引き裂かれていても、それでも心は繋がっていたと信じている。 それとも………以心伝心、一心同体だと思っていたのは……私だけだったのか?」
「いや、そんなことはない。 俺はいつでも、どんな時だってお前と心を一つにしてきた。」
「それなら………」
「あ………カミュ…」
「今日こそ教えてくれないだろうか…… お前が冥闘士に対して最大級の怒りを向けるわけを………ミロ……」
「カミュ………俺のカミュ………」
「傷つかないから……私はけっして…………いつでもどんなときでもお前が守ってくれることを知っているから……………大丈夫だから…………ミロ………」
「ほんとに………大丈夫?」
「信じて欲しい………この私が嘘を言ったことがあるか?」
ミロは考えた。

   ムウは嘘をついたことがあるはずだ
   シャカも嘘も方便とかうそぶいて、とんでもないことを平気でやる奴だ
   大きな声では言えないが、サガが教皇を詐称したのも嘘の部類と言えるだろう
   アフロも教皇が悪であることを知りながら、その存在を善しとした
   老師も老獪の域にとっくに達しているのは明白だ
   デスに至っては………いや、あいつのことを言うのはやめよう
   しかし、カミュは………

ミロの知る限り、アクエリアスのカミュは聖域十二宮でもっとも純真無垢にして清廉潔白、白亜の宝瓶宮で純粋培養された天使の如き愛らしさと神聖不可侵にして究極の美を誇る至高の黄金聖闘士なのだった。
「よかろう、それでは俺の知る限りのことを教えよう……でもその前に……」
「あ………」

こうしてひとしきりカミュを愛したのちに、ミロは冥界での一部始終を語ったのである。
「なにぃっっ!!」
「……え?」
「すると、ラダマンティスはお前を………私の大事なミロを生きながら死界へ叩き落したというのかっ?! そして、ゼーロスめは氷河の目の前で私を何度も足蹴にしただとっっ!!! ああっ、可哀そうに、氷河! 師である私のそんな姿を目の当たりにしてどれほど傷つき悔しかったであろう!」
「あの、カミュ……」
「許せぬっ! ラダマンティスもゼーロスの奴めも、この私自らが出向いて成敗してくれる! ミロも来て、その目で積年の恨みが晴らされるのをとくと見るがよかろう!」

   これのどこが、クールで冷静な聖闘士なんだ??
   どう見ても、俺より血の気が多いんじゃないのか?
   世間の評価は間違ってるぜ………

「まあ、待てよ。」
「止めてくれるな、ミロ!」
「いいや、止めさせてもらう。 ラダマンティスはカノンの捨て身の攻撃により命を落としたし、ゼーロスの奴に至ってはその場で氷河の怒りのオーロラエクスキューションにより息絶えたのだ。 このうえ、いったいどこに恨みを晴らしに行くというのだ?」
「え…」
「アテナもそんなことはお望みにはならぬ。 お前の恨みはとっくの昔に……」
「あ…」
「晴らされているんだよ………」
「ミ………ロ……」

   なぜか復活したラダマンティスがカノンのところにいるという話を耳にしたことがあるが
   そんなことをカミュに告げる必要もあるまい
   再びの千日戦争なんて、ごめんだぜ

「だから、もうそんなことは忘れて俺を愛してくれる?」
「でも……あの…」
「そして、俺に愛させて欲しい………いいだろう?」
「ん………お前がそう言うのなら…」
「よかった! じゃぁ、さっそく♪」
「あっ…」
こうして聖域の平和は保たれたのだった。 めでたしめでたし。




                      
いえ、だからほんとにそれだけのお話で。
                      春ですし、たまにはこんなのもよろしいかと。
                      もっとも、壁紙がそれを裏切っています、これは四神の玄武です。