温泉卵

「これって、なんて名前だったかな?」
「それは温泉卵だ。 鶏卵の白身と黄身では凝固する温度が異なるという性質を利用して作られている。 卵を加熱していくと卵白は58℃で固まりはじめ、完全に凝固するのは 80℃以上に加熱した時であり、一方、卵黄は64〜70℃で熱凝固する。 そこで70℃くらいの温度で加熱すると、卵白は固まらず卵黄だけが固まり、温泉卵ができるということになる。 美穂に聞いてみたのだが、温泉卵を作るには、70〜75℃くらいのお湯に20分ほど卵を入れておくということだ。」
「ふうん、面白いもんだな! このとろっとした感触がなんともいえん。 ゆで卵とは違って、いかにも日本的だと思うぜ♪」
そう言ったミロが、温泉卵にちょっと醤油をたらす。
「そこで、温泉街では天然温泉が湧出する場所に籠に入れた卵を漬けておき、温泉卵を作っていたりもするのだ。」
「あ! そういえば見たことがあるな! 70度くらいで湧いてるところを見つければ、自動的にできるってわけだ。」

   70度の温泉じゃ人間にはとても入れんが、卵には適温か。
   カミュの場合は、41度で固さと柔らかさがちょうどよくなるんだぜ、
   今夜も実践させてもらおうじゃないか♪

「なにを笑っている?」
「なんでもない♪」
志野焼きの厚手の小鉢を取り上げたミロは、温泉卵をつるっと飲み込んだ。



朝の光が差し染めるころ、無意識にカミュの身体に手を回したミロは、おや?と思ったものだ。
珍しいことに、向こう向きのカミュが手足を縮めて身体を丸くしているようなのだ。 そっと手探りしてみたその姿勢がまるで卵のようで、ミロを微笑ませた。
「ミロ………?」
気配に目覚め、振り向こうとしたカミュのうなじに与えられた口付けは、どこまでもやさしく甘い。
「お前、まるで卵みたいだぜ、殻を剥いてもいい♪?」
カミュの抗議を聞くより早く、ミロの手が浴衣の襟にかかる。
「俺が一晩中適温に暖めておいたから、固さも柔らかさもちょうどいいと思うんだが。 ちょっと味見させてもらおうか♪」
「あ………」

 
( ※ 温泉卵の味わいは食べた者でなくては表現できないので、この項はこれで終り♪ )





                             もしかして、これって黄表紙だったりして???
                             そんなつもりはなかったのですが 、
                             ミロ様が、どうしても、と言い張って ( ←責任転嫁 )。

                             温泉卵、シンプルだけどなかなかいいものです。
                             白と黄橙色の色彩がきれいだし、つるっ、とろっとした舌触りがまたなんとも!
                             でもこれで、今後皆様が温泉卵を召し上がるときは、
                             いつもカミュ様のことを思い浮かべて赤面してしまうという現象が!
                             これは一大事っ!
                             ミロ様、どうやって責任取るんです??(←さらに責任転嫁・笑 )

                             さすがに卵の壁紙は見当らなかったので、この壁紙を。
                             でも、名前は 「 shell 」 つまり貝殻だから、
                             やっぱり関係あるのが、おかしいです。