雛道具

「カミュ、これがなんだか知ってるか?」
「いや、わからぬ。」
「これは、雪洞 (ぼんぼり ) といって室内を照らす灯りなのだ。」
「ほぅ! 実に日本的なデザインだ。」
「うむ、実に色っぽい♪」
「え?」
「このぼんぼりにほんのり照らされたお前の肌が……」
「ばかものっ!」

「カミュ、これがなんだか知ってるか?」
「いや、わからぬ。」
「これは、ひなあられといって3月3日のひなまつりに供される菓子
 なのだ。」
「ほぅ! 実に可愛い意匠だ。 あられといえば、水蒸気が氷の粒に
 なって降ってくるもので、雪と雹 ( ひょう ) の中間の状態のものを
 いうが、それを模していると思われる。」
「うむ、 実に色っぽい♪」
「え?」
「ぼんぼりにほんのりと照らされた、お前のあられもない姿が……」
「ばかものっ!」

「カミュ、これがなんだか知ってるか?」
「いや、わからぬ。」
「これは、三方というものの上に桃花酒 ( とうかしゅ ) を供えてあるのだ。
 桃花酒とは酒に桃の花びらをつけたもので、中国の風習だそうだ。」
「ほぅ! 実に優雅なものだ。」
「うむ、実に色っぽい♪」
「え?」
「この桃花酒に酔ったお前の肌をぼんぼりがほんのりと照らして、やがて
 あられもなく……」
「ばかものっ!」

「カミュ、これがなんだか知ってるか?」
「いや、わからぬ。」
「これは、ひし餅といって、やはりひなまつりに供えるものだ。」
「ほぅ! 実に幾何学的な美しい形だ!」
「うむ、実に色っぽい♪」
「え?」
「桃花酒に酔ったお前のつきたての餅のような肌をぼんぼりがほんのりと
 照らして、やがてあられもなく……」
「ばかものっ!」


                        
                              突然、1時間足らずで作った小話的見聞録です。 
                              あまりに可愛い素材が出たので、なんとかしたくなったのでした。

                              ミロ様、それじゃ女の子のお祭りとは、とうていいえません…………,
                              ミロ祭りか、カミュ祭りでは?

                              この感覚でいくと、屏風も毛氈もみんな妖しい気配を帯びてゆくではありませんか(笑)。
                              こんなに美しい素材を、こんなふうにアレンジしてしまって、困ったなぁ…、
                              そうだっ、全部ミロ様のせいにしてしまおうっ、知〜らないっと♪
                              ミロ様なら、怒るなんて無粋なことなさらないもんね♪

                              
「私は迷惑している。」
                               
                              はい……………。