アゲハ

それを見つけたのは今朝早くのことだ。
「ミロ、庭に出てこないか、見せたいものがある。」
そう言って呼ぶと、まだ寝床にいたミロが、ちょっと着崩れた浴衣を直してから庭下駄を履いてやってきた。
「ん? どうした? やけに早起きだな。」
室内なら私をつかまえてキスしたのだろうが、庭先なのでむろんそんな様子は微塵もみられない。
「朝の空気はすがすがしく、精神が引き締まってよいものだ。 早起きは三文の得というが、おかげでよいものを見つけた。」
「三文って………格言としては、俺たちには3ドラクマの方が実際的だと思うぜ」
そう答えたミロは、私が指差した幼虫を見てぎょっとする。

   やはりな……

「な、なんだっ、これは! 目が大きいぜ!! これも蝶の幼虫なのか?」
「これはアゲハチョウの終齢幼虫だ。 目のように見えるのは単なる模様に過ぎぬ。 目のように見せかけて鳥などを驚かし、捕食をまぬがれているのだといわれている。」
「模様っっ??……あ、ホントだ…ちょっとびっくりしたぜ。 なんだ、そうか、ふう〜ん、ちょっと可愛いじゃないか。」
「であろう。」
顔を寄せたミロは、しげしげと幼虫を観察してくれている。
ミロが理解してくれたのが嬉しくて、私はアゲハの幼虫の可愛いところをもう少し見せたくなった。
「ほら。」
鮮やかな緑の身体を指でつついてみせたのだ。
そのとたん頭部から鮮黄色のツノがニュッと出て、特殊な匂いが漂い、幼虫は身を固くした。
「このツノ状のものは臭角といい、やはり外敵から身を守るための工夫だ。 我々聖闘士には同じ技は通用しないが、果たして昆虫レベルではいかがなものか?」
返事がないので振り返ると、身を固くしていたのはミロも同じだった。






                        アゲハは北海道にも数は少ないながら分布しているようなので、
                        見聞録への進出を果しました。
                        アゲハの幼虫は ⇒ こちら ( 幼虫の写真が苦手な方は見ないでください)
                        ツノを出しているのは こちら         ( 上に同じ   )      

                        例の幼虫図鑑の写真は実に鮮明できれいですが、
                        アゲハに直接リンクできず、まずトップにつながります。
                        それから自分で 「 アゲハ 」 を検索することになるので、
                        トップの迫力写真が目に入ります。
                        それでもよい方は ⇒ こちら


          
「ミロ……もしかして幼虫は苦手なのか?」
          「いや、そんなことはない! ただ、突然出てこられて驚いただけだ。 俺は聖闘士だからな!!」
          「それならよいのだが。 疑ってすまぬ。」
          「いや、気にしないでくれ。 それより、カミュ…」
          「あ………ミロ……」
          「ふうん……お前って触られると、アゲハと違って柔らかくなるんだな。 それにいいにおいがする。」
          「……ば、ばかもの………」
          「ふふふふふ♪」