足湯

「おい、カミュ、見てみろよ! きっとあれが足湯に違いない♪」
ミロが指差すほうをみると、温泉旅館の立ち並ぶ通りの一角に簡単な屋根つきの小さな休憩所のようなものがあり、何人かの日本人が腰掛けてくつろいでいるようだ。
「足湯? ああ、足だけを温泉にひたして血行をよくし、健康増進を図るための簡易入浴法のことか。」
「そういわれると、風情も何もないな。 のんびりとくつろぐって言ったほうが、よくないか?!」
そう言うと、カミュが驚いたことには、ミロがさっさと素足になって日本人に混じって足を湯につけたではないか。
「え……?」
「気持ちいいぜ! お前もぜひやるべきだよ、早く俺の隣に座れよ、こいつは最高だ♪」
「しかし、人前で靴を脱ぐなど……」
渋るカミュには、湯の中で足をユラユラさせているミロのすっかり日本人化した神経には、ついていきかねるのだ。
「郷に入っては郷に従えって言うだろう? そんなところに立ってないで、血行の促進を実感しろよ!」
振り向いたミロに手を引っ張られてカミュもあきらめることにした。 どうせ誰にも知れるはずはないのだ、アクエリアスのカミュが人前で靴を脱いだことは、この場限りのことなのだから。
「なるほど! これはよい気持ちだ、なんとも言えぬ心地がする♪」
「だろ? 日本人は、まさに快楽のなんたるかを知る民族だな!」

湯に足を泳がせた二人が童心に帰ってくつろいでいると、若い日本人女性二人がやってきた。
「ねえ、あそこ見て! とってもきれいな外人さん!」
「ほんと! あんな素敵な人、見たことないわよ♪この世に、こんなにきれいな人たちがいるなんて信じられない〜!」
「ねえ、写真撮らせてくださいって言ったらだめかしら? 断られちゃうかな?」
「そうねぇ……だいいち、あたしたち、英語できないしね……そうだっ!一人があの人たちの隣で足湯に入って、それを写真に撮ればいいのよ!そしたら自然に外人さんを写せるじゃない♪」
「あっ、それ、いい!それなら、ばっちりよ♪まず、あたしからでいい?」

こうして、なにも知らない二人が足湯を楽しんでいる姿が300万画素のデジカメにおさまったのであった。
「どう?うまく撮れてる?」
「OK、OK♪ 最高のでき!ようしっ、これを貼って日記をアップしちゃおうかな♪」
「あっ、ずる〜い!あたしも、そうするわ!きっとコメントが山のようにつくわよ!」
「この写真見たら、誰だって感想書きたくなるわ、間違いなし♪」

数日後、この写真は、双児宮で温泉のことについてネットサーフィンをしていたサガを、おおいに瞠目させることになるのである。





                ええ、最近のデジカメは進歩が著しくて! 
                おかげで、お二人の美しさの半分くらいは記録できたかも。

                というわけで、サガは二人の黄金聖闘士の優雅な温泉旅行の実態を知ってしまいました。
                どうなる? 以下次号! (笑)
                                              足湯 ⇒