金 印 (きんいん) |
「 金印の見学 」 三年六組 星野夢子 今日は社会見学で福岡市立博物館に行きました。市立博物館は早良区 (さわらく) にあって、学校からはちょっと遠いです。すぐ近くにある福岡タワーには来たことがありますが、博物館は初めてなのでどんなところかなぁと思って楽しみでした。 博物館には昔のいろいろなものが展示してあって、先生は 「農家で働く人のことを勉強しているところだから、お米作りの展示をとくによく見てきましょう」 と言いましたが、私がいちばん見たかったのは金印です。 金印は江戸時代の人が地面の中から見つけた昔のはんこみたいなもので、ほんとうの金でできていて、日本が中国と交流があったことの大事な証拠だそうです。お母さんが子供のころの教科書にも書いてあったそうで、日本中の人が見たがっていると聞いて私はびっくりしました。 博物館に着くと先生から、「静かにする。走らない。ほかのお客さんの迷惑にならないようにする。大事だと思うことはメモをする」 とかの注意を聞いてからグループ行動になりました。私たちのグループは最初にお米作りのところを見てから金印を見に行くと決めてあったので、二階の展示室の 『 稲作の始まり 』 のところに行きました。たくさんの土器が飾ってあって、中にお米の粒がついたままで見つかったのもあって、それだから日本でお米を作っていたことがわかるんだそうです。昔の稲刈りは今と違って便利な道具がないので大変だったと思いました。 私が壁の年表を見ていたら池田さんが 「はやく金印を見に行こ。」 と言ったので、稲作のことをノートにメモしてから金印のほうに行きました。池田さんは前にうちの人と金印を見に来たことがあるのでくわしいです。 「あそこのところだよ。前に見たから知ってるよ。すっごい金色できれいだよ。」 池田さんが教えてくれたほうを見ると、部屋の真ん中ぐらいに背の高い四角いガラスケースがあって上から光が当たっていてちょっと特別な感じでした。私たちより先に二人の男の人が金印を見ていて、それは外人さんなのがすぐにわかりました。 「ねえ、あれ、外人さんだよ。あの人たち、髪がすごく長いけど男の人だよ。」 と池田さんが言いました。 「うん、そうだね。」 と私も言いました。近くに行くと、こっちを見た外人さんは外国語でなにか話しながら正面の場所をかわってくれました。金印を見たい人が多いので、まわりじゅうから見られるようになっていて、外人さんは金印を後ろ側から見るみたいです。 「ねえ、夢ちゃん、あの外人さんって、すっごくきれいだよね〜、びっくりした〜!映画俳優かなあ?」 「え〜、わかんない。でもほんとにきれいだよね〜」 「かっこいいよね〜、きっと英語だよ、なんか恥ずかしいよね〜」 「うん、そうだね、あたし、英語ぜんぜんわかんない。」 私と池田さんがひそひそ話しながらケースのこっち側から外人さんを見ると、金髪の男の人がもう一人の黒い髪の人になにかしゃべっていました。ケースの反対側から金印を見ながらずっとそこにいるので、もっと金印をまん前から見たいんだと思いました。 「待ってるみたいだよ、早くどいたほうがいいかな?」 「っていうか、あたし、金印より外人さんのほうが見たいよ。すっごいきれいだしぃ。うちの近所にも外人さんいるけどこんなに背が高くないし髪も短いし、ぜんぜん違うんだもん。男の人のモデルさんかな?ほんとにかっこいいよね!」 池田さんも私もこんなに外人さんに近いところにいるのは初めてでドキドキしました。 金印ははんこなので、はんこの字がよく見えるように金印の下側に鏡が取り付けてあって、はんこの字が見えるようになっています。 黒い髪の外人さんがケースの左側に回ってきてその鏡を覗き込んだ時に長い髪の毛がふわっと肩のところから前のほうに流れるみたいに落ちてすごくきれいなのにびっくりして、わぁっ、って言ったらその外人さんが私の方を見ました。四角いガラスケースの幅は60センチくらいだからすぐそばに外人さんがいるのでものすごくドキドキしました。 「きゃっ、こっち見た。どうしよう〜、黒い髪の毛の人と目が合っちゃったかも!」 「え〜っ、夢ちゃん、いいなぁ〜、ねえ、なんかドキドキするよね〜、こういうのが萌えっていうのかもしれないよ。」 「えっ、そうかなぁ? 萌えってなんだかわかんなくて前にお姉ちゃんに聞いたら、アニメとか見て好きだと思ってすごく夢中になることだって言ってたよ。アニメじゃなくてほんとの外人さんだから、違うんじゃないの?」 「萌えじゃないんだったら、え〜と、初恋だったりして〜。」 「やだぁ〜、池田さんっ!」 「あたしもやだぁ!恥ずかしいもん!」 私たちが照れ笑いをして突っつき合っていたら金髪の外人さんがガラスケースの右側から金印を見始めました。右と左の外人さんが小さい声で英語を話していて、聞いてるだけでかっこよかったです。金髪の人の髪の毛はすっごいきれいな色で、光の当たっている金印とおんなじくらいにきれいでした。私も外国に生まれたらぜったいに金髪がいいです。もう一人の人は黒い髪の毛で、金髪じゃないけどやっぱりすっごくきれいです。 「夢ちゃん、あたしたち、こんな近くで外人さん見ちゃってすごいね〜、なんか偉くなったような気がするし〜。外人さんと一緒に金印見てるって、あたしたちもかっこいいよね〜。英語がしゃべれたらなんか言うのに〜。やっぱりアメリカから来たのかなぁ?サインとかもらっちゃだめかなぁ。」 「しっ、だめだよ、池田さん、聞こえるよ!」 「大丈夫だよ、日本語わからないから英語をしゃべってるんだから。金印見てるふりして外人さん見ちゃえばいいんだよ。金印はちょこっと見ればいいんだから。あたしたち、近いからまた来れるし〜。外人さんはもう日本から帰っちゃうかも知れないんだから、今がチャンスだってば。よく見とかないと、もったいないよ。」 それで私も池田さんと一緒になって両側にいる外人さんを見ることにしました。目が青くて色が白くてすごくきれいです。この博物館の中で一番きれいかもしんないと思いました。まつげなんか、お姉ちゃんがばっちりお化粧したときよりも長かったです。 そんなふうにしてこっそり見ていたら金髪の人と目が合ってしまいました。そしたら外人さんがにっこりしたのでものすごく恥ずかしくなりました。 「どうしよう〜、池田さん、あたし、いま目が合っちゃったよ〜〜」 「え〜っ、いいなぁ〜、それってすごいよ!!ねえ、どっちの人と?」 「髪の毛の金髪の人!あたし、もうだめ!恥ずかしいってば〜!もう行こうよ!」 「え〜、もっといようよ。もったいないよ。」 「だめだってば。恥ずかしいから、もうあっちに行こっ!」 私が池田さんを引っ張って次の部屋に行くと、ほかのグループの人と一緒になりました。みんなで江戸時代の村の様子の模型を見て道具の名前をメモしようと思ったらノートが見つかりませんでした。 「池田さん、あたし、ノートどこかで落としちゃったみたい。」 「え〜っ、ほんとに?どこで落としたんだろ?」 「わかんない。さっき、お米のことをメモしたときにはあったし。」 「じゃあ、金印のとこ?さがしに行こうよ。」 そのとき、後ろからだれかに名前を呼ばれました。 「星野さん、ノートが落ちていましたよ。」 あれっ、と思って振り向いたら金髪の外人さんが私のノートを差し出してくれていました。 「…あ……ありがとうございます。」 「どういたしまして。見つかってよかったですね。」 うっそぉ〜! 日本語すごく上手だし! この外人さん、日本語しゃべれるんだっ! にっこり笑った外人さんは黒い髪の毛の外人さんがいる金印のケースのほうに行ってしまいました。 「夢ちゃん!どうして外人さんと話できたのっ?!」 「かっこいい!すごいよ〜、ずるいずるいっ!すっごい金髪だったよね!」 「なんで夢ちゃんの名前知ってるの?知り合いなの?すごいよ!めちゃめちゃかっこいい外人さんじゃんっ!」 「あんなにかっこいい人、テレビでも見たことないし!あんなに髪が長くて足も長くて、漫画に出てくる人みたい!」 みんなにわっと囲まれて、私と池田さんはどきどきして顔が熱くなりました。 「ほんとになんであの外人さん、夢ちゃんの苗字が星野だってわかったんだろ?……あっ、ノートの名前を読んだんじゃないの?それじゃ、あの外人さん、日本語も話せるし漢字も読めるんだよ!」 「あっ、そうか!それじゃ、あたしたちがしゃべってたの、全部きかれちゃったんだ!」 「やだぁ!」 「やだやだ、恥ずかしいよ〜、どうしよう、池田さん!」 「もうどうしようもないよ〜、でも超かっこよかったよね!ああいう外人さんを紳士って言うんだよ!あ〜、今日、博物館に来てよかった!ぜったいラッキー!」 私たちが騒いでいたので先生に怒られました。 金印はとてもきれいだったです。 長年の夢だった金印を見に行ったら、小学生の団体とすれ違いました。 彼らが去ったあとの金印をゆっくりを眺めながら、お二人の会話を想像し。 そんな経緯でできた話です。 金印について(福岡市立博物館) → こちら 久しぶりに読み直してみたら、まるちゃんとたまちゃんの会話みたいでした。(2011・4・1) |
、