しりとり

「夏のフェスティバルを記念して、しりとりをやらせてもらう。 テーマは 『 夏 』 限定だ。」
「なぜ しりとりが夏の記念になるのだ?」
「いいんだよ、そんなことは。 こっちにはこっちの都合があるんだから。 ええと、俺から行くぜ、夏休み!」
「水浴び。」
「さすがはアクエリアスだな、お前の行水姿を見てみたいよ♪ 古式ゆかしく縁先にたらいを出して腰までの水に浸かって日本手拭いでしどけなく胸を隠して………♪ それじゃあ、ビワ、季語では夏に分類される 。」
「わらび餅。」
「ふふふ………透き通ってぷるぷるっとして………まるでお前の肌のような……上にかかった黒蜜を丁寧に舐め取って………♪…ああ、俺が悪かったよ、そんなに睨むなよ。 ちょっと口が滑っただけだ。 地引網。」
「水鉄砲。」
「水鉄砲でお前を狙い撃ちしてやるぜ♪ どこを狙って欲しい?百発百中だぜ! 浮き輪。」
「若鮎。」
「ふっふっふっ♪ 若鮎のようにピチピチとはねるお前をこの手でとらえて、身をよじって悶えるところを…♪……いや、気にしないでくれ。 浴衣。」
「台風。」
「どんな暴風雨からでも俺が身を挺して守ってやるよ、頼ってくれていいぜ!台風の代わりに俺がしっぽり濡らしてやるよ。  鵜飼。」
「イソギンチャク。」
「つかまえたら離さない、いいだろ♪ ところで前から聞きたいと思っていたんだが、お前、触手って興味ある? ………すまん、悪かった。 クラゲ。」
「ゲンジボタル。」
「闇の中で仄かに明滅してるところは、お前の俺にたいする恋心みたいで風情があるな♪ 控え目なところが萌えだよ。 でもって本心は俺に恋焦がれていて………ええと、 ル、ル………え? ル?」
「降参か?」
「とんでもないっ! ええと、ええと………ル、ル……ルビー !」
「………なぜ、ルビー?」
「七月の誕生石なんだよ、だから夏っ! 細かいことは気にするな! 男は度量が広くなきゃいかん!」
「ふうむ………まあ、よかろう、今までの付き合いに免じて認めることにする。」
「よかったぁ〜〜!」
「では、ビール。」
「………え?」
「ビールが困るのならビヤホールでもよいぞ。 他に、瓶ビールとか、ビーチパラソルとか、ビーチサンダルとか、ビーチボールとか、美人コンクールとか…」
「おい、待てっ! いくら水着審査があるからって、美人コンクールは夏とは限らないだろうが!」
「そうか? では、15数えるまでに好きなものを選ぶがよかろう。 こう見えても私は慈悲深いつもりだ。 もっとも今まで最後まで耐えたものは皆無だが。」
「お前………なにかの真似をしてないか?」
「1…2…3…4…」
「ルビーのように美しい瞳のお前が常夏の島の椰子の木陰に横たわり、俺が最高級アロマオイルをふんだんに使って身体の隅々まで丹念にマッサージを施すの図!」
「……え? 今、なんと?」
「だから、俺がお前にマッサージしてやってるんだよ、それに修飾語を加えて華やかに彩ってみた♪ むろん、始まりは 『 ル 』 だ。」
「……そ、そんなものは受け付けられない! しりとりは単語で…!」
「そんなこと、いちいち気にするなよ、男は度量が広くなきゃいかん! この文章になにか問題でも? 椰子の木陰が人目について恥ずかしければ、最高級リゾートホテルのロイヤルスイートでもOKだ♪ うん、こっちの方が誰にも覗かれないから、俺も思い切ったことができて嬉しいね! 隅から隅までっていうのは伊達じゃない! お前をたっぷりと歓ばせてやるから安心してマッサージされてくれ♪」
「あの………私は……そんな…」
「いいから、いいから♪」






          
黄金の中で夏が一番似合うのはスコーピオンのミロだと思うのですが。
          そういえば、私は、
          ハワイアン ロミロミマッサージをミロミロマッサージと読み違えて大興奮したことがあります。
          で、ミロはとっくに会得して施術してると思います。

  「小さいころ海岸で不用意にイソギンチャクに手を出して触手の毒にやられて手が腫れ上がったことがある。」 
  「あ〜、そういえば!」
  「比喩とはいえ、イソギンチャクにつかまえられるなどとんでもない。 ましてや触手など!」
  「俺の言った触手はべつに腫れ上がるわけでは………」
  「うむ、たしかにイソギンチャクのすべてに人間に影響を与えるほどの毒があるわけではない。
   しかし沖縄以南に生息するウンバチイソギンチャクの毒性は強力で急性腎不全による死亡例も報告されている。」
  「え………」
  「素人はイソギンチャクには手を出さぬのが賢明だろう。」
  「あ、そう………」