海 苔


朝食にはいつものように海苔が出た。
最初は、黒い紙のようなものが食べ物には見えなくて残したものだったが、美穂から説明を受けたカミュが首をかしげながら食べてみて、俺にも勧めてくれたのだ。
最初は味がわからなかったが、慣れてくれば自然の海の塩味というのがわかるようになってくるから不思議なものだ。

朝食を終えて離れに戻ってきたとき、カミュの唇に何か黒いものが付いていることに気がついた。
「あれ? カミュ……こっち向いて。」
「なんだ?」
「唇に……ああ、さっき食べた海苔が付いてる。下唇の真ん中のあたり。」
俺が笑いながらそう言うと、すこし赤くなったカミュが恥ずかしそうにそっと唇を舐める。
「取れたか?」
「ううん、まだ付いてる……しょうがないな、俺が取ってやるよ ♪」
当然のように俺はカミュに唇を重ねていった。
当然のように、カミュは少しあらがい、やがてその抵抗も影をひそめてゆくのだ。
いつの間にか俺は、カミュを畳の上に横たえていつくしみ始めている。
「……ミロ……こんなところで……それにこんなに明るくて………」
ことの成り行きに切れ切れに抗議をしていたカミュもやがて声をひそめて身じろぐばかりになってゆく。

   海苔もなかなか味な食べ物じゃないか……おかげさまで朝のカミュを味わえるし……♪

心の中で黒い紙に感謝した俺は、もう一度唇を重ねていった。





                       
突発は、これだから恐い……。
                       3作目が、すでに黄表紙……みんな海苔がいけないのよ ( ←濡れ衣です )。