「 メリークリスマス 」


暗い部屋で愛されていたカミュが満足しきってミロの胸に顔を伏せていたときだ。
ふいになにかの光が射したような気がして目を開けると、枕の横に沢山の小さい光の集まりのようなものがあってその色がゆっくりと変化しているのが見えた。
「あ……なに?」
「ふふふ、驚いてくれた?ちょっといいだろう。」
驚くもなにも、赤、黄、緑、青、紫と色さまざまに光が変化するのに合わせて二人の肌も幻想的な光彩を帯びる。
「これは……発光ダイオードか?」
「そう。 このコントローラーで色調の変化速度も変えられるし、好みの色で固定することもできる。 あまり早く色が変わるのは慌ただしいから、いちばんゆっくりにしてあるけど、気に入ってくれた?」
「あの……私は…」
そう言って口ごもってしまうカミュの肌が淡く色づいてミロの気をそそる。 ミロが光の束をカミュの胸の上に置いた。 ダイオードは熱を出さないので熱くはなくて、ただ白い肌がゆっくりと色を変えて涼しい眩しさを見せている。
「どう? 悪くないだろ?」
「あ……ミロ…」
やさしく伸ばされた手に触れられてしまうと、あとはもうカミュは震えることしかできぬ。 恥ずかしさのあまり閉じたまぶたの裏を染める七色の光がカミュを非日常の時間に誘い出す。
「……そんなこと……ああ…」
おののく身体が次々と色を変えてミロの目を楽しませる。
「もっともっと震えさせてやるよ……ほら、こうやって…」
「あっ…」
繊細に触れていた指先に代わって熱い唇が与えたあらたな刺激に耐え切れなくなったカミュが思わず身をよじるが、それをのがすミロではない。切ない吐息を漏らすカミュを上目使いに見ながら、甘くやさしい仕打ちは途切れることがない。
「…あの…………もっとそのまま…」
最初こそ唇を噛んで必死に耐えていたのだが、やがて七色に染め上げられたカミュが身体を押し付けてきて艶めいた声でより強い刺激をせがみはじめた。 ミロが待っていた瞬間だ。唇を離すことが惜しくて返事の代わりに細腰に添えていた手にぐっと力を入れてやると、カミュにもその気持ちが伝わったのだろう、ミロの髪に差し入れていた手に一瞬力が加わり、それを合図にミロの愛撫がより濃厚になる。 どこまでも甘く耐え難い仕打ちがカミュを一番歓ばせることをミロはよく知っている。
「だめ……だめだから………ああ、ミロ……そんな……そんなこと、いやぁぁ…」
小刻みに震えながら身体を浮かせたカミュが涙を滲ませる。

   いけないと言ったのに………いやだと言ったのに…
   どうしてこんなに……………こんなにされてしまうのだろう………
   ああ もっと………ミロ………もっと私を…
   ミロは意思が強くて 私は意志が弱くて いつもミロに流されてしまって……
   こんなこと いけないのに
   あ………あぁ…だめ……………いやぁぁぁ……

「ミ…ロ………助けて………」
「もっと……もっとお前をよくしてやるよ……もっと震えて……もっと歓んで……メリークリスマス、カミュ…」
閉じたまぶたの裏に映る虹の光が真っ赤に染まる。
歓喜の光の渦が二人を飲み込んでいった。