「 乗る 」

「もし運転できるとすれば、どんな車に乗りたい?」
「運転を?」
「ああ、俺達だって普通に暮らしていたら車の免許くらい持っていると思うぜ。」
「そうだな、やはりプリウスがいいと思う。」
「プリウスって?」
「エンジンを始動させるのに電気を使い、回転数が安定したところでガソリンに移行する。燃料の浪費を抑え、地球環境を守る車といえるだろう。」
「なるほど、お前らしいな。俺はなんといっても真紅のポルシェ911ターボSカブリオレだな。排気量3800CC,5700CC、停止状態から100キロに加速するまでわずか3.2秒、最高時速318キロを誇る。そんなのに乗って高速を飛ばしたらいいと思わないか?むろん助手席には、お・ま・え♪♪」
「かなり高級車のようだが販売価格は?」
「おっ、興味あるとは嬉しいね。ええと消費税込で2710万円になる。待てよ?消費税が8%になると…うわっ、81万3000円も上がるんだぜ!信じられるか?今が買い時だと思うが。」」
「そもそも賛同はしないが、それだけの価格の車を買おうとするユーザーは消費税のことなど気にしないのでは?」
「え?そうかな?」
「まあ、それはよい。それにしても、それだけの性能のスポーツカーなら燃費も相当なものだろう。せっかくだが私には分不相応だ。地球環境にもよくないし、とても乗る気にはならぬ。」
「そんなぁ〜〜!」
「しかたあるまい。」
「………それじゃ、俺なら?」
「え?」
「乗ってくれる?」
「…え?」
「俺の上にはいつだって乗ってくれていいぜ、歓迎するよ、もちろん、その逆でもいいけどさ。」
「ば、ばかものっっ!」
「あっ、カミュ!カミュ〜〜っ!!」



「ミロ……あの…重くはないだろうか?」
「平気だよ、お前のほうが8キロも軽いし。」
「ん…」
「そんなことより…感じる?」
「え……あの………それは…」
「ほら、自分にもっと正直に。人間なんだから、感じて当たり前なんだよ。というより、こんな体勢で感じないほうが不自然だと思うが。」
そう言ったミロがカミュをぐっと引き付ける。
「あっ…」
息を飲んだカミュが真っ赤になってしまうのもミロには楽しい眺めなのだ。
「ねぇ……感じてくれてる?俺はお前を充分に感じちゃって困るくらいなんだけどな。 わかってくれる?」
「ん……」
わざわざ口に出さずとも、カミュが自分でも持て余してしまうほどに感じているのは痛いほどわかっているミロだ。
しかし、そこを聞いてみるのが恋の面白さというものではないか。
「どうなの?答えてくれなきゃ、朝まで許さない。ずっとそうしていてもらおうか♪」
困らせながらほんの少し揺すってやると
「あっ…」
と小さく叫んで身体をひねって逃れようとする。
「だめだめ!乗り逃げは許さない。」
楽しげに笑ったミロがカミュの一番弱いところに手を添えていくと、たちまち嬌声があがり身悶えしたしなやかな身体が反り返る。 それがかえって密着度を高めてしまうのだが、もうカミュにはどうすることもできはしないのだ。
「ミロ………わかったから………あの……お前を十分に……感じてるから………許して……ああ……いや…やめて……」
敏感過ぎる触れ合いがカミュを乱れさせ、それを見上げるミロの目が歓びに輝いた。
「もっと……もっと感じて……ほら、こんなふうに…」
やさしい、しかし的確な手がカミュを深い歓びに導いていった。





               
書いた動機は、
               「もし お二人が運転するならどんな車を選ぶのかなぁ?」  という単純なもの。
               「 乗る 」 という動詞が元凶です。