Alexander 107v Descant Compensating Double Horn

アレキサンダー社 107v high-F/B Compensating Double Horn 通称「ペンツェル・モデル」
この楽器は1960年代から70年代半ばぐらいまで制作されていた。現在はベルを作れる職人さんが引退したためアレキサンダーでは同様の設計の楽器は制作していない。これまでPAXMAN、H.F Knopf、ミラフォンに受注生産で同様の設計の楽器を見たことがある。107vは結構見かけるので、人気のモデル(それなりの)だったか安定的に制作されていたのだろう。バロックやオペラなどの高音域で速いパッセージのフレーズを吹くのに普通使用される。現在ではデスカントフルダブル(alex107など)で演奏されるのだろう。60年代はホルンの高音域に求められる音色やタッチが違っていたのだと思う。

この楽器は全長はB管にA管補正(ゲシュトップキィ)をつけた長さであり、コンパクトな巻きになっている。ベルのテーパーも独特だが、ベルは現代のものと同じ同じ経なので、フルダブル・ホルンを見慣れた目にはかなり特異なデザインに映る。

バウマン氏初期の録音でロゼッティ2曲やハイドン、テレマン、ダンツィ、モーツァルトの2番などの協奏曲(ヤープ・シュレーダー指揮 アムステルダム合奏団 60年代)はこの楽器で演奏されている。この録音のバウマン氏の音色と歌い方こそがわたしの理想だ。とは言えこれらの録音が107vで演奏されていたとは最近まで知らずアレキサンダーのBシングルで演奏されていたと思いこんでいた(苦笑)。また師匠すじであるE.ペンツェル氏の演奏を(モーツァルト協奏曲集やハイドンの協奏曲などのLP)聴いたことも、この楽器を手に入れる原動力となった(笑)。とどめはハンガリーのF.アダム氏のCDを聴いたことだったが(笑)。非常に端正な音色と独特の輪郭があるのだ。ここまで動機づけが強かったところに、日本で手に入れ損ねたのである(悲)。そこでイーベイである(またか!)。今度は間違い入札ではなく執念である(笑)。プロフェッショナル・ユースでヘコなしサビなし、すり減りなし、ローターもメカニカルも新品状態である。ピッチの問題もない。やった!!

このシステムの基本はhigh-F管であり、それにB管補正がついている。このためB管といえどもhigh-F管の吹き心地ときつさから逃れることはできない。デスカントフルダブルとの大きな相違点である。短管の楽器は高音域が鳴りやすいのではなく、容易に「当たりやすい」だけである。当たりやすいということは演奏者側が確実にアンブッシュアの形成をして狙って吹かなくとも、息の勢い中心の荒っぽい吹き方での太く明るく高音が鳴るということでもある。このような吹き方は音が荒れるし、音がやせていく。常にコンパクトに吹くという非常にハードルの高い正しい奏法を身につけていることが大切だと思う。そうであっても一時期のバウマン氏はデスカント使用のためつぶれかけたといわれているし、この手の楽器は本当に恐い部分があるのだと思う。

さてわたしはまだこの楽器を十分に吹き込んでいないのだが、まず感じたのはB管だけ、high-F管だけという吹き方はこの楽器に合わないようだ。まんべんなくhigh-F/Bを切り換え、フレーズにふさわしい音色の統一のため換え指(A管補正の使用も含めて)を使う方が良さそうだ。つまりこれまで覚えた指使いを大幅に変更しなければならない。わたしにはちと辛いことである。さらい直しだ(苦笑)。

吹き心地は先ほど言ったように短管独特のきつさがあり、B管も抵抗感が強い。短管では息のコントロールを出だしだけでなくのばしでもキッチリ支えないと、あとふくらませになりやすいし、フレーズの後処理がおろそかになる。また古いアレキサンダーを吹いたことがある人はわかると思うが、今時のアレキに比べ音がつまった感じになり、少々音がぱさつく。しかし焦点を意識したアタックで吹くようにすると非常に際だつ音色が出る。この楽器でわたしは新たな境地を手に入れることができるか、つぶれかけるかどっちかだろうなぁ。。。

開放状態ではB管。息の流れは、マウスパイプから切り換えバルブ→A管補正バルブ→B管延長部分→B3,2,1→high-F管1,2,3→ベル部、という順番で息がまわる。

チューニング管は3番ローター側に(小指側)全体のチューニング管)、A管補正の上部にB管専用のチューニング管がある。

high-F管の3番は写真の向きでは水抜きができない。ベルに当たって抜けない(苦笑)
ケースは古いアレキサンダーの人工ワニ皮で、現在のものよりひとまわり程度小さい。外側も内装も制作年代を考えれば大変美しい。もうちょっと丈夫なケースが欲しいが市販品で合うものがあるかなぁ?
この楽器は当然プロユースのものでアマチュアの手に負えるものではないと思う。そういう意味では普通のオケでは使えないし、室内楽でも低音域での使用に難しさがあるため用途は限られるだろう。バロックやコンチェルトを演奏するためのソロイストのための楽器だと思う。ちなみについてきたマウスピースは年代物のalexanderの10番である。

アマチュアのわたしに手に負えるものかどうかはわからないが、主に協奏曲をさらうためだけに手に入れた。よほどのことがなければステージに連れて行くことはあるまい。残念だ。

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しみつ99

Apl.1 2006

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