演奏 高音域・低音域の練習
| 高音域を苦手、あるいは自信のないひとは多くおられます。
ホルンを吹く上で一番の課題は「広い音域を担当する」ということと、広い音域の中で「しっかり響く音」、そして「ダイナミックス」が求められる、ということだ考えています。 オーケストラ、吹奏楽などの大編成合奏では、ソロを除けばコンチェルトを吹くような音色を求められません。むしろ周囲と違和感のない、つまりファゴットやビオラ・チェロの音色の補強やクラリネットの和音をより豊かにするための柔らかなのばし、一方ホルン・パートとして他の金管パートとの違いを持つ存在感、金管合奏の中でトランペット・トロンボーンとの音域の架け橋であったりです。また低音域はトロンボーン・チューバにない響き方が作曲家の心をとらえ様々な音楽効果を狙ったオーケストレーションが試みられています。作曲家は低音をチューバにさせたりトロンボーンにさせたりせずにホルンを選んでいるということは「ホルンの低音の音色」を求めているのです。開いた音ではなく密度の濃いいくぶんこもった音…。私たちホルン吹きは音域の広さだけでなく、合奏の中の音楽的存在として注意深く演奏することが求められます。 このような役割は音色の変化によるものがほとんどですが、それはダイナミクスの変化とアタックの多様性も深く関わっています。音域の広さもさることながら、それぞれの音域でダイナミクスの変化と音色の変化が求められますから、高音域や低音域がただ「出ます」状態では足りないということです。 ラベルの作品に多く見られるppで高音域のソロも大変ですが、マーラーの交響曲1番「巨人」での終楽章のようなfffも意外なことにコントロールが困難です。またベートーベンの「合唱」の3楽章、4番ホルンのソロでは広い跳躍があり、その音が聴衆にまる聞こえというプレッシャーの中、クリアで美しく響かせる必要があります。モーツァルトやハイドンの作品は高音域が多く使われていますが、テュッティを壊さない威圧感のないハイトーンが求められています。また20年ほど前の曲で「フェスティバル・バリエーションズ」というスミス作曲のブラスの曲などすべての音域でクリアさと力強い音量を求められますから、いろいろな意味で付け焼き刃では吹ききることができません。 さて「高音域・低音域はどうやったら出るのでしょう?」という質問が様々な掲示板で繰り返されています。実際のところ基礎練習を身につければ「そのうち出るようになる」というのが正しい答えですが、もう一方こちらから「高音域を出すためにどんな練習をしていますか?」と聞くと、ほとんどの場合(正直に)「特に何もしていません」と答える人が多い。それじゃ音域は拡がらない。試行錯誤してどうやったら出るようになるのか煮詰まった人は少ないようです。 「中音域でしっかりとした音色と音程」を第一にクリアしていないと、音域を拡げる場合「問題」を抱える時が多い。わたしの経験では音域は「上下に拡げる」方向で考えていけば、問題なくひろがる(かかる時間も個人差があるけれど)と思うのですが、目の前のコンサートやコンクールを抱えた人たちは「一方向」(上だけ、下だけ)に拡げようとする。そうして拡げた音域によって影響を大きく受ける吹き方は問題を抱えやすいのです。つまり顎が張れてなかったり(チョップスになっている)、唇をゆがめていたり、不自然なほど唇が歯に被さっている、マウスピースを強く押しつけ唇や歯にダメージを受けやすい状態などを見かけたりします。マウスピースの選択も大きな要素ですが、音域のためにマウスピースを変えるのは賛成できません。 ここで紹介する練習法は基礎練習ですが、エアの使い方と唇の柔軟性を同時に練習できるようなメニューを用意しました。高音域を出すための練習といっても、高音域だけを長時間練習することはできません。やはり唇にダメージを与えたり、筋肉の疲労が激しいからです。「負荷」ではなく「無理」がかかると練習はむしろ多くの問題の原因となります。このためご紹介する練習は高音域を出すための条件を準備する練習が必要です。 そのような練習に必要なことは逆に唇にダメージは与えないが、コントロールの幅が大きく、適度な疲労によって身体的条件が整えられ、そして音程と吹き加減の関係がはっきりわかる音域、つまり中低音域での練習が効果があるということになります。先に述べたように「中音域でしっかりとした音色と音程」をモノにしながら、音域を拡げていく方法です。 しかしかなりしんどいですし、いわゆる調子を崩す場合もあります。それはアパッチュアを拡げたり小さくしたりという大きな動きを伴う今まで使っていなかった筋肉を使うことと関係が深いでしょう。また息の使い方がダイナミックになりますからそれまでの息の使い方のつもりで合奏などに参加したりすると、アタックがうまくいかないかもしれません。要は「慣れ」なのですが唇の柔軟性とエアの使い方がかなり変わるのは違和感が強いでしょう。結論的にいえば高音域であれ低音域であれ、唇の中心を柔らかく保ったまま吹けるようになる練習法です。 なぜ過度にプレスをかけたり、唇を堅くしたりして高音域を出すのでしょうか?考えてみてください。 それは唇の中心に肉を集めることができないからです。といっても筋力はそれほど必要ありません。むしろ唇そのものの筋肉でアンブッシュアを作ろうとして、唇周辺の顎や頬など「周辺」の動きによる補助(と言っていいかどうか…)が十分に使われていないからなのだと思います。 ですから今回ご紹介する練習法は高音域を出すために必要な動きを身につけるための、低音を中心とした唇「周辺」の使い方と効率的なエアの使い方を研究するわけです。低音域はエアの使い方にコツがあります。そのコツをつかんで高音域でムダのない吹き方をしようという考え方です。 また速い動きや大きな動きを(リップスラーや跳躍など)するためには、力が抜けていないと要求する早さで音をコントロールできません。力を入れすぎて楽器を吹いているとすぐにバテたり音を並べられなくなります。つまり最低限の緊張と筋肉の弛緩-緊張の繰り返しを自分にあった形で身につけましょう。これらのメニューは耐久力増進にも効果があるはずです。 おそらく低音練習に慣れていない方は息が足りなくなります。理由は、低音練習に慣れていないため、ことさら丁寧に音を出そうとするとテンポがゆっくりになり息が足りなくなる場合、低音を出すのにアパッチュアを開きすぎているため息の流出量が多くなっている場合が考えられます。丁寧にさらうことを心がけましょう。またアパッチュアが開きすぎていれば、大きな跳躍を伴う練習では高音域に適した小さなアパッチュアを形成できないため高音域がかすれたり出なかったりします。 |
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| 練習1
高音域というより「すべての音域でのフレキシビリティを高める」と考えてみましょう。 最初のウォームアップです。中音域のFを中心としてスラーによる上下の動きです。 |
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| ★この練習の目的は上への動き・跳躍では息の圧が増加し、下への動き・跳躍では息の圧が減じるわけです。その際どうしても唇の動きだけでは跳躍ができないため、お腹周辺の動きによる意識的な息づかいも必要になります。息づかいと唇の動きを同時に意識して適切な連動を探ってください。 | ||||||||||||||||||
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| 練習2
今度は低音域から上の音への跳躍練習です。タンギング(発音)に気をつけてやってみてください。跳躍の音がクリアに発音されるとは限りませんが、むしろ基音のFが可能な限り小さなアパッチュアで出せるようになることが課題だと思ってください。低音と中音域、高音域での口の形が違うと思いますが、最小限の動きで変化できるようになればすばらしい進歩だと思います。 |
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| 練習3
ペダル音域では息を上手に使わないとたった6拍でも息が足りなくなります。それほどアパッチュアが大きく開いているわけです。唇をゆるめるのではなくアパッチュアを「開く」という意識的な動きを探ってみましょう。Fを基点にしていますが、発音とスラーのつながり、そして音の消し方が不自然にならぬよう気をつけましょう。 |
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| 練習4
音階練習ですが、様々な調性あるいは和声的短音階・旋律的短音階などもこのパターンで練習します。実は広い音域にわたって音階パターンを積み上げると、音の切り替わりにおける指使いの重要さを実感できます。管が短くなったり長くなったりする際の抵抗の切り替わりが音をはずしたり、発音が不明瞭になったりさせます。ただの野太い息を入れるだけでなく、その音にあった息の切替を連続して意識的に行うことでかなり吹きやすくなります。(この練習は最高音を下げて練習しても良い)。上に向かって息のクレッシェンド、下に向かって息のディミネンドが音楽的に吹くためには必要です。 |
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| 練習5 音階的分散和音
練習4と同じく、自然倍音をもちいたものでなくキィを使って練習してください。(F管でやるのが理想的ですが疲労が激しいので身体が慣れてからにしてください。) 注意点は練習4とほとんど変わりませんが、分散和音ですから個々の音の音程に気をつけて練習してください。特にオクターブで下がってくる場合は息の圧力が十分でないということなので、息のクレッシェンドに十分な注意を払ってください。(特にスラーでの練習では要注意です) |
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| 練習6 音域を拡げる
これはあくまで例であって、ご自分の使っているエチュードなどにも同じようなパターンの優れたものがあるはずです。譜面を手に入れられない方のために作ってみました。 |
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| 練習7 自然倍音
わたしはこの練習が息づかいと柔軟性、音量、そして音色作り(遠くへのびる音という意味)などを総合的にモノにできる練習法だと考えています。ただ音域が広いため息が足りなくなったり、音が出なかったりする人が多く諦めているようです。息が足りなくなるということは大きく吹きすぎているのだし、かすれたりするということはアパッチュアのコントロールの詰めが甘いということだと思います。これまでの練習メニューの流れでやってみると、意外と息が入ったり音が出たりするものです。このような練習に取り組むには「準備」が必要なのです。 |
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| さてパート2も用意してあります。がネコの写真がないのがとても淋しいので、ご覧ください。そういえば最近ホルンの写真が少ないという意見も寄せられていますが(?)、猫屋敷としてはホルン関係最多のネコ写真掲載を目指しているのであしからず(笑) | ||||||||||||||||||
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