Sutdy on Horn ホルンの知識 その1 その2 その3(工事中)

フルダブルホルンの色々 「独り言」わたしはホルンの設計に興味があります。実はarex310の購入を決めたのはその設計に惹かれたからなのですよ(笑)
ダブルホルンは20世紀の初頭からさまざまな試行錯誤がなされ、各工房・メーカーによっていくつかの定番モデルが定まってきました。

代表的なものをいくつかあげると、クルスペ・タイプ(Kruspe)、クノップ・タイプ(Knopf 俗に言うK巻き、あるいはガイヤー・モデルとも呼ぶ)、シュミットモデル、アレキサンダーの103モデルなどがあげられるでしょう。他にもクノップが制作した複雑なモデルやD.オットーのモデル、フィンケ、メルヒオール、パックスマンのモデル、ヤマハ662シリーズなども独特の設計があり、こまごまとあげられるでしょうが、ここでは一般的な各モデルの特徴と簡単な設計やコンセプトを紹介してみましょう。

他のHPでも紹介がありますから重複は避けられませんが、特に息の流れや巻きに絞って説明をしてみます。

ただし工房の歴史や成り立ちなどは他のHPの詳しいので重複を避けるために割愛させて頂きます)


★クルスペ・タイプ

おそらく1900年代ぐらいにクルスペはA.ホーナー(アメリカのホルン奏者1877〜1971!)によって採用され、彼がデザインしたホルンをホーナー・モデルと呼び、これがクルスペタイプと呼ばれます。ついでにいうとホルトンのファーカス・モデルはクルスペのモデル・フリッツを参考に設計されたものだと聞いたことがありますが、クルスペのカタログを見るとあまり似ていません(?)真偽のほどをご存じの方がおられればご一報ください。

ホルンの設計の傑作、だと思います。なぜかというと改良クルスペ巻きで(写真の楽器は改良クルスペ・タイプ)はチューニングスライダーが4つあり、音程調節だけでなくどのスライドで調整するかによって音色のコントロールも可能(なはず・・)であることですね。おそらく設計としてはひじょうに完成されており、ほとんど改良の余地はないのではないかと思います。ベルはラージベル、エキストラ・ラージベルのものがあり、太い音を出しやすいと思います。

マウスパイプはそのチューニング機構から短めになります。F-B切替バルブは若干小さめです。複雑な巻きですから支柱や管の継ぎ目が多く若干重めになってしまうようです。部品の点数が多いけれど、それがかえって剛性を高め、丈夫な楽器になっています。また息の流れはF管B管とも1-3の順番で通っています。このような巻きの複雑さと重量が適度な抵抗感をもたらし、豊かで、音質を犠牲にしない大音量が得られるようです。

タックウェルが「ホルンを語る」の表紙で吹いている写真はオリジナル・クルスペですね。

このタイプの楽器は様々なメーカーで作られており、有名なのはコーン社でしょう。コーン8Dは以前アメリカでは圧倒的なシェアでした。

また非常に高価ですがウィルソンの楽器もよかったです。

近年クルスペの新品を見かけるようになりました。

これはわたしのあこがれの楽器ホルトンH-104タックウェル・モデル。マウスパイプがLタイプ、Mタイプに簡単に交換でき、ベルはバヨネット式でねじしきではない。後継機H-105が同じシステム(ベルはネジ式) 写真はH-175マーカーマティック。若干クルスペタイプと巻きは異なるが、デュアルボアを採用、非常に音程がよく、扱いやすい(と思う)

★クノップ・タイプ

アメリカではガイヤー・タイプと呼ぶことが多い。見て頂ければわかるように、親指のF-B切替レバーは小指側の切替バルブ(若干1.2.3番ローターに比べ小径である)につながっている。ゆるやかな巻きで自然に息が入る。バルブの位置の関係からローターに入るまでマウスパイプが長くとれる。マウスパイプがクルスペタイプに比べると長く、このためB管の鳴りもF管の鳴りも自然であり、ホルン本来の音色を出しやすい。音色は個体差・素材によると思うがBlightな音色だ。わたしは洋白製(ニッケル)のガイヤータイプは見たこともないし吹いたこともない。黄色や赤ベルが主流のようだ。

ライスマンやハインツベルナー、などに名器があり、ヤマハ、E.シュミット、リコ・キューン、D.オットー、アレキサンダー(503と1103)などもこのタイプのホルンを製造し評判が高い。もちろんクノップは代替わりして生産を続けている。ガイヤーは今は工房そのものが途絶えている。

クノップのオールド Knopf ガイヤーのオリジナル Gayer
どうせならオールドの写真の方がよいと思いまして・・・(笑)
クノップとガイヤーはレイアウト・巻きはほとんど同じだが上記の写真を見ていただけばわかるようにFの1番管にはいる角度が違う。またガイヤーのほうが若干巻きが大きいようである(アレキサンダーの200thモデルは巻きが改良され、K巻きと少々異なる印象があるが大変吹きやすい)。息の流れをじゃましない巻きはひじょうに美しい曲線だと思う。

またチューニング管が基本的に2つ(メイン・スライダーとF管チューニングスライダー)なのでマウスパイプの主チューニング管でしかB管はチューニングできない。それと息の通りの関係からB管の3番抜き差し管に水がたまりやすい。

大変吹奏感がよく、抵抗も少ないため「息を吸い取られる」というホルン吹きも多い。近年アメリカではガイヤータイプが流行っており、いわゆる「ダークサウンド」は減少傾向のようだ。とはいえそれはオケの世界であって映画音楽などでは相変わらずダークサウンドが主流のように聞こえる。もちろんイコライザーでいじっているのだろう。しかしハリウッド製の映画の音楽がアメリカ人のオケとは限らない。ロンドンのオケの場合も多いなぁ。

また俗に言う「Kモデル」では、F管では1-3番と息が流れるが、B管では3-1の順番で息がまわる。このような設計のため、部品が少ないというメリット、すなわち支柱や管の継ぎ目を少なくできるため、クルスペ・タイプより楽器の軽量化が図れる。非常に軽く作られているのはE.シュミットでしょう(ただ重量そのものはメーカー・工房によってまちまち)。


★アレキサンダー103

アレキサンダー103の特徴は「輝かしい」ということでしょう。その特質はおそらくF-B切替バルブの大きさ(この平面バルブを使った103モデルは1907年に完成、1909年に特許を取得)とアレキサンダー独特のバルブの位置などのバランスにあるのでしょう。

この巻きの特徴は、クルスペよりも急カーブが多く複雑な巻きで抵抗を作り出し、一方この大きな平面バルブの採用でF-B切替時の抵抗を少なくしていることでしょう。マウスパイプは短めで、チューニングスライダーはローターに入る前に主メインチューニングスライダー、F管B管それぞれに1つずつあります。抜き差し管の流れはF管が1-3、B管が3-1の順番でKモデルと同じ。同じくB管3番抜き差し管に水がたまりやすい。複雑な構造のため支柱が多いような気がするが、実際はハンダ付けが多い。アレキではゲシュトップ・バルブつきの104もある。クルスペタイプとクノッフ・タイプとはまた違う独特の設計ですね。

アレキ103の吹き心地の特徴は、どのダイナミクスでも息をしっかり入れると楽器が「ブルっ」という振動があり、これがたまらない生理的快感を感じます。皆さんはいかがでしょうか?

他に妙に錆びやすい真鍮だと感じています。イエローに限らず赤もそうです。おそらく真鍮を作るときに有機物(わらとか木くず)を意図的に混入してある、と聞いたことがあります。他に一定期間地金状態で放置し、多少酸化させてから加工するという「うわさ」を酒飲み話に聞いたことがある。いずれにせよアレキサンダーはこのような「伝説」に事欠かないですね(笑)

実際のところわたし自身はあまり103という楽器が好きではありません。一つには抵抗感(かなりきついという人もおられますね)がなかなか息を入れにくく(最近のものはそうでもないようですが)、実はその抵抗感がわたし自身は好きなのですが、その吹き心地とベルから出るドライで明るい音に違和感が強く、長い間使用をあきらめていました。そういう方は多いのではないでしょうか? 大きな平面バルブ

スパイダーバルブ(?)と呼ぶそうだが、管は6本なんだからインセクト(昆虫)・バルブではないのかぁ?


★シュミット・モデル  (なんとなくおわかりになるだろうけどこれをやりたくて、このページを作成しています(笑))

シュミット・モデルは基本的に滅びたモデルと考えてよかろうと思います・・・。全体写真を見るとほとんどFシングルような印象を受けますし,裏側も大変シンプルな巻きになっています。Kモデルと同じくチューニングはメインスライダーとF管だけで非常にシンプルな構造になっており、支柱が少なく、ハンダによる接着が多く構造的に弱いです。軽量化のためというより巻きを重した結果のようですね。バルブ部などかなり無理がある直角が使用されていますが、ピストンを採用することによってスムーズな息の流れが可能になっています。

やはりピストンを使用していることで、その分軽くなっており、またF-Bの切替もスムーズです。このためにこのモデル独特の「遠鳴り」と明るい音が魅力的です。息の通りもダブルホルンとしては非常に自然で吹いていて気持ちいいです。

ただ大きな問題点は(ようは慣れなんですけど・・)、F-Bの切替がピストンなのでストロークが長く、そして垂直に親指を動かす必要がある。このため使いにくいと感じる人が多い。(ex.の@Hrさん

一見Fシングルに見える大きな巻き

ちなみにベルをヤマハのプロモデル(YHR-764など)につけると遠鳴りするし、強奏時音色が破綻しない。イチョウ取りベルのせいだろうか・・

マウスパイプは長く、やはり急カーブになっている。マウスパイプは様々なハンドメイドが出回っている(意外なことだが)
この急カーブはピストン特有の抜けの良さのためほとんど息の流れをじゃましない。

(注:レバーについているのはクラリネットの親指用のゴムのガードです)

滅び行くモデルだけに、生産する工房・メーカーは少ない。現在はカリソン(受注生産)、S.ルイス(カスタム・メイド)ぐらいだろう。

ヤマハはもう生産していないし、アトリエ・ハーロー(これはピストンに若干の角度がつけてあり親指が楽)は作ってくれるかどうか・・(笑)そういえばハーローはガイヤー・タイプも作っていたが・・。今はヴィーナーとナチュラルの工房という認識になっていますね(笑)

2004.9.19
子猫をくわえて指導(??)するバロちゃん Index