勤評闘争 成績主義での論文
高槻市労組が2001年3月、「季刊自治労連」 2001年Vol86に掲載した内容を以下紹介します。 

  高槻市における成績主義賃金導入の実態と市労組の取り組み

                                 
はじめに

 いま、自治体においても、民間と同じく能力・業績主義にそった人事管理、賃金制度が持ち込まれている。

 高槻市では、1993年12月に勤務評定の導入を行ってきた。そして、「勤勉手当への成績率の反映」(=成績主義賃金)が、1997年12月の一時金から行われ、昨年の12月の一時金で8回目の反映となった。

 勤務評定結果の本人への開示を求める裁判は、第一審の敗訴(昨年12月8日判決)を経て、大阪高裁に控訴している。

 勤務評定の成績率の勤勉手当への反映後の職場の実態と市労組の闘いを報告する。
 
1.公務職場に相容れない成績主義賃金
 高槻市は、勤務評定など人事諸制度の提案理由として「より公平で客観的な能力の実証」「勤労意欲と人事管理への信頼性の確立」及び「職員の働きがいと行政効率の向上」を上げていた。

 「勤務評定結果の勤勉手当への反映」の協力要請の際は、反映の根拠について「地方公務員法の解釈からも勤務評定の結果を昇級及び勤勉手当にも反映させ」る必要があるとした。そして「制度実施からすでに約3年を経過し、既に実質8回にわたり、実施した結果、人事院規則に定める勤務評定が具備すべき要件である『識別力、信頼性及び妥当性があり、かつ、容易に実施できるもの」として勤勉手当の反映ついては実施できる段階に至ったものと認識」したと述べている。

 しかし、勤務評定は恣意性が高いことから庁内の反対世論は強く、給与への反映については、市が強行導入する際、圧倒的多数の職員の参加の下、市労組とともに自治労市職労もそれぞれに早朝食い込み集会、ストライキで抗議することとなった。

 成績主義賃金が導入されて3年が経過しているが、職場での矛盾が深まり、公務の仕事と相容れないことが日々明らかになりつつある。
 
(1)評価内容を納得させえず、深まる評定者や制度への不信

 C評価(一時金支給の前日に全職員にA・B・Cいずれかの通知文書がわたされる)された職員の中で、納得がいかないケ−スがいくつか(保母、技術職員、事務職員それぞれで)組合に寄せられている。

どの場合も評定者の誠意と納得できる説明は得られず、評定者への不信が募る結果となっている。勤務評定の恣意性・主観性がますます明らかになり、「人事管理への信頼性の確立」や「働きがいの向上」に逆向する状況がすすんでいる。
 
(2)恣意的、主観的な評価にならざるをえない勤務評定


 勤務評定マニュアルも全職員に配布され、そのマニュアルの中で勤務評定基準、要素別評定基準がもうけられ、評価のポイントなどが書かれている。

 しかし、例えば、職務能力の折衝・応対力についてみれば、評価のポイントは「適切な応対」「相互理解に対する努力」「説得力」「困難な状況下での折衝」についてSABCDの五段階評価するとなっているが、抽象的な基準のため、評定者の恣意的・主観的・相対的評価にならざるを得ないことがわかる。

 さらに、勤務評定整理票は、職員に指導目標(係長作成→課長承認→本人に周知)を持たせ、その実績を評価するもので、「勤務評定の根拠をはっきりさせ、評価をより正確、公平にするもの」として九六年から実施されているが、目標設定が「主任としての自覚をもって」など抽象的であったり、個人によって目標の水準がバラバラなどの実態が明らかにされている。


 評定者からは「勤務評定マニュアルどおりにはやりにくい」と大きな負担になっていることが指摘されている。そのため、幹部職員から「一時金への反映は(比較的個別に評定しやすい)管理職に限定すべきでは」の批判もある。評定される側からも「結局は(上司と)あうか、あわないかだ」「市長や部長との(人間)関係を見れば、だれがAかわかる」「だれから見てもA評価と思うのに、なんでBなの」などの声がでている。

 さらに、「勤勉手当の成績率の運用に関する要綱」では、勤務成績の段階(A・B・C)よる職員の配分割合はAは職員数の20%以内、Cは職員数の20%以内としている。この割合の範囲内であれば、勤務評定区分(一定の職員数ごとに定める)の責任者は、勤務成績の段階にそれぞれの職員数を割り当てることができるとされ、市当局がC職員を増やそうと思えばいつでも自由に増やすことができるようになっている。

 評定者も、被評定者も、勤務評定での「より公平で客観的な能力の実証」について、大きな疑問をもっている。
 
(3)公務では個別評価はなじまないことがはっきりと
 
公務職場では住民福祉の向上など仕事の遂行にとって集団的検討や職場の仲間との協力した取り組みが求められる。建設関係のある管理職は「みんなの協力があるから職場はまわっている。それをそれぞれ評価して差さをつけよとは無理な話だ」といっている。

保育所職場でC評価された職員がでたとき、職場から「同じように仕事してきたのに、なんであの人がCなの」と猛烈な反発と運動が展開された。結局、その職員はまともな説明もないまま、次回の勤務評定ではB評価となった。

職員の個別評価で職員間の競争をあおるやり方は、残業時間数、仕事の速さまで意識するなど、職場と職員に大きな矛盾と負担を持ち込んでいる。
 
(4)市民サ−ビス向上に逆行、行革リストラに協力するヒラメ職員づくり

 高槻市では行革リストラで、福祉、医療、教育など市民施策の切り捨てと人員の削減が強力にすすめられているが、、職員が市民に責任もって説明できないことによるストレスや仕事の実態を無視した人員削減と残業規制、サ−ビス残業で労働強化が、すすんでいる。

「勤務評定の勤勉手当への反映」は高槻市第四次行財政改革実施計画(1996〜1999)に盛り込まれた。これらの遂行に協力的かどうかが個々の職員に問われることになり、職員の意識変革がすすまざるをえなくなっている。
職場では、「こんなきびしい状態が続けば体が持たない」「市民に説明できない。国や市長にいってもらうしかない」「はやくやめたい」の声がめずらしくなくなっている。市民の方を向いて、働きがいと見通しをもっていきいきと仕事に励むことがきびしくなっている。
 
2.市労組は成績主義賃金の導入にどう闘っているか

 勤務評定や勤勉手当への反映の提案に対し、徹底してその背景とねらいを明らかにして
庁内の反対世論の高揚をはかり、市民いじめの「行革リストラ」を推進する職員づくりであるとして、市民との共同を追求してきた。

 その結果、庁内の圧倒的な反対世論と「高槻市政は冷たい」「福祉が悪い」など市民からの市政批判も強まり、高槻市を追い込むことになった。この時の闘いが、制度導入させたとはいえ、広範な反対世論をいまも維持し、市の運用拡大(C職員は一%程度。市労組組合員への適用を押さえている)を制限する力となっている。
 
(開示請求訴訟など導入後の取り組み)

(1)アンケ−ト、対話活動による反対世論の維持結集

  勤勉手当への反映制度導入後3カ月の時点(2月に実施)でアンケ−トを行い、9割を越える職員の反対が示され、ニュ−スに掲載し、依然として反対世論が強いことを示した。その後も6月期と12月期の一時金アンケ−ト時に勤務評定アンケ−トを行っている。その集計結果や職員の声をその都度公表し、反対世論が強いことを示し、市当局を牽制して、勤務評定の勝手な運用拡大を許さない力としている。
 
(2)C評価された職員への納得ある説明を求める取り組み

 もともと勤務評定による個別評価に問題がある中で、勤務評定の通知票(一時金支給の前日にわたされる)をその都度組合に結集し、問題があれば、(職員からの申告による)組合もいっしょに評価内容を評定者から説明を求める取り組みを行っている。この中で保母の場合、評定者が事実誤認を認めざるを得なっている。建設部の職員の場合、建設部長が勤務評定マニュアルにのっとって評価していないことを、認めさせている。

 また、下水道部の技術職員については、どう見ても上司からにらまれているとしか思えない実態が、明らかにされている。勤務評定がブラックボックス化されている中で、開示されないまでも評定者は納得いく説明を拒むことができないので、本人の誇りと公正な評価を求めていく上で効果ある取り組みとなっている。
 
(3)市民政策ビラなど配布し、市民との共同を追求

  人事・賃金問題を市民本位の仕事の推進との関係でとらえ、市民いじめの「行革」リストラ」反対運動の中に位置づけ、市政ニュ−スとして個別の郵送や、全戸ビラの配布で市政に関する情報を市民に明らかにし、市民との共同の取り組みを追求している。
 
(4)強行導入した市の不当労働行為を問う闘い−−地労委への審査請求

 賃金制度の大幅な変更であるにもかかわらず、誠意ある団体交渉を行わず、勤勉手当への勤務評定結果の反映を強行導入したことについて、地労委へ「不当労働行為に対する救済」を求め、審査請求した。
 この調査の中で、勤務評定制度の導入根拠の薄弱さ、目的・効果の曖昧さ、団体交渉とは考えていなかったことなどが明らかにされ、反対世論の高揚に大きな力発揮している。請求は棄却されたが、中労委に再審査請求する中で、市労組への差別取り扱い、労使関係の改善にむけ、前進を勝ち取っている。
 
(5)開示を求める闘い

 きわめて抽象的な評価基準で、本来の公務の遂行に反することを求める中での評価。しかも評価の結果は、ブラックボックスとなっている。これでは、公正・公平な評価の保障はない。そこで、勤務評定の結果の本人への開示を求めて闘っている。この取り組みに、期待を寄せ、C評価された自治労組合員も参加している。

@「高槻市個人情報保護条例」の自己情報開示請求権により開示請求。高槻市の「非開示を決定」にたいし、異議申し立て。高槻市から諮問を受けた高槻市個人情報保護審査会は、1998年11月13日付けで「開示すべき」を答申。しかし、高槻市当局は、審査会の答申は尊重すべきという「条例」の規定を無視して「異議申し立てを棄却」を決定している。開示決定をした「審査会」は、答申の中でその理由について「勤務評定の目的を達成するには被評価者本人がその評価を信頼し納得することが必要であるところ、本人の納得を得るためには、評価過程に本人が参加すること、評価内容を本人が知り、意見を言えるようにすることが不可欠である」と述べている。

A公文書非開示決定処分取消訴訟を起こす。開示請求の正当性を「憲法に由来する開示請求権」「労働者プライバシ−権」から明らかにし、高槻市当局の「開示することによって、評定者の公正な評定がなしえなくなる」などとする非開示理由を具体例を挙げて批判した。しかし、昨年12月8日にだされた判決は「棄却」。
判決内容は、憲法上の要請や時代の流れをみない不当なものとなっている。職場の関心は高く、期待もおおきい。昨年12月20日、大阪高裁に控訴し、たたかいをすすめている。

B裁判闘争の中で、民間と同様に高槻市でも開示の動きがでている。開示の流れはあるが、納得づくで職員を支配するところにねらいがある。したがって開示を効果的に発展させるかどうかが問われている。

 組合がイニシアを発揮して全職員の開示にむけた取り組みと本人の異議申し立て制度の確立。さらには評価基準をできるだけ客観的にする闘いが大切となっている。

・・・> 大阪地裁判決

・・・> 個人情報審査会答申