EPISODE:1.5 【邂逅】

AWC --- --/-- -M --:-- UN KNOWN SPACE

(っく・・・俺は・・・どうしたんだっけ?・・・)
(確か特機の実験中にとんでもねぇのが出てきて・・・・)
(・・・何とか撃退したような・・・気がする)

涼風はやや戸惑い気味に逡巡する
そしてだんだんと意識がはっきりしてくると静かに眼を開け自分の座っているコクピットを確認する

正面のハッチは大きく開かれ柔らかな風が流れ込み、外には草原が広がっている
どうやら機体は隔座しているようだ

・・・・サァァァァ・・・・

「・・・風・・・か、どうやら絶望的状況って訳じゃなさそうだな」
次いで俺は機体の各部チェックを始めた
今は合体していたブライムは急激な戦闘の為であろう合体が強制解除がされ
隔座した機体のすぐ横で自己修復中のようだった

次に現状把握の為コンソールに手を伸ばし、レーダーに索敵をさせる
だが、そこで涼風は驚愕する
レーダー・通信・センサー、あらゆる物に反応が無い
正確にはレーダーは人工物を写さず、無線にはあらゆる電波が存在しないことを告げていた
「んん?・・・レーダーは故障だとしても、電波が一切無いだと?」

俺は何度もチャンネルを変えたりレーダーや索敵モードの変更をしてみた・・・が
そこには矢張り何も移らない

暫くそんな事をしていたであろうか、涼風は機体に近づく足音に気づいた
サクサクサク・・・
   サクサクサク・・・

ハッチの外に広がる草原から足音が近づいてくる
その足音はハッチから見えるぎりぎりの位置で止まった
俺はすぐさま愛用の銃をシートの脇から抜き様子を伺う

足音の主は真っ白なローブを着、フードを目深に被りこちらからは様子を窺い知れない
が、その身長は150センチほどだろうか、ローブ越しに僅かに判る体型から女性らしい

互いに出方を待ち数分ほど経った頃そのローブの人物はスッと息を吸うと凛とした声で言った
「ようこそ、お待ちしておりました・・・」
そう言うと少女はフードをまくり顔を出した
その少女は真っ白な髪と其れと同じほど白い肌をし、端正な顔立ちをしていた

そして、そのすぐ後ろからもう一人、少女とは対照的に真っ黒のローブを着た人物がいた
黒のローブも矢張り白のローブの少女と同じような体躯をもち
そのフードをまくるとそこからは、ローブと同じ真っ黒な黒髪が流れるように溢れた
そしてその少女も白のローブの少女に続き凛とした声で言った
「貴方が来るのを待っていました・・・」

「ちょ、ちょっとまってくれ、いきなり、待ってたってどういうことだ?
 それにここはいったいどこだ?お前らは?」

「あぁ、自己紹介がまだでしたね、私の名はセレンと申します」
「・・・シルフィ・・・」
セレンとシルフィと名乗った二人の少女は涼風の意に介さず続けた

「大丈夫、少なくともここは安全です」
次いで黒のローブの少女が
「貴方の質問にお答えしましょう、先ずはあちらへ・・・」

少女が指差した先には神殿のような建物があった
「さっ、お話が纏まったら取り合えずあっちへ移動しましょ」
セレンはポムっと手を叩いて屈託の無い笑顔で歩き初めた
「あ、お姉さま・・・」
シルフィは白の少女を追うように歩き始めた

「っと、なんだかなぁ?まぁいつまでもここに居たってしょうがねぇよなぁ」

そう一人ごちて涼風はDEEPとBLUEの自己修復状況を確認した

AUTO RePAIR :COUNT 03h (自己修復完了予定3時間後)

「3時間くらいか、ま、状況把握ついでに茶ぁぐらい出して貰えるかな?」
そう言うとシート脇から新しいタバコを一箱出し愛用のジッポを胸ポケットにあるのを確認し
ハッチから表に飛び出した

外に出て初めて周囲の状況がわかったが、そこは直径2〜3km、深さ数百メートルのクレーターの中央部の様だった
クレーターといってもその広さだ、草木は生え陽光は降り注ぎ、走る風は気持ちよかった
「いい風だなぁ・・・」
俺は前を歩く二人を追いかけ石積みの神殿のような建物の中に消えていった


中に通された俺はその神殿の中を見て唖然とした
そこは外見は簡素な神殿のようだが、中はドーム状になっており中央に一段高い台座があり棺の様な物が三つ置かれている
天井迄はゆうに30Mはあるだろうかにはその天井には大きな天窓があり、
そこから差し込む陽光がその棺をまるで神聖な物のように照らし
中央の台座を挟み台座の奥には20M程の古びた巨人の石像が立ち台座を見下ろして
台座の手前には簡素に設えられたテーブルと椅子があり
そのテーブルの前に二人が立ち俺が来るのを待っていた

俺は促されるままに椅子に座るとセレンとシルフィも椅子に掛け
ポツリポツリと語り始めた

その内容に俺は驚愕した
なぜなら、俺の今居る時代は俺が居た時代よりも遥かに過去
単純に数億年は昔だという・・・

さらに、セレン達は俺の居た世界とは別の異次元の世界、
俗に言うパラレルワールドの人間だと言うこと
本来なら俺の時代に突如現れたあの化け物を台座を見下ろす石像に見えるロボットで倒す為に送られたらしいのだが
俺が倒した瞬間彼女たちがこの世界に現れ俺も彼女たちも、
そしてあの化け物もこの遥か過去の世界に飛ばされてしまったと言う事だった

あの化け物の名はQUAM(クァム)異次元を渡り己の享楽の為に戯れに命を弄び
飽きれば又別の次元へと流浪の旅をするいわゆる超進化生命体なんだそうだ

俺が倒したあの時、裂けた時元に吸い込まれる迄のほんの数瞬のずれが過去では何百年単位で時間がずれて俺達が到着したという事だ
そして先ず数億年前にあの化け物がこの地に落ち
次いで彼女達がこの世界に着いた時はすでにあの化け物は使い物にならなくなった体を
数千とも数万とも計り知れない程に分けそれこそ骨も残さずこの地に散り散りにしてしまっていた事

彼女達はいつか現れるであろう俺の為に此処に拠点を作り
その時の為に準備を進めていたのである

「ってー事はあれか?、あんた達と俺が同じ場所に出たって事は奴も此処に居たって事か?」
俺は何の気なしに聞いた

「・・・そうですよ」
「えぇ、此処のクレーター自体アレが此処に来た衝撃で開いた様ですし」

「げ、マジかよ」
「ふふ、大丈夫、さっきもお話したように、アレは分体を作り世界中に散り散りになって今は骨すら残ってません」

「そ、そうか、で、その分体ってのは何なんだ?」
「分体・・・いつかアレが復活する為の保険みたいな物・・・」

「それっつーのは、その分体が成長したら奴みたいのが世界中にってことか?」
「えぇ、そうですよ」
セレンはニコニコと微笑みながらいった
「まぁ、成長するまで軽く数億年、自我が保てる確立が五千万分の一くらい
 そこからあの程度までに成長するとなると確率は〜、ん〜・・・」
「・・・ざっと二千万分の一くらい・・・」
考え込んだセレンを尻目にシルフィはフォローを入れる

「ですけど分体の数はそれこそ数万か数兆か・・・」
「・・・将来確実に成長体は生まれる・・・と、思う・・・」

「マジか・・・奴みたいのが又生まれる可能性は高いのか・・・」
「えぇ、残念ながら」
「で、後は自我が保てなかった奴はどうなるんだ?」

「自我の保てない物はそのまま成長した器だけが残り、人の意思である程度自由に動かせるようになりますね
 もっとも、其れですら適正がありますが、その場合適正者が生まれる確立は〜・・・え〜」

「・・・精々数万分の一・・・」
「そうですね、其れくらいですね・・・ですが
 それでも、悪い人は何処にでも居る物、器を利用する者も必ず出てくるでしょう
 器と対等に戦うとなれば貴方達の世界では可也難しいと思います
 ですから、私達は貴方に託す事にしました・・・」
セレンはニコニコと微笑みながらさらっと言ってのけた

「へ?俺か?」
俺は思わず素っ頓狂な声を上げた
「えぇ、私達には時が有りません、ですから、本来私達がアレに使うはずだったあの石像に見えるメカのコアを貴方に託します
 私達の乗ってきたメカはコアを抜き取り今は抜け殻の様な物、ですがそのコアを貴方のロボットに移植すれば
 コアは生き返ります」

「そして・・・そのコアを使えば貴方の愛機に力が宿り貴方の思うように扱える様になります・・・」

シルフィの言った[扱えるようなる]、それはブライムの唯一最大の欠点
MDSの扱いが困難な事に他ならない

「そのコアってのは一体何なんだ?、力って?、それを使うとどうなるってんだ?
 それに・・・あんた達に時が無いって、どういう事だ?」

だが、セレンはその問いには答えず、台座を見上げると優しく微笑み・・・
「そろそろお目覚めみたいね、後は・・・あの子達に任せます
 あの子達は常に貴方に寄り慕い添いつき従います、貴方の世界とあの子達の未来、守ってあげて下さいね・・・」

そう言うとセレンの体が天窓から差し込む光と段々同化していった
「え、あ、おい、ま、待ってくれよ!まだ聞きたい事が!」

「後の事はあの子達に聞いてください、久々にお客様とお話出来て楽しかったですよ」
「・・・あの娘達の事・・・宜しくお願いしますね・・・」
「いつか、この世界のどこかで再開出来るといいですね、それでは」
二人はニコリと微笑むとそのまま光の彼方に音も無く静かに消えていった・・・・

俺はタバコに火を付け・・・
「ふぅ、幽霊って奴か?いや、思念体って奴か?、
 どっちにしろ何百年も俺の事を待っててくれたんだ、それだけでも感謝せにゃな・・・
 しかし・・・あの娘達って・・・?」

ガコン!
静まり返ったドーム内に唐突に音が響き渡った
音のした方に眼をやるとどうやら其れは台座の上からの様だった
俺は吸い寄せられるように階段を上り台座の上の棺の前に立つ
棺だと思っていた其れはどうやらカプセルになっているらしい
蓋にはネームプレートがあり、それぞれ
[Sakura][Suzuka][Shizuna]と、書いてある

ガチャン!
と、言う音共に[Sakura]と書かれた真ん中に置いてあったカプセルのロックがはずれ開いていく
カプセルの中には身長150cm程の少女が横たわっていた
その少女は一糸纏わぬ姿で少女の面影を残し均整の取れた顔立ちをしていた
少女はゆっくりと目を開け半身をゆっくり起こすと、やや寝ぼけ眼で
「・・・お早う御座います、マスター、私はさくら、これから宜しくお願い致します」
と、言い、膝までは在ろうかと言う長い髪を優雅に揺らしながら立ち上がり
カプセルの中に設えられていた薄い桜色のローブを羽織った
「え、あ、あぁ、宜しくな」
俺はやや戸惑いながらそう答えた
さくらと名乗った少女は続けて
「これからは私達は常にマスター、貴方と共にあります、
 貴方が行く所は私達の行く所、貴方が死ぬ時が私達の死ぬ時」

「ちょ!、ちょっとまった、いくら何でもそりゃ・・・」
「私達のこと、お嫌いですか?」
「い、いや、そんな事は無いが、いやむしろこんな可愛い子が傍に居てくれるって言うなら言う事無しってもんだが
 逢っていきなりそんな事言われても・・」
俺は今までの人生で一番狼狽し、しどろもどろになりながら言った

「マスター・・・」
さくらと名乗った少女は今にも泣きそうな顔で俺の方を見上げてくる
迷子になり今にも泣き出そうな子供のような瞳だ
「あー、わーった、わーったよ、だが俺と生死を共にするような言い方はよしてくれ
 お前さんみたいな可愛い子に死なれたら俺が困っちまう」
俺はあわてて言った

「良かった、それでは改めて、宜しくお願い致しますね、マスター」
そういうとさくらはニコリと微笑んだ

そんなやり取りの中、ガチャン!と、右のカプセルのロックが外れる音がしカプセルの蓋が開いていく
カプセルの中には身長165cmほどの少女が横たわっている
[Suzuka]と書かれたカプセルの少女はゆっくりと瞼を開くとこちらを無表情で見つめ
「・・・貴方が・・・私達の兄様?・・・私は鈴佳これから末永く宜しく・・・」
そう言うとやや寝起きの悪そうな顔をしながらカプセルから出でて、薄い空色のローブに身を包んだ
「兄様って・・・なんで俺が兄様なんだ?」
俺は当然の質問をしてみる
「・・・だって、さくら姉様のマスターだから、だから兄様・・・間違ってる?」
鈴佳はキョトンとした眼でこちらを見た
「なるほどな、さくらは鈴佳のお姉さんになるのか」
言いながらさくらに眼をやると
「はいマスター、鈴佳、それに静奈は私の妹です」
「ふむ、って事はさくらは三人姉妹なんだな」
「はい」
さくらはそう言いながら鈴佳の髪を綺麗に梳かしながら纏め後頭部にお団子にしてピンで留めた
「・・・ありがとう姉様」
そう言うと鈴佳は嬉しそうに階下に下りていく


ガコン!
最後に残った反対側の[shizuna]と書かれたカプセルのロックが外れた
カプセルは他のカプセル同様音も無く開き中には身長140cmほどの少女が横たわっている

・・・・・・

・・・・・

・・・・

・・・

・・


「くぅ〜〜、すぅ〜〜・・・うにゅぅ・・・」
寝息が聞こえる・・・

俺はこの世界に来てからこっち此処までの緊張をブチ破るような寝息に逆に気が抜けた
「はぁ〜、、、寝てるよ、、、」

「あ、あの、マスター、私が起こしますから」
さくらはオロオロしながら駆け寄ってきたが俺はそれを片手で制し
「いや、ここは俺が起こすよ」
そう言って駆け寄ろうとしたさくらを手で制すと俺はそのカプセルの前に立ち、寝ている頬に指で数回突っついてみた
「うぅ〜ん・・・」
起きない・・・
「中々手ごわそうだな」
そう言って今度はその柔らかそうな頬をつまんで左右に引っ張ってみる
「ぃ、ィひゃい、ぃひゃぃ・・・よ・・ぅ・・・くぅ〜」
一向に起きる気配が無い・・・

「こいつぁ筋金入りのねぼすけだな、良し、ならこいつはどうだ?」
そう言うと今度は軽く鼻を摘まんでみた
鼻を摘ままれた顔は見る見る真っ赤になっていき
「ぅ・・う、ぅぅ・・・ぷっはぁぁぁぁぁ!」
静奈はガバっと起き上がり大きく息を吸った
「はぁはぁはぁ、、、あぁ〜よく寝た、、、」
そう言うと少女は辺りをキョロキョロと見回しさくらを見つけると
「あ、お姉ちゃんおっはよ♪」
そう言うとまだ半分寝ぼけ眼のまま大きくあくびをした
「ふぁぁぁぁぁ〜・・・」

そして俺と眼が合う・・・・・
「え〜っと、お姉ちゃん、この人は?」
「静奈、その方がマスターですよ」
さくらはそう言うと、静奈にニコリと微笑んだ

「まぁ、そう言う事らしい、これから宜しくな」
俺はそう言いながら軽く手を上げて見せた、静奈は大きい瞳を更に丸くして
「宜しくねお兄ちゃん!」と、元気良く言い、若草色のローブに身を包んだ


数分後
台座の下に設えられたテーブルにを囲む椅子に俺達は座っていた
「あー、えーっと、改めて自己紹介しておくか、俺は涼風 忍だ」

「私の事はさくらと、お呼び下さいマスター」
そう言うと長い髪を揺らしにこやかに微笑んだ
「なぁ、そのマスターっての何とかならないか?聞いてるこっちがこそばゆくなっちまう」
「ですが、マスターはマスターですし・・・」
と、いうと又今にも泣きそうな顔をしだした

「あー、お兄ちゃん姉様をなかしたー!」
「・・・兄様・・・姉さん泣かせた・・・・」
二人から攻められると流石にバツが悪い
「あー、判ったよ女に泣かれるのは弱いんだよ俺、マスターでも何でもいいや好き呼んでくれ」
そう言うと今度は打って変わって花が咲いたような笑みで
「はい、マスター」と、答えた

「えっとねぇ、私は静奈だよ、お兄ちゃん、これから宜しくね♪」
静奈はにこやかに自己紹介をすると次いで隣に座る鈴佳が
「私は鈴佳・・・これから宜しく・・・」
とだけ言った
「鈴姉はねぇ、ちょっと無口なんだよ」
と、静奈がフォローをいれてくる

「所で、今ふと気になったんだが」
「はい?何でしょう?マスター」

「どうしてお前たち全員日本の名前なんだ?」
俺は当然の疑問を口にした
「それはですねマスター、セレンさん達が私達にその名を授けて下さったからです
 多分、セレンさん達はマスターが呼び易い様にしたのではないかと・・・」

「なるほどな、俺の世界の事は事前に調べてあったのかな?、まぁなんでもいいけどな」

そこで、今まで無口だった鈴佳が不意に
「兄様・・・兄様の乗っていたメカ、見てもいい?」
「あー!、私も見たーい!!、ね、ね、お兄ちゃん私も見ていい?」
二人は対照的な態度で表にあるメカに興味深々だった

「ん、あぁ、いいよ、機械に興味があるのか?、ま、そろそろ修理も終わるし、取りあえずあまりいじるなよ?」
そう言うと二人は
「は〜い♪」
「・・・わかりました」
そう言って神殿から出て行った

「さーて、取りあえずさくら達の事とか他の事も色々聞きたいのだが、説明して貰えるか?」
「はい、マスター何なりと」

「聞きたい事は色々ある、だが先ずさくら達、お前等は何者なんだ?」
俺は当然の疑問を投げ掛けた
「私達は、セレンさんが作った半有機生命体、俗に言う人工生命体です」

俺はさくらの答えに驚愕した、SFなんかでたまに聞きはした事はあるが
まさかそれが現実に、それもこんな可愛い娘にそんな事を言われるとは思わなかったからだ
それを知ってか知らずかさくらは続けた
「人工生命体・・・と言っても、体のベースはセレンさん達のタンパク質を培養して作られておりますし
 普通の人とそう大差がある訳でありません、まぁ普通の人よりは少々特殊ですが
 常人同様に食事も摂ります」

「つまり、クローンってことか?」
「いえ、クローンとは少々違います、私達にはそれぞれ個性がありますし
 セレンさん達とは別個の人間ですよ」

「ふむ、だが、それだけで俺に付き従うとかそんな事言ってもいいのか?」
「はい、私は過去作られた時にマスターの事をセレンさん達に聞きました
 その上で、貴方と共にありたいと思ったのです」

「ふむ、まぁ、そこまで言われちまったら俺には何も言えねぇな
 まぁ、だが一つだけ約束してくれ・・・
 俺なんかの為に命を粗末にする様な真似だけは止めてくれ
 さくら達が俺を守ると言うなら、俺もさくら達を守る」
さくらはキョトンとした顔をしたがすぐにパァっと花が咲くような笑顔で
「はい」と、答えた

「んじゃ次の質問だ、力とかコアとかってのは何なんだ?」
「それは、これです」

そう言うとさくらは五色の石を懐から取り出した
その五色の石は

光さえも吸い込もうかと言うほどの漆黒の黒
燃え盛る血の色の様に赤い真紅の紅
静寂の水を湛える様な夏空の様な蒼
大いなる癒しを感じさせる清涼感に満ちた緑
全てを見通すかの様に磨き抜かれた純粋な白

「これは?」
「これがコアです、あの石像、と言ってもロボットなんですが、あれに埋め込まれていました」
そういって台座を静かに見守るロボットにさくらは優しく眼を向けた

「この五色の石にそれぞれ精霊のような物が封じられていて
 精霊や元素の力を封じ込めた魔法の石・・・とでも言いましょうか
 封じられている、と言っても意思は殆ど無く単純に言ってしまえばメカと操者の意識を同調させる力があります」

「そして、セレンさんはこう言っておりました
 黒は何色にも染まらない、マスターの正義の象徴だと

 そして紅はマスターの闘士の証
 蒼は私の水面の様な心の証
 白は全てを見通す鈴佳の証
 緑は皆を守る静奈の証だと・・・」

そこまで言うとさくらは俺に黒い宝石を手渡した・・・筈なのだが
その石は俺の手のひらに沈みそのまま同化した
「お、おい、これは?」
言うと同時に俺の中の何かが変わった気がした
それは言葉では言い表せないし、特に何が変わったと言う訳ではなかった
ただ、何か、そんな感じだった
「マスター、貴方は今正式に私達のマスターになったのです、大丈夫マスターは何も変わってませんよ
 ただ、マスターはマスターが正しいと思ったことをすればいいのです
 さぁ、行きましょう、二人が外で待ってます」

そう言うとさくらは立ち上がり表に向かって歩き始めた
「え?お、ちょ・・・はぁ、まったく・・・なんだかなぁ・・・」

そういいながら俺はさくらを追った
DEEPの前に立つと、自動修復が終わったのか何処にも傷は残っていなかった
そしてDEEPの前に立つさくらはさっきの赤い宝石をDEEPに投げた
投げられた石はコクピットハッチの辺りに吸い込まれるように消えていく

途端、ブーンと低い唸るような音が辺りを支配する
「これは?」
「今の赤い石はマスターの闘士の証、マスターが闘士を捨てない限りこの子はマスターの剣になり盾になります」

そのままさくらは今度はBLUEの前に立ち青い石を先ほど同様投げた
青い石もBLUEに吸い込まれ、低い唸るような音を立てた
「この子はマスターの翼、私が駆る空の蒼」

「お姉ちゃん、私の石は?」
静奈が聞くと、さくらは
「はい、これが静乃の、こっちが鈴佳の」
と、二人にそれぞれ石を渡した

「さぁ、マスター、帰りましょう、マスターの時代へ」
「いこーいこー!楽しみだなぁ〜」
「兄様の時代・・・楽しみ」

「え?だって、帰るってどうやって?」
俺は呆然と聞いた
「簡単ですよマスター、来た時と同じように時元を裂けばいいのです」
「裂けばいいって、そんな簡単に言うけどどうやって?」

「マスター、この子達が合体した状態でフルパワーを出してください
 そうすればこの子はマスターの力になってくれるでしょう
 この子の力があれば時元の壁くらい空けられますよ
 後は私たちが何とか致しますからご安心下さい」

「ふ〜ん、そんなもんかね?、まぁやってみっか、、、ってお前らは何処に乗るんだ?」
と、さくら達を見ると、BLUEのコクピットが広くなっていくのが見える
「なるほどね、MWSだしな、形は自由に変えられるって事か・・・
 って!、お前らどうしてそんなにメカのこと詳しく知ってるんだ!?」

俺は当たり前に見えた当たり前でない状況につい声を上げた
それをさくらはさも当たり前のように
「それはマスターが時元を越える際にセレンさん達のロボにこの子達のデータが流れていたからです
 セレンさん達はそれでこの子達の特性を研究し、この日の為に私達に教えてくれていたのです」

「なるほどねぇ、セレンさん達はよっぽど用意周到なんだな」
そう言うと俺はコクピットに乗り込みDEEPのエンジンをスタートさせた
ヴゥゥゥン
紅い石の効果だろうか、MDSはすんなり起動した
そしてモニターには
〔Well come back my MASTER〕(お帰りなさいマスター)

「ふむ、これもあの紅い石の効果なのか?そう言や精霊がどうのってさくらが言ってたな」
モニターは忍の独り言に答える様にモニターに続けて表示した
〔yes MASTER〕

「ふむ、まぁよろしく頼むぜ」
いって、モニターを軽くポンと叩いた
〔yes MASTER〕

俺はDEEPを起動し機体の修理状況をチェックした
各部位は正常に稼動していたが、唯一、右椀部の杭撃機への変形機構だけが機能していない
「まぁ、あれだけの戦闘だ、修復は絶望的だろうとは思ったが機能不全にまで行くとはな
 しかたがねぇ、諦めるか」
それ以外にもBLUEの遠隔操作ユニットもいかれているらしい
こちらはさくらが居るから何とかなるから特に問題は無い

「さて、チェック完了、さくらいつでもいいぜ」
「了解マスター、合体シークエンスに入ります」
「おう、いつでも良いぜ」

今は平時だ、合体自体は何の問題も無く無事に終わりブライムクロウとなる
俺のシートの後ろのハッチが開きBLUEのシートが俺の真後ろ上辺りに移動してきた
どうやらシートはさくらのシートだけが移動したようだ
まぁ、この狭いコクピットに四人ともなれば流石にその狭さは頂けない
当たり前と言えば当たりまえだ

「さて、さくら、俺はフルパワーでいきゃいいんだよな?」
「はい、目標は正面の神殿、その衝撃を利用して扉を開きます」

「あぁ、了解だ、だが良いのか?あそこは・・・」
「問題ありません、この時代に戻る事はありませんし、私達の足跡を残すのも余り得策でも在りませんから」
「そりゃそうだな・・・んじゃいっちょ派手に行きますかね」

「マスター」
さくらは俺を呼んだ
「ん?」
「先ほどマスターに渡した石、あれは私達を繋ぐ絆です、これから私達は常に貴方と共にあります
 これから先私達の事・・・改めて宜しくお願い致しますね」
さくらはやや不安げな声で言った
「・・・さくら」
「はい」
「俺はさっき言ったはずだぜ?」
「え?」
「お前達は俺が守るってな」
そう言って忍はさくらに振り向きウィンクして見せた
「はい」
さくらは嬉しそうに答えた

「さぁってとぉ、それじゃ・・・行くぜぇ」

そう言うと涼風は大きく息を吸い全身に気を集め始めた
溜められた気は体を巡り、戻り、体の中で円を書く様に圧縮され肥大化していく
これが涼風がMDS装備の機体に選ばれた理由
並の人間では到底扱えない程の膨大な気のコントロール能力である
通常の人間であればMDSドライブ状態ではDEEPの指一本まともに動かせない
それを彼は機体ごと操作するのである
気と機体の融合、それを可能にするのがMDS
そしてMDSがドライブした時、人機一体となり通常では考えられない程の
圧倒的な機動力・破壊力を生み出す事が可能になるのである

「牙龍・・・覚醒・・・」
牙龍、それは涼風が会得した謎の格闘術
覚醒した牙龍は涼風の身体能力を爆発的に上昇させ
彼の気が続く限りそれは有効となる

ブライムのエネルギーゲインがみるみる上昇し
ほぼゼロだったエネルギーはすぐにAM並みにそして戦艦並みに
そしてほんの数秒にも満たない間に信じられない程の出力を生み出す
「・・・さくら」
「はい、マスター」
「いくぞ」

そう言うと俺は肩アーマーを剣に変化させた
その剣はブライムの身長とほぼ同じ、約20M程の剣になった
と、言っても肩アーマーの質量だけで20Mの長剣など形成する事は質量的に不可能である
その剣は握りと柄の部分に質量を集め、刀身部分は中は空洞になっており、
空洞部分には質量の代わりにエネルギーの塊が高圧縮され詰まっている

ブライムは剣を大上段に構え、背部のスラスター出力を全開にし
瞬時に蒼天の大空に舞い踊った・・・刹那
ブライムはそのまま垂直落下し神殿を大上段に切り払う

神殿に落着する寸前、ブライムの剣の切っ先に光が生じた
それは時元を切り裂き亜空への扉となり、ブライムはその光に吸い込まれた

次の瞬間


ドグワァァァァァァッァッァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
大音響と共に神殿は崩壊し後には神殿は跡形も無く吹き飛び直径数十メートルのクレーターだけが残った

(光だ・・・)
ただそこには光の奔流だけが見えた
明るい光、暗い光、紅・蒼・翠・黒・白・紫・黄、種々様々な光の奔流
涼風はその光の中で確かに感じた
奴の!クアムの存在を!
その気配は過去から未来へと向ける光の奔流の中少しずつだが確実に増大して行った

(奴が・・・俺の時代にもいると言うのか?)

「さくら」
「はい?マスターなんでしょう?」
さくらは計器を細かくチェックしながら答えた
「奴は、ヤツは俺の時代にいるのか?」
「居る、と思います、過去の時代からマスターの時代まで数億年
 アレが存在している可能性は十分あるかと・・・」

「そうか、ならば俺は奴を倒す、セレンさん達の為にも、皆の為にも
 世界を食い尽くす悪魔、そんなもんの為に泣く奴が居て言い訳が無い!」

「そぉ〜そぉ〜、みんなを泣かせる悪い子は許さないんだから!」
「・・・うん、私もそう思う」
BLUEのコクピットからも返事が聞こえた
「そうですねマスター、私も力ない人々の悲しむ姿は見たくはありません」

「よーし、それじゃいくぜ!俺の、俺達の時代へ!!」

ブライムは光を、時を超え、今舞い戻る!!
クアムの野望を阻止する為に、人々の笑顔を守る為に!!

To Be ContinueD EPISODE:02