初めに、脊髄とは、脳と繋がっていて、
脊椎(背骨)の中を通っている神経の束のことをいいます。
神経1本1本は細いですが、それがたくさん集まって太く1本の棒のようになっています。
脳から送られる命令(体を動かすなど)はこの脊髄を通り、
それぞれの神経に枝分かれして体中(命令を出した部分)に送られています。
また体の各部分から脳に送られる情報(物を触った時の感触や温度など)も、
まず脊髄を通り脳に伝わっています。
事故や病気など様々な原因により、
この脊髄が損傷(傷が付く、切れるなど)すると損傷部分から下には脳からの命令が届かなくなり、また体の各部分からの情報(感覚・温度など)も脳に届かなくなります。神経1本1本情報を伝える役目が違いますから、損傷した部分に症状が出てきます。
脊髄を損傷すると体の不自由さが出てきてしまします。
その一例として運動障害や感覚障害などがあります。
(体が動かなくなる、触った感覚がなくなる、など)
脊髄(神経の束)に空洞が出来る(脊髄に縦方向に穴があく)という事は
それだけで神経を傷をつけている、という事なのです。
また脊髄自体が中枢としての働き(命令を出す機能)を持っているので、
全身に様々な症状を引き起こします。
では、どうして脊髄に空洞ができてしまうのでしょうか?
その中に溜まってしまう髄液とは何なのでしょうか?
髄液とは脳表、脳室を満たす無色透明な液体です。
髄液(脳脊髄液)は正常時では少しずつ生産されて、
また少しずつ吸収されていきます。
脳脊髄液の役割は脊髄の保護、栄養、代謝です。
さらに神経が脳に情報を送るときにも関係していきます。
それぞれの末梢神経(体のあちこちへ張り巡らされている神経)へも循環していますので、
全身を隅々まで流れています。
この流れを邪魔をするもの(キアリ奇形・脊髄損傷など)が起きると、脊髄内部に少しずつ空洞が生じてくるといわれてます。
キアリ奇形による空洞症はルシュカおよびマジャンディー孔のあたりで小脳が下がっている状態なので、そこで髄液の流れを邪魔していることになります。
脊髄に空洞ができると、痛みを感じる神経だけがやられてしまします。
次に脊髄の空洞にどこからか入り込んでしまった髄液が溜まっていくと、その周りにある神経を圧迫していきます。(どこから髄液が入ってしまうかはわかっていません)
圧迫された神経は少しずつ傷づいてしまいます。
圧迫があまり高くなくとも(髄液があまり溜まっていなくて空洞が小さい状態でも)
何十年もたつうちに空洞周囲の組織を少しずつ損傷していきます。
その為、痛みや体の不自由が表れてきます。
神経の傷つきかたにも個々に違い、
傷ついた神経によっても症状が違います。
空洞症はMRIでしか発見することが出来ないため、
症状が出ていても発見されるまで時間が掛かることもあります。
空洞の大きさと症状の関係ですが、
空洞が大きいからからといって症状が重いわけではないし、
小さいからといって症状が軽いとも限りません。
症状も空洞の大きさも各個人違います。
現在、もっとも有効な治療法は外科的手術です。
しかし、一度出てしまった症状がなくなることは殆どありません。
それは 脊髄は他の組織と違い、一度傷つくと二度と再生しないからです。
現在、一度傷ついた脊髄を治療する方法はなく、
症状が残ってしまうというわけです。
手術により軽減するものもありますが、
手術をしても痛みが増す、
神経の働きが悪くなるなど進行が進むこともあります。
残念ながら空洞症には完治という言葉はなく、
手術は進行を止める予防でしかありません。
どんな手術にも「リスク」は付き物です。
小さな手術でもいつも100%成功とは限りません。
空洞症は神経の近くや
延髄(心臓の脈拍や呼吸運動などの反射の中枢)の近くも手術をします。
空洞があるからといって必ずしも、症状が悪化するとは限りません。
空洞が大きくなるか、そのままの状態なのかもわかりません。
空洞の大きさがそのままでも痛みや症状が出ることもあります。
その事を念頭に置き、経過観察にするのか、手術をするのか、
またその時期はいつにするのかを決断する必要があります。
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