辰砂 Cinnabar


辰砂の写真

産地:Chatian Fenghuang Hunan Chaina 中国雲南省
硬度:2〜21/2  六方晶系
化学組成式:HgS


辰砂は岩絵の具の朱の原料で、また色から朱砂(しゅしゃ)とも呼ばれます。 純粋なものを「丹(たん)」といいました。 鶴のタンチョウは漢字で丹頂と書きます。 頭のてっぺんが赤いからこう呼ばれますが、丹は朱色を指しています。 辰砂の名称は中国の辰州(現在の湖南省)で産出したことからそう呼ばれるようになりました。 日本では古来から丹(に)と呼ばれました。 原料の鉱物は硫化水銀の鉱物の辰砂で、化学成分はHgSです。

以前の勤め先に「丹生」さんという変わった苗字の人がいました。 正確には「にう」と読むようですが、みな「におさん・みおさん」と呼んでいました。 古来日本では辰砂の産出する場所には丹生(にう・にゅうとも)と呼ばれる地名があり、丹を産出するとという意味がありました。 その地で辰砂を採掘し、水銀を精製したり朱の顔料を作り出していた渡来系の一族が「丹生氏」でした。 現在、丹生・仁宇・入・仁保という地名や丹生神社・丹生都比売神社がある所は、かつて辰砂が産出したり、辰砂を求めて丹生氏が移り住んだりしたと考えられています。 丹生氏が活躍していたのは弥生時代から古墳時代にかけてのようです。

中国の道教では金は不老不死の効果があると信じてきました。 その金を、辰砂(水銀)・砒石(ひ素)・雄黄などを原料にして作り出そうとする練丹術が発展しました。 ヨーロッパの錬金術と同じです。 そうして作られた物を「金丹(きんたん)」と呼び不老不死の妙薬として服用するのです。 こんなものを飲めばどうなるか…  南北朝から隋・唐王朝の頃にかけて流行し、唐王朝の皇帝の中には中毒死した者が何人かいました。



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