「ま、とりあえず、メリー・クリスマス!」

「メリー・クリスマース!」

 

クリスマス

 

「たかあき、るー☆」

「……迎えに来たったで。」

「それじゃあ貴明くん、お先に失礼します。」

「そういうことです、行きましょう貴明さん。」

「行くでありますよ、隊長!」

「向坂先輩からの連絡ですから、貴明さんを逃がすわけにはいかないのです。」

授業終了から約五分、といったところか。

乱暴に開かれたドアからは四人の少女が入ってきて、一直線に貴明の席へと向かう。

「また後でねー。」

入れ違いに愛佳が出て行き、優季が合流し、少女は五人になった。

授業と帰宅の間の休息を満喫しようとしていた貴明は、さっと取り囲まれる。

「たかあきつかまえたー☆」

「確保であります!」

そのまま珊瑚が貴明の右腕に取り付き、このみが左腕を引いて先導。

「わっ、ちょ、カバン!」

引っ張られながらも後ろを振り返るが、そこに抜かりはない。

「ほい。多分持って帰るんはこんだけやろ。」

「そうね、じゃあこれは……」

「私が持ちますね。」

瑠璃とささらが手早くまとめてかばんに詰め込み、なぜかちゃっかりそれを優季が手にしていた。

だいぶ日常茶飯事と化してきた情景に突っ込むクラスメートはもういない。あるのは、貴明をにらみつける男子の視線だけ。

抵抗できないことも、貴明は身にしみて分かっていた。

「そーそー、しかたないんだよー、姉貴の命令だげふっ!」

だが、とりあえず貴明は、人事のように笑っている雄二の腹に蹴りを入れるのだけは忘れなかった。

 

 

その後、由真に自転車で引っ張られつつ、いったん自宅で着替えさせられて、さらに引っ張られてつれてこられた向坂邸は。

「……何があるんだっけ?」

いつもと変わっていなかった。

「じゃ、貴明はここで待機ね。」

そして彼をここへつれてきた由真はそのまま中へ入っていく。

「や、この真冬に外で待機ですか……!?」

「そう。あ、呼ぶまでに入ってきたらコロス。」

放置は決定らしい。図らずも、強制ランニングに加えて寒さ我慢大会をやらされることになった貴明は少しボーっとする頭を抱えて、少しでも風がこなさそうなところを選んで座り込んだ。

寒い。雪こそ降っていないものの、風は強く、空は曇り。

座り込み運動を続けつつ、うなる貴明。

と、その前を一つ影が通りかかった。

「うー、何をしている?」

「たかちゃん、我慢大会?」

顔をあげて見れば、花梨とるーこがそこに立っている。もちろんるーこはお決まりの“るー”のポーズで。

「何でだよ。待たされてるんだ。」

貴明は救いを言外に求めてみたのだが。

「そうか、ならばもう少し待っていろ。うータマの命令だ。」

るーこはすたすたと歩いていってしまった。

後姿に呼びかけてみるが何処吹く風、振り返りすらしなかった。

「ま、そういうことなんよー。環さんが怖かったら言うこと聞いてねー。」

花梨もにこやかに見捨てていってくださった。

後に残るのは沈黙。ご丁寧にも風が一陣通り過ぎた。

そうしてまた座り込み運動を続けることしばらく。

「タカ坊ー?そろそろ入ってきなさーい!」

ようやくお呼びがかかり、貴明はすばやく腰を上げる。

「ようやくか、長かったな貴明。」

すると、すぐ後ろから雄二が声をかけてきた。

「……お前、いつからここに?」

「るーこちゃんたちが入っていくくらいから。」

ニヒヒ、と愉快そうに雄二が笑う。

貴明は、まったくもって逆恨みであるし、雄二に罪のないことはしっかり分かっていた。

充分に分かっていたが、とりあえず殴っておいた。

 

 

「すご……」

呼ばれて家の中に入っての貴明の第一声。

玄関を開けて、まず飛び込んできたのは赤と緑。それと。

「いらっしゃいませー、なのよ?」

「まあ、いらっしゃい。」

おどおどビクビクとした愛佳と、そっぽをむいてため息をつく郁乃だった。

「……」

呆気にとられて沈黙する貴明。

その態度に愛佳はますますビクビクし始める。

「え、な、なんか変かな?」

「い、いや、そ、そんなことないよ。」

もちろん、貴明が驚いたのは愛佳と郁乃がいたからではない。

驚いたのは彼女らの格好にだった。

郁乃は着ぐるみのトナカイ。鼻は赤くなかった。

そして愛佳はサンタ。それも、スカート丈がやたらと短いのだ。

「さ、寒くない?」

なので、どこか微妙に見当はずれなことを口にしてしまう貴明の反応も無理なからぬことなのかもしれない。

そしてこの後も、貴明の頭は図らずもヒートしていくことになる。

小牧姉妹に誘導され、入った大広間。

そこに広がっていたのも、絶景だった。

「貴明さん、いらっしゃい。」

「おー、たかりゃんきたかー!」

「やっぱり寒かったんかー?」

優季をはじめ、まーりゃん、珊瑚、由真、このみ、るーこ、花梨、環などが口々に迎えてくれる。

しかも、それぞれが、サンタやトナカイの格好をして。

珊瑚、瑠璃、郁乃、このみ、まーりゃんがトナカイ。珊瑚とま―りゃんのつけ鼻は赤かった。

優季、愛佳、由真、るーこ、花梨、環がサンタ。愛佳と由真のスカートが比較的短く、るーこや優季のスカートは長めだった。

「……あれ、ささらは?」

一通り眺めた後、欠けている一人に気づく。

それを聞いて、環は意地悪な笑みを浮かべた。

「さーりゃんはそこだよ。」

にふふ、とまーりゃんが笑い、そばにあった箱を指差す。

しかし、目線を向けても、ささらの姿は一切見えない。

「え、いないぞ……って、まさか!?」

改めてその箱を見る。その大きさは、抱えあげるほどであり、人一人ならゆうに隠れられそうだ。

慌てて包みを開けると、中から、案の定ささらが現れた。

「め、メリー・クリスマス……プ、プレゼントは、私、です。」

「あ、あ、うん。ど、どうも……」

だいぶ茹っていた貴明の頭は、ここでオーバーヒート。

無理もない。胸の前で隠すように手をこすり合わせていたささらの格好は、サンタはサンタでも、ほとんど布地のない、水着サンタだった。

「おーい、たかりゃん、どうしたー?」

顔を真っ赤に染めてうつむいてしまったささらの代わりに、まーりゃんが貴明の前で手を振る。

「……たかりゃん?」

「……」

そのまま、貴明は硬直して後ろへ倒れてしまった。

「貴明さん!?」

「あー、刺激が強すぎたかなー。」

みんなの声が、意識が遠のく瞬間に響いていたような気がした。

 

 

その後は、なし崩し的に大宴会になだれ込んだ。

貴明の意識が戻る前にみんな扮装を解き(やっぱタカ坊はお子様ね 環談)、用意した料理に舌鼓を打った。

雄二がはぶられたり、雄二が王様ゲームを提案して総スカンを食らったりといろいろなことがあったが、それはまた別の話。

「たかくん、ちゃんと食べるでありますよ!」

「タカ坊?食べられないって言うの?」

このみが貴明の口に、次々と食べ物を押し込んできたり、それをとどめようとすると、環ににらまれたり。

「コラ、タカアキ!何であんたそんなに食ってんのよ!」

「ああ、あのあの、おいしくなかったですか!?」

次々と食べさせられていることに由真が文句をつけてきたり、目を白黒させている貴明に、慌てふためく愛佳をなだめたり。

「うーよ、お前の肌はすべすべだな。」

「あー、るーこちゃん抜け駆けは禁止なんよ!」

「まあ、貴明さんは女難の運命にあるということで。」

間違ってコーラで酔っ払ったるーこに迫られたり、それを花梨が止めようとがんばったり、優季が一人不思議に納得していたり。

「たかあき、今度はこっち。瑠璃ちゃんもこれで寂しくないよー?」

「そんなこと言うてへんー!」

「あら瑠璃様、先ほどまでさびしそうにしていらっしゃったじゃないですか?」

「そんなんしてないー!」

珊瑚に引っ張られて隣に座らされたり、そのことで瑠璃がムキになったり、イルファにからかわれてさらに怒ったり。

「たかあきー、ほら遠慮しないでってば。」

「こっち来て。」

ミルファやシルファにも袖を引っ張られて、料理を詰め込まれたり、抱きしめられたり。

「……あ、あの、その……」

「あー、たかりゃんだけじゃなくて、さーりゃんにも刺激が強かったかー。失敗したなー。」

ささらがダメージから立ち直れなかったり、まーりゃんが舌打ちしていたり。

いろいろなことがあったが、これはこれで平穏なクリスマスだった、と貴明はもみくちゃにされながらも、思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

すいません。時間がなかったんです。ごめんなさい。

すいません。クオリティー低いです。ごめんなさい。

すいません。色々とすいません。ごめんなさい。

……機会があれば、この元ネタは、色々書きたいなと思ってます。

また、そのときにお願いします。

……機会があれば、書き直します。たぶんできませんけど。

……精進します。 

                                                  Fisher man