とめどなく降り続く雨。
アレンはふと空を見上げた。

雨−贖罪―

 

「アレンくん?」

呼ばれた声に振り向くと、書類を持ったリナリーがいた。

そういえばここは室長室への行き道である。

忙しい彼女がここを通っても、何の不思議もない。

「なにやってるの?」

「空を、見てました。」

「…?雨、降ってるよ?」 

分からない、といった表情でアレンの顔をのぞくリナリー。

空はどんよりとした雲に覆われていて、おまけにバケツを返したような土砂降り。彼はいったいそこに何を見ているのだろうか。

「洗い流してくれるかな、と思いまして。」

そう言ってアレンは、そっと左目のペンタクルに触れる。

その仕草にリナリーはあっと思い当たった。

アクマを見分けられる、と皆が重宝する目。

しかしその実。それは最愛の養父から彼が受けた、『呪い』、であった。

不用意に踏み込んだ、とリナリーの顔が翳る。

その顔を見てアレンははかなく笑った。

「そんな顔しないでください。エクソシストになったことは後悔していませんよ?マナもこういった形、とはいえそばにいてくれます。」

そう、彼は笑う。儚そうな、壊れそうないつもの笑顔で

「でも、もし、もしも洗い流せるなら。時々そう思うんです。もしこの呪いを洗い流せるなら、過去がやり直せるなら。あそこで伯爵を頼ってしまった自分を変えたい。そう、思うんです。」

その笑顔はもはや泣き顔にしか見えなかった。

「…ばか。」

壊れてしまう。彼の笑顔にそんな不安を覚えて。

リナリーは小さく呟く。

「アレンくん言ったじゃない。この呪いはお父さんからのメッセージだって。どうして強く生きてくれなかったって、お父さん言ってたんでしょ!」

だんだんと語調が強くなる。

「なのに過去ばっかり振り返ってちゃ、お父さん報われないよ!!」

「そう、ですかね?」

「絶対そう。強く生きるんでしょ。」

リナリーの見幕に押され気味のアレン。

「…ですよね。ここでくじけてちゃ、それこそマナに叱られる。」

「そういうこと!じゃ、分かったらこの書類半分もって。」

ドサ、と持っていた4分の3を渡す。

「え、半分…」

「ほら、兄さん待ってるんだから。行くよ?」

口をつきかけたアレンの抗議を無視してリナリーは歩き出す。

その後を、アレンは苦笑して追いかけた。

 

―マナ、ありがとう。それから、ごめんなさい。僕はこんな仲間に支えられて生きてます。―

ちなみに、書類を待ちくたびれたコムイが、リナリーと一緒に入ってきたアレンを見て逆上したとかしなかったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、Fisher manです。Dグレ小説増やそうと思ってtdssから引っ張っただけです。…ごめんなさい。
梅雨の雨が降ってたときに、ふと考えたんです。
                                                                                              Fisher man